第5話 仲良くなれたなら・・・・。
何から話せばいいのか。
それとも、何も話さずに、記憶喪失だとでも言うのか・・・。
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「・・・俄かには信じがたいな。」
結局すべてをリアに話すことにした。
ありのままを、全て。
あの熊が、エルフが、俺の世界に存在しないこと。
俺の推測。この世界が、俺の側から見て異世界であること。
そして身体の変化。
そう、学生の身分にあるまじき、あの力はいったいなんのか。
彼女に、説明を求めているわけではなかったのだが、この世界に来て弱っていたのか、それとも元からそうだったのか。
ぽつりぽつりと全てを話してしまった。
リアの反応を見ると、失敗だった、みたいだ・・・はぁ。
「・・・・だが、いまの私にそんな嘘をつくメリットが見出せないな」
リアの自嘲気味なニュアンスには気が付かず、スグルはその言葉に飛びついた。
「えっ、信じてくれるんですか!?」
「ああ、そうだと言っているだろう。私が力になれることならば、無理のない範囲で力になろう」
「あ、ありがとう」
「なに、礼を言うのはこちらの方だ。命を助けてもらったのだから、それくらいはしておかないと、私の気が済まないというものさ。それとひとつ、きみがデビルグリズリーを倒したときのことだが・・・」
「あっ、あの熊そんな名前だったのか」
「ゴホン」
「すみません」
「あの時、きみは“気”を使っていたように見えた」
「えくしーど?」
「その様子だと、“気”が“魔力”の相克属性という事も知らなさそうだな」
「はい」
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まとめるとこんなかんじだ。
魔力は、六角二柱。
つまり、炎、氷、水、雷、風、土の六角属性。
光、闇の二柱。
光と闇が、相克するのに対して、六角属性の間に明確な優劣は存在しないらしい。
ひと一人が、扱える属性には限りがあって、その人の魔力的相性によるらしい。
その他にも、明確に分類されない属性もあるそうだが、今は必要ないそうなので省かせてもらう。
つまり、得意属性に則して魔法が使えるということだ。
予想していたことだが、魔法の存在を聞かされると、地球じゃないんだなぁとしみじみ思う。日本でそんなことを言った日には、黄色い救急車を呼ばれることになるだろう。
さて、そのことをふまえて、“気”についてだが・・・。
リアも、よくは知らないようだ。
なんでも、その存在が、明らかにされたのは約30年前のことだそうで。
それまでは、知る人ぞ知る技だったらしい。
その力を明かしたのは東方の島国、シャングリラ。なんでも、黒髪で、独特の衣装を着ている、刀を扱う、他にも特徴的な風習があるらしい。
どこぞで聞いたような人たちだが、彼らが“気”を修めたのは、200年以上も前のことらしい。
不確定なことばかりだが、歴史が浅いのだから、伝聞形式になってしまうのは致し方あるまい。
現在分かっていることだが、気=体力とも精神力とも言われていて、“気”の多用は疲れるため、時には使いすぎて衰弱死することもあるという。
そして、魔力属性の二柱である“闇”と“光”のように、“気”と“魔力”は相克するらしい。
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「なるほど」
「あの時のスグル殿の身体から、魔力は感じられなかった。つまり、あの時は気を使っていたと考えられる。
残念ながら、私は気についての知識は持ち合わせていない。これ以上教えられることはない。・・・・・すまない。」
「い、いえ、そんな、あやまらないでください、十分です。・・・・・ええと、なんかリアさん少し堅いですよね。」
「そうだろうか?」
「そうですよ。俺のことをスグル殿とか呼ぶし、話し方もなんか他人行儀だし。俺の方が年下なんだから、もっと砕けてくれた方が、俺としてもありがたいですよ。」
「ふむ、そうは言うが君の方だって私のことを“さん”付けするだろう。」
「いや、だって年上ですし」
「・・・・・エルフは人間に比べれば長命だが、私は19だ。君とそうはかわらないだろう」
「俺は確かに17ですけど、でも・・・・」
「でもじゃない。君のことをスグルと呼ぼう。代わりに、私のことも呼び捨てにしたまえ。」
「ええっ!!?」
「スグル」
「い、いや、でも・・・。」
「スグル」
「えーと」
「・・・・・・スグル」
「うっ。リ、リアさん?」
「・・・・」
「リ、リア」
「ふふっ、よろしい」
参った。2度目です神様。
彼女の事を呼び捨てにしたときの顔は・・・・とても素敵で、こんな笑顔を見せてくれるなら、
なんでもしましょうという気にさせるのに十分だった。
『すずかぜ らいた』です。お初の方は、はじめまして。
でも、これを読み終わってくれたってことは、違うのかな?
もしそんな人がいたら、最初から読んでくれたらうれしいです。
さてさて、ご意見ご感想をいただけたら幸いです。
ではごゆるりと