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黒髪ユウシャと青目の少女  作者: 姫崎しう
南の国メリーディ
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再戦

 夜が明けて、ルーリーノはニルを連れてペレグヌスの元に向かった。今までのように机をはさんでペレグヌスが椅子に座り、残り二人は向かい合うように立つ。


「どうしたんだ急に」


 ペレグヌスが面倒臭そうにそう言うと、ニルもどうしてここにいるのか分からないと言った表情を見せる。その中で唯一状況を知るルーリーノが口を開いた。


「今日で……と言いますか、今からウィリ君に最後の授業をしたらそのままメリーディに向かうので舟がどうなったか聞いておこうと思いまして。後はついでに別れの挨拶を……と」


「俺はそれを初めて聞くんだが……」


 ルーリーノの話を聞いてニルは呆れたようにそう呟く。もちろん隣にいたルーリーノにその呟きは聞こえていて全く悪びれた様子もなく頭を下げた。


「すいません。時間がなかったので言っていませんでした」


 そんないつもの調子のルーリーノに対してニルはどのような言葉も益体無い事が解っていたために溜息のように息を吐くだけで何も言わなかった。


「そっちの話は終わったか」


 退屈したように欠伸をしながらペレグヌスが言うので、ニルが「ああ」と簡単に肯定だけする。それからルーリーノも「そうみたいですね」と言ってペレグヌスに視線を移した。


「それで舟だが、メリーディのギルドに話はしてきた。碧眼のルーリーノが来たら俺の舟をくれてやれってな」


「ありがとうございます」


 ルーリーノが甚だいい笑顔で礼を言うので、ペレグヌスは声をあげて笑う。それを見てルーリーノは少し頬を膨らませたがペレグヌスは意に介さず話を続ける。


「それであの坊主はどうだった?」


「どうでしょうね。三日で教えられるほど魔法というのは簡単ではないのは貴方もよく分かっているでしょう」


 「それもそうだな」そう言ってペレグヌスが笑うのを見てルーリーノは「では、そろそろ行きますね」と切り出しペレグヌスに背を向ける。


「なあ、ルリルリよ。また帰ってくるのか?」


 背を向けたルーリーノに、ペレグヌスはまじめに声をかける。しかしルーリーノは振り返ることすらせずに「私の名前はルーリーノです」と言うと、からかう様な口調で続ける。


「目的が目的ですから、その保証は出来かねます」


 それからルーリーノはペレグヌスの反応を待つことなく部屋を後にする。慌ててニルもそれに続いた。



「いいのか、ペレグヌス放っておいて」


「いいんですよ。彼がその気になればこちらの状況なんて分かるんですから」


 町の門へと向かう下り坂そんな会話をしながら二人は歩く。その格好はいつもように目深にフードを被ったパッと見たところ不審者のような恰好。それでも、三日もいれば町の人たちも慣れたらしく一瞬視線を向けてもすぐに自分のやっていた作業へと戻って行く。


「そう言えば、ニルに頼もうと思っていたことがあるんでした」


 思い出したようにルーリーノが言うのでニルは「なんだ?」と何気なく尋ねる。ルーリーノはニルの隣を歩きながら何気ない感じで答える。


「今日私と勝負してくれませんか?」


 ニルは「ああ」と言おうとして躊躇う。


「ルリノ、何言ってるんだ?」


 躊躇ったのちすぐにそう言い直す。ルーリーノは説明が足りなかったと思いつつ「ルーリーノです」というと続けた。


「ウィリ君の最後の授業に見せてあげようと思いまして、一流の冒険者というものがどういうものなのかを」


 それを聞いてニルは逡巡したが、ルーリーノにも考えがあるのだろうと「わかった」と答える。ニルが頷いたのを確認してからルーリーノはもう少し詳しい説明を始める。


「一応、魔法の授業ですからその直刀は使わないでくださいね。それ以外ならユウシャの力も使っていいですよ。でも常識の範囲内で、ですよ?」


 「まあ、ユウシャの力自体非常識ですけどね」そう軽口だけれど言葉を選んでルーリーノは言った。



 ルーリーノとニルが町の門へと辿り着いたとき、すでにウィリは退屈そうに門の近くで待っていた。それから、ルーリーノが来たのを見つけると、何かを言おうとして口をパクパクと開いたり閉じたりする。


