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10年の時に  作者: まほろば
スペード国
39/121

前の街へ



コバルトブルーに戻った翌日、スペード国最後の町ホリゾンブルーへ向かった。

ホリゾンブルーへは歩いて24日、村は3つ。

村は素通りで先へと歩いた。

ホリゾンブルーが見えてきたと思ったら、前方で男が2人言い争っていた。

遠目にも冒険者と分かるおじさんが、商人らしい貧弱な青年の荷物を取り上げようとしてると分かった。

駆け寄って冒険者を青年から引き離した。

「何しやがる!」

「た、助けてくださいっ!」

真っ青な顔の青年を背中に庇って事情を聞いた。

「どうしたんですか?」

「ガキは関係ねぇ!」

「警護を頼んだのに鞄っ、ひっ!」

青年が震える声で言ってる途中に冒険者が剣を抜いて襲い掛かってきた。

後ろに青年が居るので避けるわけにもいかず、剣で剣をはたき落とし当て身を喰らわせた。

冒険者はその場に放置して、青年を促した。

「ホリゾンブルーから着たんですね?1度町に戻って冒険者ギルドへ行きましょう」

「…は、はい」

ホリゾンブルーへ向かう途中、青年から話を聞いた。

青年はロベルトと名乗って話始めた。

ロベルトは王都フォレストブルーまでの警護を冒険者ギルドへ依頼して、来たのがあの冒険者だと言った。

「書類は有りますか?」

見せて貰うと、確かにロベルトが依頼を出して冒険者が受けていた。

「受付に事情を話して、新しく冒険者を紹介して貰うと良いですよ」

「あ、あの」

ロベルトがおずおずと聞いてきた。

「あなたも冒険者ですか?」

「ええ」

頷きながら改めてロベルトを見た。

この国の人らしくない口調に驚いた。

「あ…の、あなたのご都合次第で、すが…良ければですが…ご、護衛をお願い出来ませんでしょうか」

本気で見返した。

「む、無理なら、無理を言ってすみません」

ロベルトは僕の態度を拒絶ととったらしく慌てて小さい声で謝ってきた。

「い、いえ。僕で良いなら。冒険者ギルドで警護交代の手続きもしましょう」

僕の方が慌てていた。


ホリゾンブルーの冒険者ギルドは対応が最低だった。

ロベルトが襲われた話をしても聞き流し、僕に警護を頼みたいと言っても無理の一言だった。

ロベルトに同行したのがガキの僕だから、受付の態度もでかくて逆に契約違反で罰金を払えと言い出した。

ロベルトがか弱い抗議をしているうちにさっきの冒険者も戻ってきた。

「警護の途中でこいつに襲われた」

冒険者は僕を指してそう言った。

その声に、受付だけじゃなく冒険者ギルド全体の空気がガラリと変わった。

どこまでこの国は腐ってるのか、それならもうそろそろ受けて立っても構わないだろうと思った。

「僕とやりますか?」

殺気を隠さず黙らせた。

「警護依頼の変更を」

「…B、ランク…あ、Aランク!ギルドマスター!」

がくがくしながらも言い返してきた受付が僕のギルドカードを見て叫んだ。

それが聞こえたのか、奥から転がした方が速そうな太ったおじさんが走ってきた。

「も、申し訳ない、職員が粗相をして…」

「変更出来ますね」

淡々と話を遮った。

このおじさんがホリゾンブルー冒険者ギルドのギルドマスターだろう。

「こんなちゃちな依頼を受けたらAランクに…」

「何度も言わせたいですか」

「…いえ」

「変更を」

横でロベルトがポカンとしていた。


「あなたは…冒険者ギルドの人たちが驚いてました。ギルドマスターさんなんですか?」

「違います。僕はサックスブルーのギルドマスターを少し知ってるだけです」

ホリゾンブルーを出て、コバルトブルーに向かう道を話ながら歩いた。

ロベルトは商人になったばかりで、始めての仕入れに来たと話した。

然り気無く宝石の商いをするのか聞いたら、ロベルトは悲しそうに顔を伏せた。

「父が亡くなるまでは各種ポーションを扱う店をしていたんですが、騙されてしまって…」

父親も信頼して帳簿を任せていた社員が仕入れ先ごとブル商会へ行ってしまったから、と話した。

何処から仕入れていたのか聞いたら、プール商会だと直ぐに返ってきた。

「あ、もしかして、クロスでプール商会とポーションの取引をしてるのってロベルトのところですか?」

「えっ?はいそうです。あ…今は違います」

ロベルトは不思議そうに見返してきた。

「もしもですが、売るポーションが有れば商売再開は可能ですか?」

「…それは可能ですが」

「プール商会とは年に1回の取引でしたか?」

「はい」

「仕入れ量は?」

「初級1000本、中級100本、上級20本で状態異常の回復が少量です」

