思春期
「おっぱいっていいよな!」
「……え?」
放課後、誰もいなくなった教室に響く声。
教室で目の前に居る男子が突然妙なことを言い出した。
「な!あの大きくて柔らかくて、そしてボリューミーな二つのメロン!!あー……いいよなあっ」
「触ったことあるの?」
「あったらこんなこと言わねー」
死んだ魚の目をしてぼやく。
「彼女ほしー」
「作れば」
「簡単に言うな!」
「簡単だろ?」
「おまえはな!?」
あっちから勝手に求めてくるだろうに。
女でも男でも。
「とにかく!」
声を張り上げ話を戻そうとする。
「俺はおっぱいが揉みたいんだ!」
「大きな人なんてそうそういないぞ。厭きるしな」
「裏山死!」
「おまえ二次専だろ?今更じゃ」
「二次元好きだからって、全員が全員三次元に興味ないわけじゃないんだぞ!?」
「お求めのおっぱいは取り扱っておりません」
「店員みたいに言うなっ」
「あのな、二次元みたいなおっぱいは存在しないぞ。あんな反重力、見たことないね」
「揉めればそれでいい!」
「さいてーだな」
「ヤっては捨ててるお前に言われたかねーよっ」
「相性が合わないだけ。なあなあで付き合っても悪いし、あっちが求めてくるからそれに合わせてるだけ。客観的に見たら悪い奴だろうけど、こっちはこっちでめんどうなんだよ。こっちははっきり断ってるのにあっちから来てさ……変に優しくして諦めきれないとかどんだけ生殺しなんだよって。ただでさえ好きだって言ってくる奴多いのに、こっちは付き合い切れないよ。試しに付き合ってみても注文ばっかでこっちの話は聞かないし、話聞くと思ったら今度は聞くばかりで自分からは動こうとしないし、変な性癖や趣味持ってたり、それ自体はいいけど、こっちにまで押し付けるなって……なんでこっちばかり被害あるんだって話だよ──……あ」
可哀相な子を見るような同情のような、悲しそうな瞳をした男子がこちらを見ていた。
「……なんか、ごめん」
「あ、いや、喋り過ぎた」
「いや、さ……もしかしたらさ、相性のいい奴とか……できるかもよ?」
「そうかな……?」
「あ、ああ!その……」
「ん?」
「……お、俺──とか!」
「!……うん」
その日その瞬間から私と男子は付き合うことになった。
思春期な男子生徒がおっぱい!と叫ぶ話。