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10年の時に  作者: まほろば
ハート国
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薬草と子供



翌朝、朝食の後冒険者ギルドで依頼を受けてみた。

Dランクで受けられるのは薬草だけだった。

東の門を出た先の森に有るらしい。

ついでに鍋を造ってこよう。

森に入って鑑定をかけると簡単に薬草は見付かった。

必要な数の薬草を摘んでアイテムボックスに入れた。

それからもっと奥に行って、誰もいないのを地図で確かめてから鍋と釜と蓋を試行錯誤して何とか造った。

鍋は大中小の3つ、釜は2つ、蓋は鍋と釜のサイズに合わせて5個造った。

整地して枯れ木を集めてバリアと結界を張り釜に米をといで少し待ってから炊いた。

御爺様と山へ籠るとき順番に炊いていたので上手く炊く自信はある。

炊き上がった釜を蒸らす間に木から椀と箸を造った。

いざ食べる時になってしゃもじを忘れてたのに気付いて急いで造った。

10日振りのご飯は何も無くても旨かった。

これで塩があればおむすびが出来たんだと満腹になってから気付いた。

「ナビ、塩って何処で手に入るかな」

中央の通りから1本奥の通りに屋台が出ていて其所で売っているらしい。

何と無く、ナビが他にも言いたそうな気がしたけどそれが何かは分からなかった。

コショウはもっと大きな町へ行かないと無いらしい。

「折角炊いたのに塩が無いなんて。炊く前に気付くべきだった」

がっかりしてたらナビが教えてくれた。

『アイテムボックスニホゾンサレテハ』

「え?」

暖かいまま保存されると聞いて、思い当たった。

果ての森で倒した熊が腐らずアイテムボックスにあるのが不思議だった。

「アイテムボックスって入れた時のまま保存されるの?」

『イエスマイマスター』

塩を買おう。

釜と鍋をアイテムボックスに入れて、焚き火の始末をしてから急いで戻った。

冒険者ギルドで薬草を出して依頼を終わらせ、その足でナビに教わった通りに行った。

20くらいの屋台が出ていた。

塩だけを売っている屋台は無くて、他の物の隙間で売っている感じだ。

ナビの話では塩にも色々あって、中にはかさ増しに異物を入れてるのもあるらしい。

見分けられなくてナビが選んだ塩を買った。

塩は口を縛れる布の袋に入れて売られていたけどその袋が汚ならしくて、買った塩にクリーンを何度もかけてやっとアイテムボックスにしまえた。

口にするものだから妥協はできない。

これからの旅を考えて、屋台の端から端を味見しながら買い漁った。

テリヤキチキンみたいな甘い味付けの肉を固いパンで挟んだサンドイッチらしき物や、串に刺して焼いた肉とかを買っては路地でアイテムボックスに入れた。

買いながら、アイテムボックスを誤魔化す袋と硬貨を入れる財布が必要だと思った。

毎回ズボンのポケットから出す動作はめんどくさかったし無理がある。

見ると、屋台の終わりの方に色々な袋を売ってる屋台があった。

その中から肩から斜めに掛けても周りに浮かない袋があった。

ついでに財布が無いか聞いたら巾着を出された。

そうか、この世界のお金は硬貨だけだから財布じゃなくて巾着なんだ。

納得して一番小さな手のひらサイズの袋も買った。

買い物を終えて宿へ帰る。

「…」

塩をアイテムボックスから出して固まった。

買ってきたけど入れる皿もおむすびを乗せる皿も無い事に今気が付いた。

仕方ない明日もう一度薬草取りながら食器を作ろう。


翌日、また薬草の依頼を受けて森へ行った。

7枚の小皿と7枚の皿を造った。

お椀を3つと箸も3つ造った。

皿におむすびを3つづつ置いてアイテムボックスへしまった。

全部を握ったら皿が足りなくなって一回り大きな皿も5枚造った。

奇数で作ったのは御爺様から教えられた日本の風習を思い出したからだ。

新しくお米を炊いてるうちに塩の袋を確かめると、残りは袋に半分も無かった。

塩を補充してから次の町へ行こう。

炊き上がった釜をアイテムボックスへ入れて、依頼を終わらせてから、また屋台へ行った。

塩と食べ物を買っていると、誰かの視線を感じた。

気付かぬ振りで視界の隅に相手を写すと自分と同じくらいの子供だった。

汚れた服を着ているが殺気は感じなかった。

何をしたいのかと観察していると、意を決したようにこっちへ向けて走ってきた。

子供の目が自分が手に持つ袋に釘付けなのを知って目的が分かった。

初めてなのだろう。

無駄に緊張して歯を食い縛って走ってくる。

可哀想だけど、ぶつかる前に捕まえて路地の奥へ力付くで引き込んだ。

「離せよっ!」

「泥棒を離すつもりはない」

後ろ手に固めて子供の動きを封じた。

子供は暫く暴れたけど逃げられないと分かったのか、力を抜いて地面にしゃがんだ。

「門番に突き出せよ」

「罪状は?僕はまだ盗まれてない」

子供が首を捻ってこっちを見た。

「え?」

「初めてなのはすぐ分かった。何故って理由を聞いていいかな」

最初話したがらなかったけど、黙っていたらポツポツと話始めた。

「俺の父ちゃん冒険者で、2か月前盗賊捕まえに行って帰って来なくて」

盗賊で、あっと思った。

まさか。

動揺していると子供が先を話した。

「母ちゃんショックで寝込んで、死んじゃって。俺と妹だけになったら住んでた家追い出されて」

「妹がいるの?」

驚いた。

この子供と一緒には居なかった。

何処かに隠れてた?

ぐるぐる考えてたら子供が先を続けた。

「町外れの小屋に隠れてる。腹減らしてるから食い物欲しくてお前の財布を」

「僕をそこへ連れて行け。食べるものならこの袋にたくさん入ってる」

子供を立たせて、前を歩かせた。

「お前冒険者か?」

「そうだよ」

「俺も父ちゃんさえ生きてたら。親父の装備さえあったら」

ドキドキしながら聞いてた。

「家に置いてあったのを家主が家賃の代わりだって持っていっちまった」

それは当然の気がする。

「その盗賊って?」

「東の門を出た先の森にアジトがあるって言ってた。父ちゃんは偵察だからって重い装備は家に置いて行ったんだ」

違った。

ほっと胸を撫で下ろした。

考え事をしながら歩いてて辺りを見てなかったから、子供が着いた場所が腐って傾いた小屋だと分かると固まってしまった。



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