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ヒト族大陸西部はお騒がせ  作者: ミナヅキ
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弌話 王都に響く慟哭

初投稿です。至らぬ点あると思いますが、ご指導ご鞭撻のほどお待ちしております。


第弌章 ポーリッツ王国動乱

 弌幕 フリューゲル王国出立



 聖歴1495年6月23日、ウェンデス公爵領継承紛争やブロードガンド帝国と中立国家連邦の国境紛争での数々の武功を挙げたシャブラン候と、現王アンル8世の愛娘マリアーネの子という、フリューゲル王国中がうらやむ地位(ポジション)を得た一人の男児がいた。1人の兄ヤーサク・メルキュールと両親に愛され、18歳になったその子の名は...。

【シエン・メルキュール】



どうも皆さんおはこんばんにちはシエンです。いきなりだけど皆、突然、頭に衝撃が走ったことって経験ある?ぼくはある。というか今まさにその直後。どんな衝撃だったんだって?そんなもん聞いてないって?そんなこと言わずに聞いてよ。な、なんと、前世を思い出しました!

どうしてこうなった...あれか?今某ネット小説やラノベで流行りすぎて飽和状態の異世界転生ってやつか?確かにぼくの記憶では帰宅中にトラックに轢かれてあの世まで吹っ飛ばされたが、神様!異世界までとは聞いてませんよ~!

というかだな、なぜこんなに重要な記憶が戻るのが、高等士官学校の卒業式の真っ最中なんだよ!?ほら、両隣が心配そうにこっち見てるし。ちなみに右の可憐としか言いようのない美少女は、外務省の古狸とまで言われたボーダ伯爵の一人娘でぼくの彼女(・・)のヴィーネ・トロイアス(ぼくはヴィーって呼んでる)で、左にいる気さくなイケメンは、歴代の宰相を輩出しているトーレ家の跡取りで昔はやたらとぼくに突っかかってきたが今は親友で腹心のアルンヘイム・トーレ(愛称はアルン、だ)なのだ。

学園生活の時に記憶が戻っていなかったのが悔やまれるよ、ほんと。なんかこれだけでラノベが一冊出来そうじゃないですかーやーだー!え?なんか説明口調だって?仕方がないの!人間焦るとこうなっちゃうの!

「どうかしたんですか、シエン?具合でも悪いんですか?」

おっと、ヴィーを心配させてしまった。

「ヴィー、大丈夫さ。ちょっとボーっとしてただけだから。先生こっち見てるし、前向こう?」

あたふたと背筋を伸ばして前を向く姿がなんかリスみたいで庇護欲を沸かせてくる。

まあいろいろ大変なことになりそうな気がしないでもないけど、過去の記憶が消えたわけでもないし、のんびりやっていきますか!



そんなかんやで卒業式も終わり、級友との別れもすましてさっきの二人と今後について話し合っていた。それもそのはず、この国の高等士官学校の卒業式には軍での正式な配属先が封筒に入れられたものと卒業証書が一緒に渡されるからだ。話題にならないはずがない。

ちなみにさっきの二人は、

ヴィーネ・トロイアス中尉  第7師団第1連隊 第2大隊B1小隊長、3等参謀官に任命する。

アルンヘイム・トーレ中尉  第7師団第1連隊 第1大隊B1小隊長、3等参謀官に任命する。

と、豪勢な紙に書いてあるのだ。ある事情(・・・・)を除けば希望通りの結果。うん、親のコネですねわかります。

そんな恵まれた結果となった二人より僕が問題なのだ。

シエン・メルキュール中尉  駐ポーリッツ王国大使館付き陸軍武官に任命するとともに、中尉から少佐への2階級特進を辞令するものとする。

それを見たヴィーとアルンがのんきそうに話している。

「よかったね、シエン、大出世だよ!将来の奥さんにいいところ見せたね。」

「はわわっ!お、奥さんだなんて...照れます...。」

「あんなに仲睦まじくしているのにそれでも照れるのか?婚約ぐらいはしているんだろう?」

「それがですね、聞いてくださいよアルン!シエンがヘタレすぎて全然お父様にあって下さらないんです。」

「ま、まぁ、伯爵怖いからね...。」

カチンときた。

「なんでお前らは楽しそうなんだよ!ポーリッツ王国だぞ!よりにもよって大使館ってことは多分ウィルシャー(あんな国の首都)にあるんだぞ!?どうすんだよ、こっちは卒業したてなんだ、暴徒か他国の間者に殺される未来しか見えない。くそっ、なんだってこんなことに...。」

