第22話 修行 Ⅱ
修行 Ⅱ(つー)と読んで下さい。
>表現を多少変更。繰り返し使っていた部分があったので・・・。
「ほらほらほら!避けないと痛いですわよ」
「死ぬ、死んでまうから、許してぇ~!!」
自分でも段々訳がわからなくなりながら避ける、岩を。
正直なところこれは虐待だと思う。修業なんかじゃなくて、虐待。
事の発端は朝である。
~~パート・朝~~
(―――よし、今日も朝からがんばりますか!!)
ティナやサラを起こさないように起き出し、街道脇の森に入っていく。
「おや、スグル君朝が早いね」
声をかけてきたのはキャラバン護衛を務める仲間の一人、ジンさんだった。
「おはようございます。ジンさん。そうゆうジンさんこそ早いですけど・・・」
「ああ、私の方は朝の修行でね。習慣なんだよ」
「俺も同じですよ」
「ふむ、そうか。では、軽く手合わせでもしないかい?君はエクシードも扱えるのだろう?」
「いや・・・扱えるってほどじゃないんで、相手にならないかもしれないですけど、それでも良いなら」
「よし、決まりだ。木剣を取ってくるから、身体を温めておきなさい」
そう言うとジンさんはキャラバンのある方まで引き返していった。
ジンさんに言った通り、俺はエクシードを未だに扱えない。魔力とは違う感覚があることを最近おぼろげながら掴み出してはきたものの、それは自由に扱えるほどじゃあない。
自分なりに扱えるようになろうとティナに教えてもらうことも考えた。しかし、ティナはなにが気にいらないのか、明かに怒っている。本人は否定してるけど、態度からそれは察せられる。サラに仲立ちを頼もうとしても、“なんでティナさんが怒っているのか分らない内は、僕は協力する気はないよ”だそうだ。“薮蛇になりかねないしね”とも言っていた。全くなんのことか分らないけど、こちとら日本にいた時に女の子との付き合いはほぼゼロと言える。そんな自分にどうしろと、という心境である。
ともかく今は嵐が過ぎ去るのを待つしかないと思っているスグルであった。
「持ってきたよ」
ジンさんが帰ってきて、木剣を受け取った。
軽く振り回してみても、ほとんど重さを感じない。やはりこれもエクシードが働いている所為なのか?
「いい振りだ。それじゃあ構えて・・・・始め」
開始の合図を出してもジンさんは動かなかった。左足を前に出し、腰を落として中段の構え。対して俺は右足を出して、剣道の構えを執った。
とゆーか、俺が練習してたのは我流、言うなれば“浅木流喧嘩殺法”なのだ。
中国の少林寺みたいに棒やら斧やら青龍刀やらを振り回せるわけがない。つまり、学校の授業で習った事を出しきるしかないとゆう訳である。
(―――やばい、木刀でも人は殺せるって聞いた事があるっ・・・!!)
実戦では全く物怖じしないのに変なところで怖気づくスグル。
「・・・・・君のその構えは刀専門かッっと、せい!・・・不意打ちかい?」
(―――ちっ、しゃべってる時は反応が遅れるって、先生が言ってたけど嘘じゃないか!)
不意を打ったつもりでも、相手がそれに備えていたら受け流されるのは道理である。しゃべってる時に反応が遅れるというのは、呼吸の合間、主に吸っている時に反応が遅れるからである。吐く動作をする時は気合(声を上げて相手を威嚇したり、声を出し自分を鼓舞すること)を出すのと同じ原理なのだ。つまり動作を行うのに合わせて息を吐くと余計な力が抜けてスムーズに動く事が出来る。
しかし、吐いた後にはまた吸わなければならない。吐いたという事は攻撃したとゆう事。それは相手を射程圏内に捕らえていると同時に、相手も自分に当てる事が出来るということである。そして、攻撃をした後は隙が出来るというのは息を再び吸いこみ、次の動作に移るまでのタイムラグの事を示すのである。攻撃をする時に息を止めればいいじゃないか、と言う人もいるかもしれない。確かに息を止めていれば動作の合間の隙はなくなるかもしれない。しかしながら、体を動かすことによってただでさえ呼吸は乱れるのに、息を止めて動作を行うのは自殺行為に近い。そのため呼吸を整える調息《ちょうそく》はあらゆる面で重要である。
さて、これらの理屈をスグルの先生も教えてくれていたのだが、チャンバラをして遊んでいたスグルはうろ覚えの知識で行動したということである。
「今度はこちらから行かせてもらおうか」
その言葉を皮切りにジンの足が素早く動く。
スグルの斜め横に移動すると上段を放ってきた。
それを受けようとするスグル。
しかし、ジンの手元はぶつかる直前で返され、今度は胴を狙う動きに変化する。
スグルは突然の変化に驚き、その場から飛びのこうとした。
そこで、胴を切りそこなったと見えるジンの木剣は、先ほどの中段の位置でぴたりと止まると、スグルの鳩尾を狙う突きへと変化する。
このままでは殺られると思ったスグル。飛び退りながら、ジンの木剣の剣先に合わせるように横から自分の木剣をぶつける。
弾かれたジンの剣、今度は当てられないように小刻みに後方に退避するスグル。習った事を出し切るとか思いながら、すり足の一つもしないままである。
(―――やばい、このおっさん本気だよ~!?)
流れる様に振るわれる変幻自在の剣に、スグルは内心かなりびびっていた。
「・・・・もしかして、剣を振るうのはあんまり得意じゃない?」
「・・・・実はそうなんです」
「そうか、動きは悪くないんだけど、その構え方だと受けにいくよりも避けた方がいいよ」
「・・・避けるですか?」
「知り合いにシャングリラの奴がいるんだけど、彼が言うには、刀は斬る道具だ。極薄の刃は相手を断つことに重きを置いている。そのため、受けにいったらすぐに折れる。だから、受けずに済むように歩法もそれ独特のものになった、と言っていたよ。すり足と言ったかな?知っているかい?」
「・・・・忘れてました・・・・・もう一本、お願いできますか」
「お安い御用だよ」
そうして、薄闇が照らし切られるまで剣の練習は続けられた。
お気づきの方もいられるかもしれないが、この訓練をティナが見ていて・・・・、とまぁ続くわけである。
《すずかぜらいた》です。
本文中の補足を一つ。木剣を振るう時に長ったらしい理屈をこねていますが、半分くらい嘘です。いえ、嘘ではないのですが、あくまで理屈は理屈。実践して失敗しても《すずかぜ》は責任を取れません。ただあれは、《すずかぜ》が剣道やら少林寺やらその他色々にに手を出して、学び取った考えです。なるべく分りやすいように書いたつもりですが、戦闘シーンは苦手で、屁理屈こねてごまかした感じです。
これも実験の一つ・・・・・・感想がいただけないので、効果があるのか分らないのが悲しいところですが・・・。
さて、なるべく更新ペースを落とさないように両立を目指したいと思います。文武両道、これサイコーがモットーの《すずかぜ》です。長々と失礼しました。それでは、ごゆるりと