近くて遠い
帰宅すると、話しかけられた。
「今暇?」
「暇じゃない」
即答する。
「本当は?」
「多分に暇」
「ならお話しましょ」
「変な話じゃなければ」
「そうね……今どんなパンツ穿いてる?」
「また明日、さよーなら」
「待って♡」
僕はそっぽ向いたが、続けて話しかけてくる。
「あ、そうだ。明日の宿題した?」
「今帰宅したばかりだよ」
「スカートめくりは?」
「会話終了」
「男の子ってそういう事好きでしょ?」
「全員がそういうわけじゃないでしょ」
「私のめくる?」
「何、いきなり」
「ちなみに色は赤よ」
「聞いてない」
「情熱の赤。勝負下着よ」
「聞いてないってば」
「見たい?」
「……」
「めくる?」
「やめとく」
「じゃあ明日も勝負下着穿いてくね♡」
「さようなら♡」……と。
溜め息を吐いて天井を仰ぐ。
「ごめんね。
話できて楽しかったわ。ありがと♪」
「どういたしまして」
ケータイを閉じてベッドに放り投げる。
「はあ……先輩、僕がガラケーだからって、メールじゃなくて通話したらいいのに……。先輩らしいや」
明日は少しくらい先輩の相手してやるか。
「学校の自縛霊だからな」
僕は少し浮き足立っていた。
幽霊の先輩と携帯で会話する、そんなお話。