日常
彼と出会って数日がたった頃
彼は日々、少しだけやつれていった
ほんの少しの変化、普通の人だったら気づかないくらいの変化まで、気づくようになっていた
椅子に座ってため息をついている彼
僕は、何か言葉をかけてあげないとと思った
手も足も無い僕は、それぐらいしか出来ないから
「__さん、大丈夫ですか?」
彼は、声をかけた僕の方を見て大丈夫と優しく微笑みかけてくれた
それは、彼なりの優しさなんだと僕は知っている
また、資料に目を通そうとする彼の姿を見た僕はお話をしませんか?と言った
迷惑だったろうか?そんな不安を抱えながら彼の返事を待っていると
「いいよ、何を話そうか」
こちらに視線を向けて笑いかける彼を見て、
戸惑ってしまった
「う、えーと」
「ふふ、大丈夫だよ ゆっくりでいいから」
彼は僕に近づき、優しくガラスをそっと撫でる
まるで、頭を撫でられたような心地よさだった
その後、ゆっくりだが僕と彼はいっぱいお話をした
話をして大分時間がたった頃
「ありがとう、T」
彼はいきなりお礼を言った
「何の事ですか?」
そう聞き返すと、彼は何でもないと嬉しそうに言った
僕もそれを見て嬉しくなった
彼の楽しさや悲しさは、僕にとっても一緒なのだ
暫くして、彼はそろそろ行かないとと言った
何処にですか?と聞きたかったが、あえて聞かない事にした
言ってしまったら、彼が離れて行きそうで怖かったからだ
彼は少しだけ、僕に微笑むとおやすみと行った
彼が居なくなった部屋はとても寂しかった
辛くて辛くて、胸が張り裂けそうだった
涙なんてものは出ないのに、流しているような感覚だった
こんな事が続いたある日
僕は、彼に一つだけ願いを頼もうと思った
断られても全然構わなかった
けど、嫌われないか その事だけが僕の心配だった
ガチャリ
彼が、いつものようにこの部屋に入ってくる
そして、僕にいつものように微笑みかける
僕は、勇気を出し言った
「__さん!あの!」




