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10年の時に  作者: まほろば
ハート国
11/121

討伐



その日の夕方。

到着した村はぎすぎすしていた。

じろりと冷たい目で見られ、直ぐに村中の戸が固く閉ざされた。

村の中央にはうず高く薪が組まれて置いてあった。

明らかに変だった。

ロンを冒険者達から離れた一角に誘った。

魔物の討伐にきた者を何故村が歓迎しない?

冒険者のがらが悪いから?

考えていたらアランが薪に火を付ける所が見えた。

魔法?

アランが手を翳しただけで点いたように見えた。

懸命に昨夜を思い出す。

焚き火の火は誰が付けた?

何度思い返しても点けるのを見た記憶がなかった。

他に携帯食を配り終えたアランが側に来た。

最後の1個をロンに渡して隣に座った。

「君達は討伐に参加するな」

「え?何故ですかっ!俺が弱いからですかっ」

「ロン。静かに」

いきり立つロンを宥める。

「だってトオル」

「静かに」

ロンを再度止めてアランを見た。

「この討伐が盗賊になりかねない冒険者を一掃するためだからですか?」

「え?」

ロンが慌てて回りを見た。

「分かってて着たのか?」

アランがからかうように言った。

「いえ、ここを見て気付いたんです」

「気付くのが遅かったな」

ロンがハッとした顔でアランを見て、何かを理解したのかがっくりと項垂れた。

「トオルごめん。お前止めたのに強引に依頼受けて」

「いいさ」

「父ちゃんに聞いてたのに、ごめんよ」

泣きそうな顔で謝るロンの肩をアランが叩いた。

「分かればいいさ」


それから10分後。

意識に地図が浮き上がって赤い点が大量に近付いてくるのが分かった。

アランはこの数を相手にするつもりなのか?

信じられなくてアランを見た。

僕の動きで感付いたのだろうアランが立ち上がった。

『ナビ、数は?』

声に出さずナビに聞いた。

『オヨソ350』

350をアラン1人で?

冒険者も死にたくないからガンバるだろうけど、1人6体のノルマは無理があると思った。

「僕は行きます」

「来なくていい」

「行きます」

「200そこそこの群だ、冒険者が60もいれば十分討伐出来る」

「情報は200と?」

「ああ、何だ?」

疑問を持ってこっちを見るアランに、耳をそばだてる仕草をして見せた。

「もっといるように聞こえます」

するとアランが迷わず村を囲む塀の継ぎ目に足をかけて登っていった。

そこにどんな光景を見るのかは想像できる。

「来るぞー」

アランの大声に冒険者から雄叫びが上がる。

それから我先に村の外へ飛び出していった。

アランも塀を降りて出て行ったかに見えたが、方向違いの塀に登っているのが見えた。

冒険者が全部外へ出ると、村の青年が2人家から出て来て素早く入口を丸太を組んだ板でふさいだ。

「ロンはここに居ろ」

「だ、だって」

「足手まといだ」

ロンに言い捨ててからアランに近い塀に登った。

「倍はいるな」

見ると月明かりの中に冒険者の腰くらいの小人や冒険者くらいの魔物がごちゃごちゃいた。

狼やゴリラらしき姿もあって本との違いを実感する。

大まかな状況を把握できた所で、緊張から詰めていた息を漸く吐いた。

群の後方に3メートル以上ありそうな姿があった。

あれがボス?

最初こそ冒険者達が押してでていたが次第に数で負けて押し返されている。

1人、2人と倒れ形成不利に気付いた冒険者が門を開けろと叫んでいた。

アランが登っていた場所を見上げる顔もあったが、アランはすでに居ない。

これを見越して移動したのだろう。

冒険者達で倒した数は200以上に見えた。

アランは動かない。

アランは全部の冒険者が消えるまで待つつもりなのかもしれない。

そう思ったら背中がぞくぞくした。

自分だって敵討ちに盗賊を殺している。

アランの事は言えないと思った。

最後の1人が力尽きてから、アランは手をかざして手のひらサイズの火の玉を魔物の群に放った。

何発か放って剣を引き抜いた。

「魔力切れだ」

じっと見ていた僕にそう言った。

アランが飛び降りた後に続く。

剣に魔力を流しイメージは変わらず氷の剣だ。

アランの背中を庇いながら向かってくる魔物を次々倒していく。

アランは力で圧すタイプに見えた。

魔物にアンテナでも付いているのか1匹も逃げないで向かってくる。

1種のマインドコントロール?

ボスに辿り着く頃には真夜中になっていた。

ボスはアランに任せ残りを引き受けた。

ようやく方付いてアランを見ると、ボスを仕留めきれずに苦戦していた。

爪でやられたのかアランの右腕と胸が赤く染まっていて、肩が大きく上下していた。

「僕が」

アランの前に出てボスと対峙する。

ゴリラを巨大にしたような巨体を左肩から右脇腹へと薪を切る要領で切った。

切るのがもし普通の剣だったら、固い皮膚に弾かれて傷付ける事も出来なかったかもしれない。

痺れる手の感触に鍛練不足を痛感した。



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