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 次郎達は、鼠の妖に苦戦していた。

 三人に対して、鼠は三匹。一人一体を相手にしなければならない状態だ。

 弟子である真と嵐は、退治屋になって三年目と二年目で実戦経験はまだ少ない。

 当てにしていた壮年の退治屋二人組が殺されてしまったのは予想外の痛手だった。

 このままでは、いずれやられてしまう。自分も、大事な弟子も……

 そう判断した次郎は、二番弟子の名を叫んだ。


「嵐!」 

「な、なんだ、次郎!?」

 嵐は、妖と対峙しながら返事をする。余裕がなさそうだ。

「お前、豪也達と合流して助けを呼んで来い!」


 しかし、次郎の指示を受けた嵐は、それを渋った。

「……でも、そうなったら、ここは次郎と真の二人だけになっちまう!」

「助けが来るまでなんとか持ちこたえるから、急いで連れて来い。早く行け!」

 次郎に怒鳴られるように指示された嵐は、転がるように部屋を飛び出て走り出した。

 嵐を追おうとする妖を次郎が食い止める。次郎は一度に二匹を相手する気だった。


 助けを呼びに行くにも、途中で別の妖と遭遇する危険性もある。

 豪也達がどこをうろついているのかも不明だ。

 部屋を出た嵐の無事を祈りながら、次郎は妖に向けて武器を振り下ろした。



 敬子達は、慎重に宮殿の中の妖を探し歩いていた。

 同行している退治屋は、豪也達と親子連れの退治屋、弟子が三人いる退治屋だ。


 宮殿の奥へ進むと、それまで静まり返っていた宮殿の中が俄に騒がしくなった。

 チチチ、キキキという鳴き声とともに急に一定方向へと走り出した鼠の群れが現れ、闇の向こうに姿を消す。

「妖の親玉に呼ばれたかな」

 親子連れの退治屋の父の方が言った。子の方は、キョトンとした表情で闇の中を見つめている。

「……だな、鼠を追うぞ」

 豪也も同意する。敬子達は鼠達が消えた方向へと走った。


 しばらく走ると、ドタバタという物音と、「グギャッ」という不気味な鳴き声がした。妖の気配に反応した敬子は、立ち止まって辺りを警戒する。

「この辺りに、妖がいるの?」

「ああ、近いな……来るぞ!」

 豪也が答えたその瞬間、闇の中から何かが飛び出してきた。

 敬子が咄嗟に刀を構えると、それに向かって鋭く硬いものが振り下ろされる。キィンと甲高い金属音が鳴り響いた。

 その音に違和感を感じた敬子は、そっと刀を確認する。


「……あれ?」

 よく見ると、敬子が刀で防いでいるのは、妖の爪や牙ではなく鉈だった。

 慌てて蝋燭の明かりで闇を照らすと、見知った顔がある。それは、退治や仲間の嵐だった。


「嵐か……どうした? 次郎はどこだ」

 一人でいる彼の様子から、ただごとではないと感じ取ったのだろう。豪也が焦っている。


「妖が出た! 今、次郎と真が退治している途中だけど、数が多くて苦戦している!」

「どっちだ?」

「こっちだ! 早く付いてきてくれ!」


 退治屋達は、素早く嵐の後を追う。

 次郎達がいる場所までは、さほど離れていないようだった。

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