 そんなウィリの奇妙な行動はまだ少し離れているルーリーノの位置からも見えどうしたのだろうと首をかしげた。


「せ……先生、きょ、今日もよろしくお願いします」


 ウィリはルーリーノが来るなり早口でそう言って頭を下げる。ウィリと初めて会って以来まだ会うのが二回目のニルにはそんなウィリの行動の意味はわからなかった――一応ルーリーノは先生であっているのだが、ウィリが素直にそう言うとは思えなかった――が、ルーリーノは少し驚きはしたが、なんとなく嬉しくなって「とりあえず、いつもの所に行きましょうか」と少しだけ声を弾ませて言う。


 ウィリはニルの存在をやや気にしつつも「わかりました」と言ってルーリーノの後に続いた。



 それからいつもの海辺につき次第ルーリーノがウィリに向かって声をかける。


「今から私とニルで勝負して見せますので、それを持って授業を終わりにします」


 ウィリにしてみれば急な言葉で思わず「え……」と戸惑いの声を出してしまう。しかし、ルーリーノにはそれが聞こえなかったのか、ニルの方を向くと「それではお願いしますね」と言ってから呪文を唱え始めた。



 突如始まった二人の戦いにウィリは言葉を失う。開始とほぼ同時にルーリーノが風と火の矢を無数に宙に浮かせたと思ったら、対戦相手たるニルはそんなことお構いなしにルーリーノの方へと駆け出す。


 そのニルに向かって団幕のようにルーリーノは矢を放ち、すさまじい爆音とともに炎がニルを包み大量の煙を上げる。ウィリの中でこれで決着がついたと思ったのだが、ルーリーノはすぐさまその場から離れた。


 それとほぼ同時にニルが煙の中から姿を見せ、先ほどまでルーリーノのいた場所を切りつける。切りつけると言ってもニルが持っている刀には鞘が着いたままで当たったとしても死にはしないだろうけれど。


 ニルが意識を集中してすぐさまルーリーノが逃げた方向へと視線を向けると、ルーリーノはニルに向かって「ブロヴィ・ブロヴォ」と呪文を唱える。ウィリも知っている、ルーリーノ自身が簡単だと言っていた魔法。


 しかし、その威力は杖を持ったウィリと比べるまでもなく、遂に堪えられなくなったニルを吹き飛ばす。それから距離が生まれた事で余裕のできたルーリーノが次の呪文を唱え始めた。


 吹き飛ばされたニルはすぐに起き上がると「さすがに守りだけじゃきついか」と呟くと、静かに口を動かした。


 それからのニルの動きはウィリでも分かるほどに素早くなり、呪文を唱えるルーリーノの所へ一直線に走る。それにはルーリーノも驚いたが、間一髪のところで呪文を唱えきり、青白く光る炎がニルを包み込む。


 しかしその炎は蛇のように姿を変えはじめ、魔法を使ったはずのルーリーノへと襲いかかった。それを見てルーリーノは「相変わらず反則染みてますね」と言いながら左へ飛んで避ける。それから、このままでは少し部が悪いと軽く目を閉じた。



 それを見てニルは慌てたように駆け出す。ルーリーノが目を閉じるとき、それは無詠唱呪文を行う時で、呪文に費やす時間がなくなるということはそれだけニルが接近しにくくなるということ。


 どんな魔法が来ても先ほどのように操ることはできるかもしれないが相手がルーリーノであるだけに油断はできない。


 ニルがそう思った瞬間、ニルの視界が急にぼやけた。まるで水の中にいるようだとニルは考えたがまさにそのとおりで、ニルが余裕で覆われるほどの水球に閉じ込められている。


 あまりにもいきなりのことで一瞬判断が遅れたが、ニルはその水球を五つに分け出来るだけ圧縮するとルーリーノの方へと撃ちだす。しかし、水球はルーリーノに届く前にジュっという音を立てて姿を消した。


「そっちも大概反則染みてると思うけどな」


 と、ニルが呟いていると今度は地面から急に生えた、いつかキアラが使ったのとは比べ物にならないほどの太さの蔓がニルの足に絡みつく。

 ニルは舌打ちをして、今度はこの植物を操りにかかった。



 目を閉じているルーリーノは正確にニルの行動を知ることはできないが、自分の使った魔法に関してはそうではないのでニルに操られ普段感じないものを感じた瞬間にほぼ全方位からニルに魔法を放つ。


 一つは風の矢、一つは水の弾丸、一つは炎の柱。さすがにこれだけの種類の魔法を同時に撃てばニルであっても操ることはできないだろうと思っての一斉射撃。ルーリーノの予想通りニルは足の蔓以外の魔法を操ることができず、ルーリーノもこれで終わりだろうと紫にまで行かないもの濃い青い色になった目を開く。


 しかしそこでその判断が間違っていたと悟りもう一度、目を閉じようとしたところで真っ黒の鞘がルーリーノの首元につきつけられた。


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