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10年の時に  作者: まほろば
ハート国
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初めての街



30日目に着いたライトの街は、グリーンの町の倍くらいあった。

南北に門があって門番と兵士が街を守っていた。

大きい通りを行き交う人達も身綺麗な人が多かった。

冒険者ギルドへ行って依頼を終わらせる。

臨時のパーティーも解散した。

おじさんと別れて、アランともそこで別れるつもりでいたら、アランから一晩泊まっていけと誘われた。

「いえ、出産を控えてる奥さんに気を使わせるのは悪いので次の機会に泊めてください」

そう遠慮してもアランは聞かなかった。

この街には風呂のある宿があるのに、と思いながらアランの家へ向かった。

アランの家は大通りから入った住宅街にあった。

大きくはないけど庭もある一戸建てで、日焼けした笑顔の太ったお姉さんが出迎えてくれた。

「あら、可愛いお客様ね」

「俺の奥さんのベルだ。この子はトオル」

「初めまして。突然お邪魔してすみません」

「良いのよ。アランが来いって誘ったんでしょ?」

奥さんは笑顔でお茶を煎れてくれた。

「あの、良ければこれを」

日本人の性で無償で泊めて貰うのは無理。

ウサギの毛皮を出す。

「宿代なんていらないわよ」

可笑しそうに笑うベルに、気持ちだからと受け取って貰った。

「綺麗なウサギの毛皮ね」

ベルは感心しながら手触りを楽しんでいた。

「毛皮で思い出した」

アランが腰の袋から熊の毛皮を何枚か出した。

「足りるか?」

「充分よ」

ベルが枚数を確認してそう言った。

熊の毛皮は敷物として高価で売れるらしい。

家計の足しにするのかと思っていたら違うらしい。

「これであの子達の装備を揃えてあげられるわ」

毛皮を売って装備を買ってあげると聞いて、アイテムボックスの中の装備を何点か出した。

「この装備は?」

「国を出て直ぐ盗賊に襲われて…」

「なるほどな。良いのか?」

「はい」

どう説明しようかと口ごもっていたから深追いしないアランの言葉は有り難かった。

夕食の時に果ての村の話とロンの話が出た。

「え?200弱の群って話だったのに?」

ベルの顔が青ざめた。

「俺もヤバイと思ったさ。そこに救いの神」

アランが僕を指差した。

ベルにも見られて居心地が悪い。

「トオルが現れた」

アランが淡々と果ての村の討伐の話をする。

ベルは黙って聞いていた。

「それで?ロンって子は?」

アランがベルに話しながらどんな経緯で知り合ったのかと聞いてきたから正直に話した。

「なるほどな」

納得したように頷くアランにベルが聞いた。

「どんな子なの?」

「初めはお調子者だと思ったんだが、段々狡くなって自分の都合の良いように話を造るようになってな」

「何となく分かるわ。トオルに会ってはっちゃけちゃったのね」

そう言って頷くベル。

ベルのお腹を見ながらアランが続けた。

「家もこれから人手が必要になるからロンが正直に話したなら妹を家で手伝わせる事も出来たんだ」

「その子の狡さが許せなかったのね」

「ああ」


果ての村とロンの話が終わると、アランが僕のこれからの予定を聞いてきた。

「地図だと道なりに行けばこの国を一巡出来る気がするんですが」

地図の町や街を一筆書の要領で繋げると、世界の果てから4つの国の中心の街に辿り着く。

「国境を超えるのは難しいんですか?」

一番気になっている事を聞いた。

「いや、ギルドカードを見せればすんなり通れる」

「良かった」

「国によって使っている硬貨が違うから、他国で気を付けるのはそれだけだ」

パーティーで大陸中を歩いていたアランの話はとても参考になった。

「次の町のライトグリーンからグリーンハーツ、王都のハーツまでは1本道だ」

アランはテーブルに広げた地図を見ながら言う。

「ハーツまで?」

アランの言い方が気になって聞き返したら、その先に山があって右回りと左回りがあると返ってきた。

「どちらから回っても大差ない」

「ハーツに着いてから考えます」

「そうだな」

ハーツに居る仲間への手紙を持たせるから何か困ったら訪ねろ、とアランが言ってくれた。


その夜アランの話を聞いたベルに型を見せて欲しいと言われて驚いた。

アランから結婚するまでベルも同じパーティーに居たと聞いてなお驚いた。

冒険者と女性のベルが上手く重ならなかった。

冒険者は男だけだって思い込んでたからかも。

深呼吸して夜の庭に出る。

食い入るような2人の視線が熱かった。

「ランクはCだが実力は俺より強い」

苦笑して話すアランの背中をベルがポンと叩いた。




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