思わず胸の内を吐露してしまい、2人をびっくりさせてしまった。一言詫びを入れようと思い口を開くと、アルンが先んじて話しかけてきた。

「あれ?確かポーリッツの大使館ってウィルシャー市民に破壊されたからってヴロツワフへ移したって聞いたよ。」

「えぇ、お父様が『おやおや大使まで殺してしまって、有能でしたのに...もったいない。』と、嘆いておられました。嬉々として。」

「ははは、やっぱり伯爵怖いな...。シエンが会いたくないのもなんとなくわかるよ...。」

ちょっと文脈がおかしい気がするけど仕方がないね、あの大使って伯爵に楯突いてたからね。ポーリッツに飛ばされたのもそのせいだろうって、もっぱらの噂だったもんね。権力って怖いね。

ってちょっとまて、かなり重要な情報が聞こえて気がするぞ。

「本当か、本当にヴロツワフなんだな!?そっか、よかった...。ふぅ、でもあれか、卒業早々海外赴任っていうのは変わらないのか。最低二年はこっちに居られると思ってただけにやっぱちょっと辛いものがあるな。」

「まあまあ、俺もヴィーネも一緒なんだしさ。もうちょっと楽しげに行こうよ。ため息つくと幸せ逃げちゃうよ?」

そうなのだ。さっき言ったある事情(・・・・)とはこれのこと。キリス帝国に侵攻され、恐らくはその外圧によってたまったストレスによる市民革命も起こり、あっぷあっぷだったポーリッツ政府が苦肉の策として1485年に結んだ〔ポーリッツ王国における対キリス帝国包括的軍事条約〕。

これによってフリューゲルとブロードガンド、北神聖教国、ヒルデガンド王国が政府軍に対し援軍を送るという名目で各々が一部の地域を勝手に実効支配。フリューゲルがそのために1514年4月1日~16年3月31日に派遣されるのが第7師団(・・・・)~第20師団までの計20.4万人というわけだ。

そしてフリューゲルの実効支配の中心都市がさっき名前が挙がった、機甲魔導車や先端魔導器具の一大生産地ヴロツワフってことなのだ。

フリューゲルの師団の中でもシングル師団、特に1,4,7師団は総合本部としての色が強いので、ヴィーとアルンもヴロツワフに駐留することになるだろう、ということみたいだ。

「支配地域の中心だしね、こっちもオポーレとか前線近くの都市に配属にならない限り実戦配備っていうことはないと思うよ。大使館付きも大変だと思うけどこの情勢だからね、他国の人間は入ってこれない。だから情報戦もヴロツワフならほとんどないんじゃないかな?」

「そうですよ!シエンはどちらかというと参謀タイプで、体力とかはアレですけど頭を働かせるほうが似合ってます!」

「少佐になったし悪いことばかりじゃないよな!そしていきなりのアッパーは効いたぜヴィー、けっこう気にしているんだよ!」

「ふふふ、私と一緒にいるときに油断しちゃだめですよ?いきなり襲い掛かるかも...。」

「ヴィーネが言うと襲うって言っても辛辣な言葉のストレートをたたきこむ図しか思い浮かばないね。

...言わないほうがいいかなって思ったけど、なんかイチャイチャしているカップルを見せつけられたのであえて言おうと思うんだ。このシエンの人事、大使館ってことは外務省の管轄だから...うん、伯爵が一枚噛んでると思うよ、これは。」

「そういえばお父様がシエンの卒業を楽しみにしていましたよ!『ふふふ、どこの国に飛ばしてさしあげましょうか...。』って!」

「シエン、伯爵がご立腹だけど、頑張れよ!」

「そんなぁあ~~~~~!!!!!」


卒業早々彼女の父親に目を付けられた少年の慟哭が、澄んだバロニカの空に響き渡っていった...。




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