表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/46

再会

 どうして、あの女がここにいるのだ。

 もう二度とその姿を見たくもなかった。

 久しく忘れていたドロドロした感情が溢れてくる。


「麗華……」


 敬子がこの世で一番嫌悪し、軽蔑する女がそこに立っていた。


「……敬子、生きていたのね」


 麗華は、その美しい顔を歪めて微笑んだ。

 腕の中の子犬を抱きしめた敬子は、心を鎮めて平静を保つ。

 そうでもしないと、麗華を声の限り罵倒してしまいそうだった。


「どうして、あなたが此処にいるの? 何しにきたの?」


 自分でも分かるくらい冷たい声が出る。


「……今すぐ、ここから出て行ってよ」


「敬子」


 大叔母である加世が、憤る敬子を止めた。


「……加世さん、何故……?」


 加世は麗華の方を一瞥すると、敬子に目を合わせた。


「麗華は、都の宮殿から逃げてきたんだ」


 意味が分からない、巫女の仕事を放棄して逃げ出すなんて。

 あんなに大勢の人間を犠牲にしてまで得た地位を投げ出して、ここに逃げて来るなんて。


「麗華は、妖に命を狙われている……」

「……それが?」


 敬子も、空も海も妖に命を狙われた。紅尋の住人達も、都の外側に住む人間も。

 それを見殺しにして、安全な場所でぬくぬく暮らしていた人間が、今更何を言っているのだ。


「聞いて、敬子。お祖母様が、妖に捕われているの……宮殿の中に、妖が入り込んでいたのよ……」

「だから、何?」


 宮殿の外は、すでに妖だらけではないか。現に敬子の腕の中と後ろにも一匹ずついる。


「それで?」


 また自分の居場所を引っ掻き回すのか。この女は……

 そう思うと、更に麗華に接する態度が冷たくなってしまう。


「このままだと、お祖母様が妖に食べられるかもしれないの! 私は、何とか宮殿から逃げ出すことが出来た。でも、お祖母様は、私の代わりに巫女として捕まっていて……このままでは、宮殿に住む妖に……」


 よく見ると、麗華の服は巫女服ではなく、簡素な使用人の様な服装だ。

 巫女だと気付かれないように逃げる時に着替えたのだろう。彼女は、相変わらず自分本位な女だった。


「だとしても、私にはどうすることも出来ない。麗華、あなたは里に帰れば? 麗華なら出戻っても、きっと皆温かく迎えてくれるわ。特に民子叔母様や里の男共なんて、涙を流して喜ぶでしょうね……あなたが非道な人殺しでも、あの人達には関係がない」

「敬子、言い過ぎだよ!」


 加世が敬子の言葉を遮った。大叔母は敬子や空と海のことを分かっている。

 それ以上、加世が敬子を責めることを言わなかったので、敬子は感情に任せて当たり散らした自分を反省した。


「出て行ってよ……二度と私や、空や海の前に姿を見せないで……!」


 敬子は麗華が出て行くように道をあけて彼女を促す。

 自分の平穏な世界を、彼女に二度と壊されたくなかったのだ。

 麗華は俯いた。しかし立ち去らず、両手を握りしめて言った。


「……あなた達が私をどう思っているのかは分かったわ……でも、私にも、しなければならないことがあるの……」


 そう告げる彼女の声は、不安と屈辱で震えている。


「お願い……敬子、お祖母様を助けて……」


 あの麗華が、加代や空や海の面前で、敬子に頭を下げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