表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10年の時に  作者: まほろば
ハート国
6/121

初めての村と夜営



森を抜けたそこは枯草だらけの荒れ地だった。

「ぇ…」

すぐ町は期待して無かったけどこの景色は想像以上に悪かった。

がっかりして周囲を見たらかなり先に煙が見えた。

町?最悪でも村がある。

『マイマスター』

嬉しくて走り出していたから、ナビの音のトーンが違う呼び掛けを気にしなかった。

近付くにつれ失敗した気分になった。

多分村なんだろうけど、原始時代と見間違うほどボロボロだった。

昔は村をぐるっと囲っていたと思う板はあちこち外れてて、隙間から村の中が見えてた。

中には昔は小屋だったと思える物が数個。

廃村?

人が住んでいるのかも怪しかった。

なら何故煙が?

疑問を浮かべながら中へ入り掛けて足が止まった。

息もできないほどのアンモニア臭に顔を背けた。

それだけじゃない。

糞の臭いと何かが腐った臭い。

何で今までしなかったのか。

答えるようにさぁっと風の向きが変わると臭いも消えてやっと理解できた。

立ち去ろうとしたら、小屋の中からボロ布を体に巻いた老人が出てきてしまった。

こうなったら逃げるわけにもいかない。

自分の周りに見えないようバリアを張って臭いとバイ菌をシャットアウトした。

不衛生な場所から感染する病気をスライドで学習したばかりだったから、予防は当然だと思った。

「何者じゃ」

近付いてきた友好的には見えないお爺さんが言った。

「あの森を探索に着たんです」

咄嗟に嘘をついた。

「あの森を。なら一晩の宿を」

話の途中からぞろぞろ人が出て来て集まってくる。

後ろ手に隠しているつもりだろうけど、ナイフを持ってる人が3人も居た。

「礼にその装備と金を寄越せ!」

先頭にきた太ったおじさんに襲われかけて、思わず風魔法で吹き飛ばしていた。

呆然としてる村人を残して、森や村とは反対方向に思い切り走った。


「分かってた?」

村が見えなくなってからナビに聞いてみた。

頭の中にステータスの地図が出てさっきの村が赤くなっていた。

赤い村の先に緑の点があった。

「これは町?」

『イエスマイマスター』

見ると出てきた森の反対側にも緑の点が見えた。

「こっちへ出たかったな」

残念だけどそっちの方は海に注ぐ滝があって通れないとナビが言った。

「此処から町まではどのくらい?」

『2ニチ』

「2日の辛抱かぁ」

ナビに教えて貰って、今は光魔法のクリーンを応用したミストシャワーでお風呂の替わりにしてるけど、日本人だからやっぱりお風呂に浸かりたい。

町の宿屋ならお風呂があるだろうと期待していた。

『ヤエイノジュンビヲオススメシマス』

「暗くなってきたしそうしよう」

木の下の土を整地して枯れ木を集める。

準備が出来てからバリアと結界を張った。

そして外から中が見えない魔法をかける。

光の反射の原理でバリアに触らなければ誰も気付かないらしい。

アイテムボックスから熊の毛皮を3枚出して土の上に置いた。

毛皮の下にはエアクッションのイメージで風魔法を使っている。

それが地面に直に寝る精神的ダメージを、軽減してくれていた。

集めた枯れ木に火を付けて、取り出したウサギ肉を枝に刺して焼き始めた。

空腹に耐えられなくてウサギ肉を焼いて食べたのは2日目の夜だった。

負けた気分になったけど、空腹には勝てなかった。

それに毛皮も。

今まで神経質過ぎると心配されるほどの潔癖症だったのに、今は地面に毛皮を敷いて寝ている。

焼けた肉を食べながらつい笑った。

きっと10年経って道場に戻る時、潔癖症が治ってるかもしれない。


2日後。

とうとう昼過ぎに馬車が走る道に着いた。

「右が町で左が村だね」

『ドチラヘムカイマスカ』

「もちろん町」

右へ向かって歩いてるとナビが聞いてきた。

『マチヘハイルノニギンカガヒツヨウデス』

「え?入るのにお金を取るの?」

『ボウケンシャギルドカショウギョウギルドノギルドカードヲテイジスルトムリョウデス』

「冒険者ギルド。本で読んだものが現実になるのか」

冒険者ギルドか商業ギルド。

商いには向いてないから冒険者ギルドに登録しよう。

可能なら本のように冒険者で10年生きていきたい。

『トウロクニキンカ5マイヒツヨウデス』

「5枚も?」

日本円なら五万円だ。

『フンシツスルトサイトウロクニキンカ50マイヒツヨウデス』

「え?無くすなって事だね」

『イエスマイマスター』

やはり冒険者ギルドには本と同じくギルドランクが有るらしい。

新人がD、駆け出しがCとB、ベテランがAとS、その上はSSとSSS。

最強のランクは国の王様と同じくらいになるらしい。

マイナスもあって。

Aランクより上は魔物の氾濫があったら討伐に強制参加だと聞いてBより上にはいかないと決めた。

それに、召喚した国は別だけど、10年で消える人間が歴史を変えるのは良くないと思った。

「この世界で気を付けることはある?」

『ナイトオモワレマス』

「ナビの声を他の人に聞かれるのはまずいな」

『ステータスハマイマスターノイシキニヒョウジサレマス』

「それってナビの声や地図は僕にしか聞こえないし見えないって事?」

『イエスマイマスター』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