出会い
あの日、あの時、僕はこんな事になるとは思いもしなかった。
僕は、高校に入ってから仲がいい人が居なくクラスでも孤立している。
そしてクラスには人気者が居て、僕は鬱陶しく思っていた。
ある日、昼食を食べ終えた僕は暇な時間を潰すため教室で本を読んでいて教室は賑わっていて平穏な日常が送られていたのだ。
すると、人気者に付きまとう荒川千尋が「僕君、何を読んでいるの?」と聞いてきた。
答えようとしたとき、彼女の後ろにいた人気者の田口たちは、ニヤニヤしながらこっちを見ていて、聞いてきた荒川もニヤニヤしていることに気付いたが、僕はその事を気にせず「主人公が悪者を倒す話だよ」と小さく答えた。
その時、荒川は僕から本を取り上げゴミ箱に投げ捨て僕に笑いかけた。
人気者たちは「ナイシュー!!」と荒川に声をかけ、僕に「キメーんだよお前」と捨て台詞を吐き、教室から出て行った。
周りの人たちは僕を憐れみと安心の目で見ていた。
周りの人たちは、人気者から『マスコット(いじめられる人)』として扱われるのを恐れながら毎日を過ごしている。
そして、人気者から嫌われることは、このクラスで生きていけないほどの苦痛を強いられることとなり、人権を保障されないような生活を送っている。
僕はその『マスコット』になっている。このクラスで『マスコット』になってから、筆箱や上履きなど色々な物が無くなるのは当たり前だと思っているし、その事に何も感じなかった。
しかし、中学時代から仲が良かった友人は『マスコット』の僕と仲良くし続けることで、自分が巻き込まれるのを恐れて話してくれなくなったのは少し悲しかった。
一日の授業がすべて終わり、机の下の教科書をロッカーに入れようと取り出したとき、紙切れが落ちたことに気付く。
そこには、「体育館裏に来て」と綺麗な字で書いてあった。
カツアゲに呼ばれる時の殴り書きのような字とは違い、違和感を感じながら体育館裏に行く事にする。
と、そこには背の小さな女の子が見えてきた。
近くに行き、ようやく同じクラスの里中唯だと気付く。
彼女は「よく来てくれたね、黒鳥君」と静かに言った。
「今日は変な奴は居ないんだね、要件は何?」できるだけ笑顔を取り繕うように努力をしながら笑った。
それにしても、目鼻は整っていてかわいい声をしているけど、少しエラが張ってるな…と考えながら彼女の足元から頭上を見上げた。ブサ面の俺が言えたことじゃないが。
「黒鳥君と話していると、私まで虐められかねないから手短に話すわね」
「どうぞ、お話は何?」
「あなたは、生きていて楽しい?復讐したいとか、一泡吹かせたいとは考えたことないの?」
彼女は少し強く僕に言ってきた。
「んー復讐かー考えたことがないわけじゃないけど、人数的にも実力的にも無理だよね」
「そう、わかったわ。何か相談ごとがあったら私にメールでもしてくれれば相談ぐらいは乗るわ」
彼女はそう言い体育館裏から去って行った。
里中さん、いい人だな…好きになっちゃいそうだ。そんな事を考えながら家に帰宅した。
夕食を食べ終え、暇な時間を持て余していた頃
窓から、犬の声が聞こえてきた。また近所の犬が吠えているのか…
そんなどうでもいいような事を考えてきたとき、いきなり犬の鳴き声が止まった。
そして、近所のおばさんの叫び声が聞こえてきて、叫び声に驚いた僕はベランダから近所のおばさんの家を覗いた。
その時だった、犬は腹を何かで裂かれ血が庭に広がっている。
「薄気味悪い物を見てしまった…早く寝よう」と言いながら布団に入り眠りについた。