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唾棄すべき偏愛  作者: 平遥


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14/19

阿呆の策‐弍‐

さて、そんなこんなで放課後である。

私の家には、もとい、私の家の前には3人の勉学的向上心溢れる若人が集まっていた。


「すまないが部屋を片付ける間少々ここで待って頂きたい。」

「良いから上げろよ。寒いんだよ!」

「その点に関しては本当にすまないと思う。……足立さんに対しては。」

「俺にも思えよ!」

「それでは10分程お待ち頂く。」

・・・・・・

「お待たせした。どうぞ中へ。」

「うーい、おじゃまー。」

「は~い、おじゃましま~す。」


うむ、岩田氏の雑な挨拶に比べて足立さんの挨拶のなんと素晴らしいことか。


「あー……そうだ。俺は饅頭と濃いお茶じゃなくてクッキーと紅茶が怖い。」

「よし、岩田。お前もう帰れ。」

「俺が帰って困るのはお前らだけどな。」

「……ティーバッグの紅茶で良いか?」

「しゃーねーから許してやるよ。」

「許してやるだと?この、傲慢で高慢な不遜男が!」


割と強めにどつかれた。

・・・・・・

「……でx=3になる、と。」

「お~、そういうことね。」

「なるほど、サッパリ解らん。」

「……足立っちゃんは、理解力が高ーな。……おめーは、もう諦めろ。」


そう言うと岩田は、私に向かってティースプーンを投げてきた。


「匙を投げると言いたいのか?」

「おっ!察してくれたか。うれしーねぃ。」

「誰が上手い事を言えと言った。」

「あれ?面白くなかったか?」

「分かり辛い、25点。」

「うーん、駄目か。」

「とりあえず、もう一度教え直してくれないか?」

「あー……イヤ悪い。この後ちょっと用事が。」

「なんだと!?見捨てる気か!」

「いやー、悪いね。」

「このままでは私は何も得ずに終わってしまうではないか。」

「じゃあ、あたしが教えてあげよっか?今、教えてもらったとこならできるよ。」

「是非、お願いしよう。あ、途中で帰る裏切り者はさっさと出ていけ。」

「変わり身早ぇーって……。」

・・・・・・

岩田アホが出ていってから小一時間が経過した。

「で、今の説明で理解できた?」

「うむ、分かったような分からないような、何やらモヤッとしたものの残る感じではあるがおおよそ九分九厘理解した。」

「いや、九分九厘解ってないよね。」

「解っ……てない。」


言うと足立さんがティースプーンを手に取った。

止めろ。止めてくれ。


「まぁ、それは冗談として。」

「そ、そうか。」

「よし!じゃあこの範囲を捨てよう。」

「なるほど。この1つ前の単元で点を取ろうと言うのだな。」

「まぁ、そういうこと。……因みに前の単元の理解度は?」

「……フッ。」

「お、余裕とか?」

「自慢じゃないが……。」

「うん。」

「小テストで16点だ。」

「……だよね。」

・・・・・・

さて、そろそろ薄れてきた私の勉学的向上心を足立さんと共にあるというシチュエーションによって上げ続け勉学に励むこと2時間。


「そろそろ暗くなってきた。そろそろ帰られては如何か?」

「う~ん、そだね。んじゃもう帰ろうかな。」

「宜しければ……その……送っ……て……。」

「何?どうしたの?」

「宜しければ送ってしんぜようか?……と考えなくもなくてなんだったら或いはしかしそれでもいや、もしかしなくとも……。」

「うん、落ち着こうか。用件は分かったけど何がなんだか分からなくなってるから。」

「ハッ!すまない。大丈夫だ、問題ない。」

「そう、ならいいけど……。で?送ってくれんの?」

「あ、あぁ。そのつもりだが。……どうだろうか?」

「ん。いいよ。送って。」

「しかし女性独りでこの時間は……ってWhat?」

「だから送って。君が言ったことじゃん。」

「そ……そうだな。承知した。」

・・・・・・

「いや~。もう6:00でも大分暗いね~。」

「うむ。まぁ、もう12月だからな。」

「で?大丈夫なの?」

「大丈夫とは?」

「期末試験に決まってんじゃん。」

「おかげさまで。何とかなりそうではある。」

「それは重畳。」

「足立さんのおかげだ。」

「ま、それでもきちんとテストまで復習しときなよ。」

「それくらいは当然やるとも。」

「だね。」

「………。」

「………。」


会話が途切れてしまった。


「え……えっと、寒いね。」

「まぁ、12月だからな。」

「そ、そうだね。」

「………。」

「………。」


か、会話が続かない……。


「あ!じゃあ、もう着いたから。ここで。」

「おや、もうか。今日はありがとう。」

「うん。またね。」

「あぁ。」


こうして足立さんと別れた。

……前回の仕返しを忘れてたけど、まぁいいか。

・・・・・・

時間は経過して2週間後である。


「いやーしっかし意外だね。お前が数学赤点回避とはね。」

「黙れ、岩田。お前が帰ってからの足立さんの教え方が良かっただけだからな。お前は何もしてないぞ。」

「あー、ハイハイ。そうかそうか。」

「でも良かったね。赤点回避できて。」

「因みに足立さんはどうだったのだ?」

「私も無事OK!」

「良かったではないか。」

「ありがとう。ところでさ、冬休み暇?」

「私か?私はまぁ暇だが。」

「ねぇクリスマスパーティーしない?」

「あぁ。かまわないが。あ!岩田は来なくて良いぞ。」

「いや、行かねーよ。彼女とデートあるし。」

「ディスプレイの中に課金したのか?」

「いや、リアルだ!リアル!」

「え!?彼女居たの!」

「足立っちゃん驚きっぷりが失礼だぜ?」

「いや、知らなかったから。」

「私はまだ信じていないが?」

「そうかい。つーこってクリスマスは無理!」

「ふーん。残念。」

「ま、そっちの後行けたら行くわ。」

「ん。分かった。」

・・・・・・

こうして私は足立さんとクリスマスの予定を上手く取り付けた。『阿呆な策』も流れに任せると大した結果を出せるようである。


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