第4話 嫌われたくない。
食事に招待しようとはそのままの意味だったようだ。
今、俺とリアは焚き火を囲んでいる。
リアはかばんから取り出した肉をナイフで薄くカットし、生ハムのようなそれを串であぶった。
さらに、次々に取り出される食べ物たち。りんごのような果物に、ダチョウのような大きさのしましま卵。白い粉のまぶしたパン。そして、あの白いせんべいのようなものは・・・。
「・・・レンバス」
「ほぅ、これを知っているのか。君にはエルフの親しい友人でもいるのかな?」
「いえ、レンバスのことは知識として知っているだけで、実物を見るのも初めてですし、エルフの知り合いはいませんよ」
「そうか、食べたことがないのなら、今からこれを食べる君は幸運だな」
リアはいたずらっ子のような笑みを口元に浮かべた。
火に照らされたリアの横顔は、手におえないほど美しく。また、彼女の手から渡される食べ物は、見たこともない物から、見たことのあるものまで、甘美でいながら刺激的で、驚きにつつまれていた。
穏やかな時間の流れ、この時間が一生続けば良いのにと思わずにいられない。
俺は食事の後片づけをしながら、これまでのことを話そうか迷っていた。これまでのこととは自分の身の上の事だ。自分にとってここが異世界かもしれないという事。
話してみれば分かる事だが、リアは誠実だ。恩を売ってある間に助けを求めるのがベストだろう。
しかし、俺の口は重かった。
端的に言うと・・・・・リアに嫌われたくなかったのだ。
自分の身に降りかかったこの出来事を、自分でも信じられないのに、彼女に信じてもらえるのか?
いいかげんな事を言う奴だと思われたくなかった。
別に、話さないでいてもよかったのだろうと思う。でも、聞いてもらいたい、と思っている自分が何処かにいて・・・・。
参った。巷で言う、これが一目ぼれってやつですか?
だいぶ修正、文挿入。短い事には変わりありませんが。