第6話 精霊の才
エルフと邂逅編はこの回にて終了です。
次で話が前に進むと・・・・・いいなぁ。
「さて、君もエクシードを使って疲れただろうから、今日はもう休もう。」
「不寝番を立てなくてもいいんですか?俺はそんなに疲れていないんで。」
それは事実である。実際、活力が有り余っているくらいで、徹夜するぐらいなんでもないのだが・・・。
そう言った時には、リアは目を閉じて虚空に向かって手をのばしてた。
「あ、あの。リア?」
「シルフ。・・・・・・そうか、ふっ、そんなにあやまらなくていい。私は大丈夫だから・・・・・・今度こそ本当に頼むぞ。・・・・・・うん、よろしく」
シルフ。確か、風のせいれい?
本で読んだ程度の知識しかないけど、この世界には本当にいるのか。
リアがシルフと会話している間、ぼぉーっと見ていた俺は、リアが会話を止める寸前。リアの手のひらに集まる、緑色に薄ぼんやりと輝く蝶を見た。
「またせたな、スグル。・・・スグル?」
「えっ、あ。シ、シルフって緑色に光って綺麗なんだな!!」
・・・・・・本当は、リアの手先に集まっているシルフじゃなくて、シルフの燐光に照らされたリアのことが、綺麗だと思ったのは内緒だ。
「?そうか、シルフが見えたんだな?」
「・・・もしかして、その言い方だと、普通は見えないんですか?」
「ああ。スグルの世界にはシルフはいなかったのだろう?」
「ええ、まあ」
「スグルは精霊術師の才能があるのかもな」
「それは素直に喜んで良いんですかね?」
「見えるかどうかは、精霊との親和性。つまり、相性によるからな。・・・言いかえれば才能だ。喜んでも良いんじゃないか?」
「わーい」
ふざけた俺を呆れ気味の目で見ると、リアは言った。
「精霊については、おいおい置いておくとして。シルフが気になることを言っていたんだ。」
「気になることですか?」
「ああ。私がグリズリーに襲われた時、シルフに辺りの警戒を頼んでいたんだ。私は・・・・その時疲れていてな。かなり深く寝ていたようなんだ。それでグリズリーの接近に気づかずに、攻撃されたんだ。身を守る際に、得物の弓矢を壊されてしまってな。」
「それであの時怪我をしていたんですね。」
「肩をやられてな、エリクサーを飲んで治したが。」
エリクサー!?
なんかすごそうな霊薬の名前が・・・。
「魔法を使おうにも集中できなかったしな・・・。いや、スグルには本当に助けられたよ」
「・・・もうそのことはいいですから。話が脱線してますって!」
「良くはないだろう」
「あーもう。頑固だなぁ」
「なっ、がっ、頑固だと!?君なぁ・・・」
「はいはい、後で聞きますって。推測するに警戒を引き受けたシルフが教えてくれなかった。そして、襲われた時にも助けてくれなかった。・・・ですよね?
でも、その理由はなんですか?」
しぶしぶといった様子で、引き下がったリアが後を引き受けた。
「上位精霊に助けるなと言われたんだそうだ」
「上位精霊?そんなのもいるんですか?」
「・・・精霊王もいるぞ、しかも私は会ったことがある!!」
「おお!すごい、流石リア!よっ、日本一!」
得意げな様子を見ると機嫌は直ったようだ。
おかしそうな俺の様子に、リアは空咳をすると続けた。
「ごほん、理由は教えてくれなかったが、彼らと私は友人だ。主従関係にあるわけでもない。
よほどのことなんだろう、シルフは気まぐれだが、約束を破るほど不義理ではない。
彼らはしきりに謝っていたよ。だから私は彼らを信頼して、今日の不審番は任せようと思うんだが、どうだろう」
・・・・これまでの様子から、リアはデビルグリズリーから助けた1件に、相当の義理を感じているようだ。こちらからしてみれば、かなりの打算も働いていたのだが、こうも手放しに感謝されると、むずがゆくてしょうがない。
俺はこちらの世界に不得手なんだから、勝手に決めてくれても良いのに、と思ったが口に出さず。
なるべく素っ気無く聞こえるように言った。
「リアがそう言うのなら異存なし」
「そうか。・・・・・よし、明日はアクアレイアの街に行こう。行く当てのない君を見捨てるつもりはないからな。素足では格好がつかないだろう?」
言った・・・・つもりだったのだが。
茶目っ気たっぷりに言うリアと俺を包んで、夜は更けていく。
「・・・ところで“にほんいち”とはどういう意味なんだ?おい、寝たふりをするなよ。おーい」
寝たふりをする理由もないのだが、敢えてあげるとすれば・・・。
・・・・・グゥ。
・・・夜は更けていく。
修正、挿入