ヨハンさんがクロスまで運んできたあのポーションは、ロベルトの父親に売るためだったんだ。

ロベルトの話だと、あのポーションはブル商会に渡った可能性が高かった。

「そうですか。これは突飛な話ですが、買い付けた宝石を売った代金でポーションを買いますか?」

「えっ?…それは」

ポーションを仕入れる資金ごと社員がブル商会へ行ってしまったので、手持ちの資金では小さい宝石が1つしか買えなかったとロベルトが謝ってきた。

持ち逃げされて手をこまねいていたのかとロベルトを見て、取り返せそうに見えないから言うのはやめた。

代わりに確認も兼ねて聞いてみた。

「話が急すぎました。プール商会の誰と商談していたかご存じですか?」

「よ、ヨハンさんです」

ロベルトは逃げ腰になりながら答えてきた。

ハート国から出たことが無いと言っていたヨハンさんが、他国のロベルトの父親とクロスで商談をする。

商売人のヨハンさんからは想像しにくかった。

「ロベルトのお父さんとヨハンさんは知り合い?」

「はい。昔父がハート国を旅した時に知り合ったそうです。あれ…知り合いって?え?」

驚きながらも見てくるロベルトに答えた。

「このスペード国へ来る前ですが、僕はヨハンさんの警備をしてたんです」

「えぇっ?」

「警護はクロスまでで、これから大切な商談があると嬉しそうでした。多分ロベルトのお父さんとだと」

「そうでしたか…、そんなご縁が…」

ふと気にかかった。

「もし病気とかで片方が行けなくなったりした時はどうしてたんですか?」

「今までそんな事無かったのでしっかりは聞いてませんが、2人だけに分かる暗号があったらしいです」

「やっぱりですか。なら今回はその暗号を使って?」

「分かりません。僕は聞かされてませんでしたが、おじさんにならもしかしたら教えてたかも…」

ロベルトが涙声になったので話を戻した。

ロベルトの口からでたおじさんが社員なんだろう。

信頼していただけに受けたショックも大きそうだ。

「僕の知ってるヨハンさんなら、ロベルトのお父さんが来ないと知って商談を打ち切ると思います」

「…えっ?」

「ロベルトのお父さんだから、商売人のヨハンさんがかなり安く卸していたと思うんですが」

「仕入値は初級ポーション1個が金貨9枚、売値大金貨1枚でした」

今度は僕が驚いた。

教会からの買値で売っていた事になる。

クロスまで自腹で着ても会いたいほど、2人の間には強い絆があったんだろう。

それならなお、簡単に売るとは思えなかった。

「コバルトブルーに着いたら、ヨハンさんに今回の商談の結果を確かめてみます」

「そんな事が?」

「冒険者同士は冒険者ギルドを通して連絡が取り合えますから、ハート国の知り合いからヨハンさんに連絡を取って確認して貰います」

アランの顔を思い出しながらロベルトに話していた。

「あ、スペード国には商業ギルドが無いんですか?」

「無くなりました」

「え?」

「かなり前に。宝石が国の産業になって国が管理するようになったので無くなったんです」

「そうなんですか」


コバルトブルーに着いて早速アランに手紙を送った。

旅に出ていなければ直ぐ返事が来るはずだ。

返事を待つ間、宝石を高く買い取ってくれる店をロベルトと探した。

ナビに1番売値が高い店を探して貰って大金貨8枚で売った。

大金貨8枚で初級ポーション9個を渡した。

残り金貨1枚は売れたら払う形にした。

可能性として、ヨハンさんとの商売が再開してトラブルにならないよう売値はヨハンさん価格にした。

ロベルトはポーションを買ってくれそうな店と交渉して、2個3個と売っていった。

飛び込みでポーションを売るロベルトは、今まで見てきたロベルトとは別人に見えた。

あ、ホリゾンブルーの採掘場を見てこなかった事に気が付いた。

必要ならまたその時転移しよう。

「2日待って連絡が無かったらこっちも移動します」

「え?でも…」

「僕たちと同じで相手も旅の途中なら、無駄に待つことになりますから。次の町で確認しましょう」

ロベルトは出発するギリギリまでポーションを買ってくれそうな店を飛び回っていた。

コバルトブルーを出る時にはロベルトの運転資金が大金貨50枚になっていた。

「ロベルト、僕が1日に作れるポーションは限られてるから、1日初級ポーション100個までにさせて貰う、今は作りおきを出してる状態なんだ」

「え。あなたが作っていたんですか?それなら旅の途中は作れないよね」

チラッと心に疑惑が沸いた。




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