僕という存在
眩しい光の中、僕はそっと目を覚ます
そこには、僕の見た事のない世界が広がっている
少し戸惑っていると、壁の向こうから声が聞こえる
「初めまして、僕は__って言うんだ 宜しく」
その人は壁越しに手を差し伸べてきた
僕も差し伸べようとしたけど、僕に手というものは存在しなかった
その人は、無理か
少し笑いながら、また腰掛けていた椅子に座った
僕は、ただそれを見つめていた
何かを言いたいのに言葉が見つからなくて、喋ることも出来なかった
暫くして、その人がカリカリと何かを書いているのが見えた
僕はその文字を必死に覚えた
そして、「こんにちは」と声を出した
その人はビックリした顔で俺に近づいて、また壁に手をあてた
「喋ったの!?今!」
「はい、あなたの書いている文字を見て」
こんなにも、スラスラ言葉が話せるなんて自分でもビックリしている
「えっ? 見えてたの? このガラス見えない筈なんだけどな」
「そうなんですか? すみません」
何となくその人が考え込んでいたもので、思わず謝ってしまった
変かなっと不安に思ってしまったが、その人はただ笑顔で会話できて嬉しいよと言った
僕もその言葉が嬉しくて、僕も嬉しいですと言った
「よーし!今日から君は僕の弟だ!名前はそうだなーTってのはどうだ!」
自信満々に言う、その人が可笑しくてつい笑ってしまう
「そんなに可笑しいかな」
ぽりぽりと頬をかくその姿は、とても可愛らしかった
「すみません、凄く嬉しいです」
僕もその人のように笑って見たかったのだけれども、僕には顔というものが存在しない
あの人の目を見れば分かる
僕はまるで光の玉のような姿をしていた
その時、僕は虚しくなった どうして僕はあの人のような人では無いのだろう
まるで、落ち込んでいる僕に気づいたようにその人は話しかけてきた
「T、俺と一緒に研究をして見ないか?」
そう僕に問いかけられる 少し戸惑いはしたが
僕は「はい!」
と応えた
その人は、僕にいろんな事を教えてくれた
言葉や物の事、研究のことなど
どうして、研究をしているのか? と聞くとその人は曖昧にうーんと答えてしまう
多分、言いたくないことなのだろう
だから、僕は聞かなかった
それが一番いいと思ったからだ
僕の存在についても聞いてみた
どうやら、僕は能力という特別な存在らしい
不思議な力が宿っている、神様みたいなものらしい
それを作った彼は凄いと思う、だから、僕は目一杯彼を褒めた
彼は照れたように、頭をくしゃくしゃとかいていた
僕は、ここに生まれたことを幸せだと感じた
これが僕の始まりであり、彼との出会いでもあった




