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唾棄すべき偏愛  作者: 平遥


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8/19

無計画な策

風邪で学校を休んだ4日後、私は名鉄名古屋駅近く、ナナちゃん人形の前に立っていた。この、ナナちゃん人形と言うのは高さ約6メートルもの、巨大なマネキンで名鉄百貨店ヤング館前の歩道に堂々と立っている。月2回のペースで名古屋ゆかりのスポーツチームのユニフォームや各季節の行事の服に着替えている。そんな場に私が立っている理由。聡明な読者の方々ならお分かりであろう。私は足立さんを待っているのである。


「むぅ、集合時間40分前はさすがに早すぎたか。」


と考えていると遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。


「よっす!なにやってんだ?」


岩田氏であった。


「人を待っているのだ。誰を待っているのか教えて欲しいか?ん?」

「イヤ、もうその弛緩しきった顔で分かるからいいわ……。」

「弛緩しきってはいまい、キリっと締まっているだろう。」

「めっちゃ緩んでるっつーの!」


何と!それは、まずい。足立さんが来る前に何とかしなくては。そう考えた私の肩を叩く者がいた。


「やぁ、君。おはよう。」


なんたることか!こんなタイミングで、我が愛しの黒髪の美少女のお出ましである。


「おはよう。足立さん。」

「ちょ!?どうしたの?その緩んだ顔?朝から何が有ったのさ?」

「い、いや何でもない。それより、集合時間まではまだ、30分有るのにずいぶん早い到着だなぁ。」

「そう?それでも君に負けてるからね~。30分前行動から1時間前行動に切り替えるべきかな?」


よし、どうやら、顔は誤魔化せたようだ。


「イヤ、足立っちゃん、その理屈はおかしいから。」

「お!岩田君も居たんだね。おはよう。」

「おはよっす。」

「さぁ帰れ、岩田。ここから先の予定に貴様は必要ない。」

「え~と、君?その言い方は酷いかな~って。」

「良いのだ、足立さん。岩田にはこれ位でちょうど良い。」

「イヤ、良くねーから……。」

「さぁ、家に帰りたまえ。聖水を振りかけるぞ。」

「地縛霊扱いから悪魔扱いかよ……。」


岩田氏が退散したところで足立さんが当然とも言える疑問を投げ掛けてきた。


「ところで何で岩田君が居たの?」

「さぁ?皆目見当もつかぬ。奴の事だ、大方ナンパでもしに来たんだろう。」

「どうしよう、否定しきれない私がいる……。」


そんなこんなで、買い物である。


「ここは……洋物屋か。」

「そう。このブティック1回来てみたくてね~。」

「何を買うつもりなのだろうか?」

「そうだな~。取り敢えず、夏物の服を何着かと、後アクセサリーを2,3個買おうかな~、と。」

「そうか、それならば私は外で待っているから見てくると良い。何時間でもお待ちしよう。」

「いやいや!外で待たせるなら何のために一緒に来て貰ったのさ……?しかも何時間でも待つって執事じゃないんだから。」


中々の例えツッコミをもらってしまった。しかし、私はこういうファッション系の店は好きではないのだ。


「すまないが、やはり外で待「ほら、行くよ!」」


かつて、何度も見た早業で腕を引かれ、店内に連れ込まれてしまった。


ピンク色の壁の店内は、花の香りがむせかえるほど充満しており、左隣の家電量販店にて空気清浄機を購入して四隅に置いてやろうかと思ったほどである。店員は皆髪を染めており黒髪の大和撫子など私の手を引く足立玲衣しか存在していなかった。あぁ、一刻も早くこの場を立ち去りたい。そして、右隣の本屋にて足立さんと本屋内にて別行動をし、その後合流した上で共に家まで帰りたいと思うのは身勝手であろうか?考えるまでもない。答えはyes。我ながら身勝手がすぎる。


「お~い、聞いてるか~?」

「!すまない、聞いていなかった。」

「え~とね、どっちの服の方がいいかなって。」

「ファッションに疎い私が言う意見なぞ頼りになるのか?」

「寧ろそういう人の意見の方があたしは気になるかな~。」

「ならば遠慮なく。そうだな……右、だろうか?」

「じゃあ、このネックレスは?」

「これは……左を勧めさせて頂こう。」

「ん、左ね。じゃあね……」


このタイミングで私に素晴らしい案が降りて来た。


「すまない、少々時間を貰っても良いだろうか。欲しいものが出来た。」

「?良いけど……。(ここ女性物しか無いんだけどな~。)」

「有難い。」

・・・・・・

こうしたやり取りを繰り返し我々は店を後にした。

さて、こっそり買ったブレスレットはどうするべきか。


「いや~、ありがとね。2時間も付き合わせちゃった。」

「いや、構わない。それより、この後はどうしょうか?」

「う~ん、あっ!そうだ。行ってみたい所があるんだけどいいかな?」

「勿論、同行させて頂こう。」


足立さんに連れていかれた場所はそれなりに有名なスイーツ食べ放題の店であった。


「いや~こういう店は、一人で来づらくてさ~。」

「まぁ、確かにここへ一人で来るのはキツイだろうな。周りにもカップルしかいないのだから。」

「でしょ?だから、今日来れて良かったな~って思って。甘いものは大丈夫?」

「ああ、問題ない。」

「良かった。」


カップルしかいないと言ったのにここまで反応が無いとは思わなかった。


・・・・・・

スイーツの味はさすが繁盛しているだけあり、本当に美味しかった。結局我々は2時間ほどその場でケーキや、ドリンク、軽食を腹に詰め込み、その後、一宮駅まで帰っていった。


「今日は付き合ってくれてありがとう。」

「いや、私こそとても楽しませてもらった。ありがとう。」

「どういたしまして。それじゃあね。また月曜日、学校で。」

「あぁ、さようなら。」


さて、ここへ来て何か胸に残るこのモヤモヤは何だろうか。




モヤモヤの正体が判明した。どうやら、私はとんでもない大馬鹿者らしい。何故、私はあの場でモヤモヤの正体に気づけなかったのか!?足立さんにプレゼントするために、こっそり買ったブレスレットを渡し忘れるとは、自分でも信じられない。突発的に、衝動的に行動するからこうなるのだ。やはり『無計画な策』は実行すべきではなかった。

ブティックのイメージは100%作者の空想、偏見なので悪しからず。

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