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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪魔の脚本【あくまのシナリオ】

悪魔の脚本『Bernstein~少年領主と13人の乙女の話~』

作者: 有月 仮字

ホラーというか怪奇小説を目標に書いた物です。

あまり残酷な描写は入れていませんが、気にする方はお気を付けて。

 男は嘆き悲しんだ。これが嘆かずにいられるだろうか?

 彼はどうにも許せないことがあった。

 その相手はこの湖城の主。狂気に取り憑かれたその領主がやらかしたことは神に背くような行為だった。最愛の妹の眠る墓。その空っぽの墓の前で、男は慟哭の涙を流す。

 その一年後、世を恐怖に陥れる殺人事件が発生。その犯人たるその男の動機の一切が不明。

 彼は捕らえられる前に自害した。そのため何も伝わってはいない。

 おそらくは、家族を失い気が触れたのだろう。そんな仮説が立てられた。だが、その推測はあまりにおかしな点が多すぎた。

 無差別と言うには、それは確かに奇妙。男が狙った相手は何故か裕福層の者ばかり。彼が本当に狂っていたのなら、見境無く人を殺し回っただろう。

 しかし、人は今を生きるのに忙しく、過ぎた事件の真相を巡るような娯楽に興じる暇もない。過ぎ去った恐怖に唯、安堵の息を漏らすのみである。


 *


 「連続殺人事件、ねぇ」


 なんとも罪深いことだと私は思う。彼が、ではなく……彼にそうさせた外部要因。つまりは人間という生き物に対して。


 「結局人間達はそれを迷宮入りにしてしまったのでしょう?」

 「はい、その通りですお嬢様」

 「仕方ないわねぇ。物語の悪魔たる私が、いっちょ執筆してやろうじゃない。じゃなきゃこの男もあまりに浮かばれないわ」


 私が羽ペンにインクを付けてにたりと笑うと、私の執事は失笑と嘲笑の狭間の笑みを私に向ける。


 「何を笑っているのよ?」

 「いえいえ、なんともお嬢様らしかぬ物言いでしたので」


 いつも人間の運命を傾けて、悲劇と喜劇と残虐を好むがこの私。確かに上辺だけを聞けば奇妙に思うかもしれない。

 それでもこの物語の悪魔、司るは歴史と物語。史実を偽ることは私の存在意義に反する。物語は幾らでも脚色し導くけれど、もう終わってしまった物語は基本的には綴るだけに留める。今の私には過ぎたことを書き換えるほどの力はないのだ。


 「私は何もそこまで性格歪んでないわよ。いいこと、使い魔。喜劇というのは何も善人が惨めな目に合うことではなく、報いを受けるべき人間が叱るべき罰を受ける。そこから生じる残虐行為に愉悦を感じる感情よ」

 「やれやれ、お嬢様の高尚すぎる趣味は私には到底理解出来ません」

 「対する悲劇というものは、そういう善人が不幸の内に死ぬことよ。そしてその真実が明るみに出ることもなく他人に誤った認識を植え付けられ後世まで偽りが語り継がれること。物語の悪魔たる私が悲劇を綴るのは、その真実を書き記すということ」

 「その意味は?」

 「実益を兼ねた趣味よ。数千年、数万年後にその本を人間界に送り込み、発掘させる。そしてようやく物語は完成するの。天地が逆さになったときの奴らの顔を見てせせら笑うの。それが私の言う趣味よ。さくっと仕上げるからお茶のお代わりとケーキを持ってくることを私は所望します」

 「やれやれ、畏まりました」


 *


 さて、連続殺人事件の一年前まで話は遡る。

 年若く両親を失い、領地をついだその男。ベルンシュタインという名のまだ幼く年若い領主は、変人だった。しかし聡明であり、良き領主でもあった。富に関心を持てず、税を軽くし多くの民に慕われた。

 しかしその少年領主は重ねて言うが変人だった。そして未来を生きていた。彼は神に対する畏怖畏敬など無く、悪魔の存在すらも否定した。聡明なる若き領主は、多くの知識を吸収し、その間違いを指摘しながら正しい知識を取り込んでいく。そんな彼がある日を境に医学へと関心を持ち始めたのは、仕方のないことだったのかも知れない。

