実力主義<※麗華視点>
麗華視点の物語です。
——まさか、自分が巫女に選ばれるなどとは思ってもみなかった。
——自分は一生この里で、平凡に生きていくのだと思っていた。
他の娘と同じように結婚し、子を産み農作業をして、この里で静かに朽ちてゆく。
自分と同じ年に同じ里に生まれながら、長の娘と言うだけで特別扱いされている従妹を羨ましく思ったものだ。
何の取り柄も無いくせに、「長の娘だから」と周りの者はまだ幼い頃から敬子に媚を売っていた。
それを当たり前のものとして享受している彼女が、麗華はあまり好きではなかった。
今回の件はそれを根本から覆したのだ。
里の者達だって、敬子より麗華のほうが優れていることは知っているはず。
麗華は生まれた境遇に関係なく、公平に実力で巫女を選んでくれた都からの使者に心から感謝した。
※
その晩は昨晩とはうって変わり、麗華のために盛大な宴が催された。
昨日の今日だというのに、節操がない。
都からの使者達は今までとは違い、敬子の家ではなく麗華の家に泊まった。
とはいっても、敬子は里の娘達と共に宴の世話に借り出され、麗華の家に出入りしていたが。
昨日と立場は逆転だ。豪勢な料理が盛り付けられた大きな器を華やかな座敷へと運ぶのが彼女の役目。
今日の主役である麗華は、座敷の一番上座に座って使者達と談笑していた。
首元には、巫女の証だという国宝の首飾りも付けている。
既に”巫女様”扱いだ。自然と笑みがこぼれる。
麗華の隣には、都からの使者である黒鵜が座っている。
親切な彼は、里では見たことがないほどの整った顔立ちに洗練された物腰の素敵な青年だ。
麗華は黒鵜にときめいていた。
使者達も里の者も昨日とは違い、もはや誰も敬子には見向きもしなかった。
翌日、麗華は巫女を乗せて都へ向かうための華やかな輿に乗った。