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祖母と再会<※麗華視点>

 麗華は祖母を捜し始めた。

 宮殿の者達は皆黒鵜から口止めをされているようで、麗華が聞いても答えてくれない。

 仕方ないので麗華は自分で宮殿の中を捜索し、他人の話を盗み聞きし、仲良くなった者からそれとなく情報を探っていく。


 時間はかかったが、祖母は東の建物内にいる可能性が高いという事が分かった。

 黒鵜が仕事中の時間帯を狙って、東の建物内の部屋を捜索する。

 だんだん大胆になってきた自分に苦笑いしながら。


「お祖母様、どこです」


 何個目かの豪華な襖を開けた時、麗華はついに祖母らしき人物を発見した。


 彼女は白い布で拘束され、布団に横たえられている。

 異常事態に、麗華は唖然とした。

 幸い周囲に人はいないようだ。彼女は慌てて祖母らしき女性に駆け寄った。


「お祖母様ですか」


 そう言うと、その人物は驚いた顔で麗華をじっと見つめ、首を傾げた。


「私、あなたの孫の麗華と言います」

「……麗華」


 麗華は祖母の拘束を解くと、彼女に何が起こったのかを尋ねた。

 巫女である祖母が拘束されているなんて、明らかにおかしい。黒鵜は、祖母は力の使いすぎで体力を消耗し、弱っていると言っていたのだ。


「私は数日前からこの状態さ。それまでもずっとこの部屋に軟禁されていた」

「一体何があったというのですか、黒鵜は何故こんなことを黙認しているのですか」


 祖母はため息をついて言った。


「あいつはダメだよ、自分の地位を守る事しか頭にない。だから、上の連中がおかしな事に手を染めていても何も言わず従っている」

「お祖母様、それはどういうことですか?」


 嫌な予感がした。


「都は……いや、この宮殿は既に妖の手に落ちている。上の奴らは妖か、妖に媚び諂う人間ばかりだ」


 安全だと思っていたこの宮殿さえも妖に浸食されているというのか。麗華はぞっとした。

 祖母は麗華をまっすぐに見つめて言った。


「麗華、今すぐ宮殿からお逃げ。このままでは……あんた、奴らに食われてしまうよ」

「え……?」


 祖母の言葉に、再び襲われたときの恐怖がよみがえってきた。


「お祖母様は、どうされるおつもりですか?」

「私は残る。巫女が宮殿から消えるなんて、大問題だろう」


 こんな目に遭ってまで、巫女の役目を全うしようと言うのか。結界はないに等しく、宮殿の手前まで妖が現れているというのに。

 麗華は祖母を立たせた。弱ってはいるが、立つことは出来るようだ。


「守られているだけなんて、嫌。誰かを見捨てて逃げるなんて、もう嫌よ」


 麗華は祖母の手を引いて部屋を出る。


「二人で、外に逃げましょう」


 しかし、祖母はそれを拒んだ。自分がいなくなれば確実に気付かれるからと。


「妖は巫女の気配に敏感だ、宮殿から巫女の気配が消えれば必ず気付く。特にこの宮殿に巣食っている奴はな」


 祖母は立ち止まって、話を続けた。


「奴らは巫女を食う事で力を増そうと躍起になっている。そして、それこそが歴代の巫女がこの宮殿に立て籠って結界を張っていなければいけない理由でもあるんだ。私が外へ出れば確実に妖に狙われる」

「しかし、それでは私も狙われるのでは?」

「アンタの首に掛かっている国宝の首飾り、昔我々の先祖が我が一族の巫女に託した代物だと聞いている。国宝を身に付ける事で初めて巫女候補は正式な巫女となる。それを付けていない限りは、狙われる事はない。たまに、間違えて巫女候補を襲う妖もいるがな……悪いが、詳しい事を今は話してやれる時間はないんだ」

「なら、この飾りだけを置いて、お祖母様も一緒に逃げましょう」


 必死で言い募る麗華を他所に、祖母は首を振った。

 麗華の首に手を伸ばし、彼女の首飾りを外す。


「この国宝は私が預かっておくよ、囮は私一人で十分だ。麗華……都の西へ、彩夏へ逃げなさい。私の妹が住んでいるから」

「私はこんな状態で、まともな結界を張る事もままならない。でも最低限、出来る限りのことはするつもりだ」


 麗華は、静かに微笑む祖母の顔を見て、何を言っても彼女の意思を変えることは出来ないと悟った。


「早く行きなさい。くれぐれも見つからないように……」

「嫌です!お祖母様!」


 その時、人の足音が近づいてくるのが聞こえた。


「早くするんだよ、食べられたいのかい? 私なら、しばらくは大丈夫だから。最悪、結界を張って篭城も出来る。今一番危ないのはアンタなんだ、麗華」


 祖母は麗華の背をドンと押し出すと、ピシャリと襖を閉めてしまった。

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