 未だにその場所では病に対する正しい知識が無く、いもしない神に祈りを捧げたり、不衛生な環境での手術を行う。更には薬と毒の違いも分かっていない節がある。そんな民の愚かさに、彼はほとほとあきれ果てていた。

 その内彼は、日に日に愚かな人々に嫌気が差してきた。そして彼の医術に理解を示さない連中を救うことも放棄して、唯怠惰な日々を送っていた。

 そんなある日、ふらりと領地のその外れを散歩していた彼が出会ったある兄妹。彼が領主だとも気付かず気さくに声をかけてきたその兄弟に、少年は興味を持つ。

 やれ顔色が悪いだの、やれやせ細っているだのと気を利かせ、同情でもしたのだろうか?家に招かれ食事をご馳走された。

 兄の名はカルク、妹の名はトリット。

 聞けば二人にも両親がいない。だというのにここまで楽しそうに笑って暮らしているこの兄妹は不思議だと少年領主は考える。自分と彼の違いを考え、それはその妹の有無だと考えた。妹も妹で、田舎くさい他の男達とは纏う空気の違う、この美しい少年にすっかり心を奪われていた。

 兄はその二人の空気を察し、「纏う衣類も高価、この男は何処か浮世離れしている。ここは観光に来るような村でもない。何か訳あって素性を隠している貴族か王族様に違いない」と喜んだ。可愛い妹、何処の馬の骨にくれてやるのも惜しいが、これだけ立派な人ならばくれてやるのも悪くない。そう思い始めた兄も、その少年の語る話に魅入られていた。

 その少年は貪欲な知識欲以外の欠点がなかった。しかしその一つの欠点がどれだけ罪深いことなのか、その世界にはまだ知る者が一人も居なかった。

 だから尋ねられれば少年は知識をひけらかすでもなく、尋ねられたことに答える。彼は何でも知っていた。傲ることなく嫌味無く、唯真実を語る少年は、神かその御使いなのではないかとさえ彼には思えた。学のないその男にとって、少年の言動は奇跡でも起こしているように見えたのだ。

 それから度々少年領主は二人のもとを訪ね、親しくなって行き、兄とは友人、妹とは恋仲のように見える関係までなった。その頃には貧しい兄妹も彼が領主だと言うことを知っていたが、金目当てなどではなく本当に彼のことを好きになっていた。しかし彼が変人だと言うことに気付けるほど、彼らは物を知らなかった。悪意とは、心か身分か暮らしの貧しさから生じるものなのだと二人は思い込んでいて、その全てが完璧な彼は、善意の塊なのだと考えていた。物語の定義としてそうだ。悪人は悪人の顔をしている。王子の顔をした悪人も盗人も人殺しも存在しない。詰まるところ少年領主はあまりに美しかった。その美貌と聡明さは彼の何もかもを好意的に見せるだけの力があった。影のある表情さえ、孤独に震える魂の姿なのだと相手に思わせ、なんとかしてやりたいという気持ちを思い起こさせる。


 「ベル!大変だ!!あいつを助けてやってくれ!」

 「カルク?」


 ある日城へと飛び込んで来た友人に、少年領主は首を傾げる。血相を変えて駆け込んだ彼を取り押さえた兵達を下がらせ、その訳を聞く。


 「トリットが!大変なんだ!」

 「解った。すぐに行こう」


 友人が駆け込んできた訳は、妹の治療を望んでだ。聡明なるこの少年ならば、きっと奇跡を起こしてくれると信じてだ。しかし少年は小さく首を横に振るばかり。


 「これはもう駄目だ」

 「な、なんだって!?」

 「カルク。人には予め決められた数の臓器がある。どうやら彼女はそれを病んでいる。一つしかないそれを、交換することは出来ない。解るね?」


 少女のことはそれなりには好いては居たが、この少年は変人だった。常に何か別のことを考えている。もしこの女を失えば、この男はどんな生き物になるのだろう。それは自分と同じ物だろうか?それは別の物だろうか?観察対象が即座に妹から兄へと移る。そんなことさえ友人は気付かない。


 「くそっ!お前までいなくなったら……俺はっ!俺はっ……」


 妹に泣いて縋り付く友人の姿を見つめる領主は、先程の自分の発言に気付かされてしまうことがあった。


 「交換することは……そうか。方法はあるかも知れない」

 「な、何だって!?」


 縋るような瞳で自分を見上げる友人に、少年領主は優しく笑ってやった。確かにそうだ。出来ないことではないかもしれない。


 「最善を尽くす。彼女を死なせない方法を思い浮かんだ」

 「ありがとうっ!ありがとう、ベルっ!!」


 泣きながら、両手を握りしめてくる友人。その熱い涙に触れて少年領主は初めて何かをやり遂げようとする熱意を手に入れた。何が何でもこの娘を救ってやろうという気になった。

 その少年は何も悪人ではない。唯、人と感性がずれているだけである。だから彼にも感情はあるし、人への思いやりという物も確かにあるのだ。


 少女を城へと連れ帰った少年は兵達に命じ、近隣諸国を走らせた。そして彼女の他に伏せっている娘達を探させ城へと招いた。

 そのかけ声に縋ったのは、殆どが貴族や王族。もう手の施しようもないという医者の匙を投げられた娘達。それが治るというのなら、どんな相手にでも縋りたい心境の親達は、少年領主に助けを求めた。

 聡明な少年は、一人を生かすために一人を殺すことなどしない。何故ならそれはとても非人道的で理不尽なことだと知っている。聡明なる彼は正しい命の引き算を知っている。

 友人の妹と、他の娘を合わせて全部で13人。都合の良いことに、皆患っている場所は違うところだった。

 しかしトリットはその中で最も具合が悪い。他の娘の到着を待つ内に、病が悪化していったのだ。今では全身の半分以上がその病に冒されている。ここで少年領主は心を決めた。


 「ベル……?」


 妹の手術が終わったと聞かせられたカルクは城へと赴いた。しかしそこに友人の姿はない。妹の姿もない。きらびやかな衣服に身を包んだ連中に抱き締められている12人の娘がいるばかり。

 それをみて、カルクは真実を知る。嗚呼、確かに妹は死ななかった。だがそれはもう俺の妹ではないのだと、その場に彼は凍り付く。そして友人が自分とは異なる認識、価値観を持っている男だと言うことに今更気付かされたのだ。


 「何てことをしやがった!!ベルンシュタインっ!あいつに会わせろっ!」


 そう騒ぐ彼は兵に取り押さえられ、城から放り出されてしまう。それからベルンシュタインがカルクの家を訪ねることはなくなった。

 この酷い裏切りを受け、カルクは復讐の念に駆られる。


 「あの男は違うと思っていた!金になど屈さないっ!そういう誇り高い男なのだと信じていたっ!信じていたのにっ!!」


 妹をパーツにして、他の権力者達に恩を売った。トリットに少なからず好意を持っていたにもかかわらず、もう助からないと知るや己の損得を考えた。

 せめてあの中の一人でも、妹の記憶を持っていて……自分の所に帰ってきてくれたなら、姿形が違っても、自分はその子を妹として愛せただろう。しかし、結果はあれだ。妹は死んだ。生きていると言ってもそれは妹ではない。妹は殺されたのだ。そして今も尚屈辱の内にある。

 男は領主への復讐を誓い、妹を取り戻すことを考えた。そして空っぽの墓の中に元の妹の姿のまま、埋葬してやろうと涙を拭いて立ち上がる。全ての娘の居場所を得るに一年の時を費やし……そして男は復讐へと乗り出した。

 男はそれぞれの貴族の元へ、ベルンシュタインの使いだと言い娘に近づいた。以前彼の城へと入るために渡された、彼の名が記された書状があった。それを見せれば誰もがそれを疑わず、彼を娘の前へと連れて行く。


 「以前の治療からしばらく経つ。その後の経過を見るためにも、一度城まで招きたいとのこと」


 そう言って、一人……また一人と娘を馬車で攫って行った。中には不審がり護衛を申し出る者もいたが、目立つと領主の奇行が露見すると断った。ベルンシュタインの治療は正に悪魔の所行。目を付けられる所に付けられたなら大変なことになり、今後何かがあっても治療が行えない可能性があると述べれば、仕方ないと皆が引き下がる。

 一人、二人はまだ良いが、12人ともなればベルンシュタインにもその話は届いたはずだ。

 しかし不思議と領主はそれに文句は言って来なかった。その黙認が、元友人なりの精一杯の誠意なのだろうとも男は考えたが、それでも許せることではなかった。

 12人が揃ったところで手術の跡を切り裂いて、その先から妹を取り戻す。死体が増える度に次々と揃っていくパーツ。しかしそれを集めても、人の身体は出来上がらない。それは人とは呼べるはずもない、薄気味悪い人形だ。完成まではまだ足りない。ここにはない、妹自身のパーツが必要だった。


 「ベルンシュタインを出せっ!」


 城へを向かえば見慣れぬ娘が彼を迎えた。領主の妻だというその女に、男は更に激怒した。俺の妹を捨てて、殺しておいて、自分は新しい女を作るとは!そんな怒りの視線を一心に受けながらも、娘は領主への部屋へと彼を誘う。

 震える手で鍵束を持ち、領主の部屋への扉を開くその女。姿形こそ美しいが、何か薄気味悪いものがあった。見ているだけで腹立たしいのだと男は思う。おまけに通された部屋は蛻の殻。机の上に一通の手紙が置いてあるだけ。これにはとうとう男は怒り狂い、娘を斬り付ける。


 「俺を馬鹿にしているのか!?」


 娘はもう何も言わず、黙ってその凶刃を受け入れ息絶える。その刹那、娘が笑ったように見えたのが彼にはとても不気味だった。

 男は、赤く染まった手で手紙の封を切る。領主の居場所の手がかりがあるかも知れないと。

 その手紙を最後まで読み終える前に、男は嗚咽を漏らしその場に膝をつく。

 確かにあの友人は変人だ。それでも悪人ではなかった。でなければ出来ることではない。

 振り返った先、女はもう事切れている。男はもう、泣いて自分の首を切ることしか出来なかった。一刻も早く死んで、二人に謝りたかったのだ。


 *


 「で、お嬢様。どういうことですかこれは」

 「あんたこんなことも解らないの?」


 これだから他の領地の眷属は、物語に対する理解が無くて困る。


 「少年領主ベルンシュタイン。彼は変人だけど善人だった」


 それがこの話の前提にある。


 「それでも変人は常人には理解されないものなのよ、悲しいことに」

 「しかし……冒頭の流れから、お嬢様が哀れんだのはカルクという男の方では無かったのですか?」

 「は?あんな馬鹿な男、精々喜劇の主役がお似合いよ。私の言う悲劇はそいつの妹と友人の方」


 私が答えると使い魔は失笑していた。不敬罪で殺してやろうかちょっと悩んだ。しかし身も回りの世話をしてくれる奴が消えるのは少々困る。仕方なしに妥協した。


 「まずあの少年は、13人の少女達の悪いパーツを入れ換えようと思った。発想は良いわ。だけどよく考えて?入れ換えるって事は悪いところを貰い受けるってこと。マイナスから始まってプラスマイナスマイナスのまま。だから良いパーツが必要だった。だから少年は自分の身体を犠牲にしたのよ。まず愛するトリットへの治療を優先。無くなっても大丈夫そうな物、12人の少女から賄えるパーツは彼女に与え、そのお礼にと、その12人に彼女たちが必要とする臓器を自分から奪って与える。彼が作り出した機械で補える子はそれを与えたけれど、みんながみんなそうとはいかなかったから、仕方ない事ね」

 「なるほど、確かに変人ですね。普通の権力者ならまずそんなことは考えないでしょう。自分を犠牲にするなんて。ですがお嬢様……」

 「最後まで聞きなさいって。そうね。だけどトリットはそれだけじゃ足りない。もう手遅れなくらい蝕まれていた。だからまだ生きているトリットのパーツを自分に組み込んで、自分の身体に彼女の脳を移植した」


 妹のパーツだと思って取り戻したのは領主のパーツ。それを集めても妹にはならない。

 城で兄を迎えたのは、領主の命を犠牲に生き存えた妹。それに気付かず殺してしまった兄は愚かだ。故にその男の物語は語るに足らない喜劇である。

 しかしその技術が普及した世界において、その領主の話が浮上したなら、それは悲劇に他ならない。未来の人々は過去の人間達の愚かさを大いに他人事として嘆くだろう。


 「会えるわけがないのよ。領主はもう死んでるし、妹は……申し訳ないしどんな顔で兄に会えばいいのか解らなかった」

 「お嬢様、しかしそれはおかしくありませんか?いとも簡単にそう言いますが、そんな手術をしながら肉体が欠けていくのに完全に手術をやり遂げられたとは私にはとても……」

 「だから何度も言ったじゃない。彼は聡明で天才で、数世紀先を生きているって」

 「ですが」

 「手段は幾らでもあるわ。まず手術のための機械を作り上げるか、自分が死ぬ前にトリットか他の娘を洗脳して死んだ後にはそれを継がせて正しく手術を執り行わせる。それか……もう一つ」


 私はにたりと笑い、使い魔を見る。


 「負けを認める事よ」

 「負け、ですか?」

 「彼は悪魔を認めた。だから協力してやったのよ。それにいい男だったし」

 「貴女の仕業でしたかお嬢様……道理で詳しいはずですよ」

 「あら?基本私はいい男を屈服させるのが好きなのよ。“全ての手術を終えるまで、彼は死ななかった”。この一文を書き記してあげるだけで彼はその偉業を成し遂げた。勿論前の二つの手段は彼も不測の事態に備えて準備していたけどね」

 「はぁ……なのに本文には一切悪魔のことは書かなかったんですね」

 「だってその方が面白いじゃない。私は歴史は偽らない。だけど物語は脚色する。あくまでカルツ視点は物語ではないのよ。唯そこに香る違和感と謎が、ファンタジー。私達悪魔の領分でしょう?」

 「なるほど。で、そうなるとどうせ領主の名前も嘘なんでしょう?お嬢様のことですから」

 「まぁ、よく解ったわね。配役名にって適当に付けたのよ。全部彼とか男だと区別付けにくいじゃない」

 「それでその由来とは?」

 「トリットの蘇生を行っている内にね、領主も毒されてしまったの。そのパーツが両目よ。だから彼は自分に作り物の目を与えた。勿論彼は天才だから視力はちゃんとある奴よ。その目の黒目部分に琥珀を用いた。それ以上でも以下でもないわ」

 「なるほど、嘘ですか。解ります。どうせあれでしょう?人造人間っぽい話だから最後にシュタインって付く言葉適当に探して響きが気に入ったとかそんなことでしょう?」

 「細かいことは良いじゃない!はい!この話はお終い!本棚に置いてきなさい!そうすればいつか向こうの世界でこの写本が発見されるんだから!」

 「やれやれ、人使いの荒い方だ」

 「あんた何時から人間になったの?」

 「失礼、悪魔使いの荒い方だ」


 紅茶はすっかり冷えていた。しかしケーキは丁度いい温度になっていた。味は悪くないので文句を言うに言えないまま、私はずずずと茶を啜る。今日も私の領地は退屈だった。


 「まぁ、良かったじゃない。全員地獄で再会出来て」


 めでたしめでたしと、悪魔たる私はほくそ笑む。

長編ばっかり書いているんで、一回短編小説に挑戦してみたかったので執筆。

怪奇小説が大好きなので、怪奇小説を書けるようになりたいなと、その練習。

視点が第三者だと意外と短くまとまるもんだ。他の小説は一人称で感情ばっかり書いているから長くなるんだなと反省。


テーマは逆フランケンシュタイン。大勢の人間の死体から一人の人間を作るんじゃなくて、一人の人間を犠牲にして多くの人間を生かす話。


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[良い点] 話のテンポが早く読みやすかったです。ラストには意表をつかれました。 短編集にもなりうるお話だと思います。また別の物語が読みたいと思いました。 [気になる点] ラストが若干蛇足ぎみかなと思い…
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