表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/50

第17話   アルアル大辞典

タイトル・・・・・・・大丈夫だよね?




宿屋の食堂に笑い声が響いた。

「あはは~リアさんに逃げられたあっさーをめ、女々しいって・・・ぷ、ふあははははっ」

大爆笑するイリス。トレードマークのポニーテールが、ご機嫌そうに揺れる。

事実だけにスグルは笑えない・・・というか、またこの3人に囲まれてオモチャにされなくちゃいけないのか!?

スグルの胸中をよそに話は逸れていく。

「い、イリス。居たなら声をかけてください」

「だって~クーちゃんのあの健気(けなげ)な説得。ぷぷぷっ」

・・・クーちゃんとはクリスティーナの頭から取ったのだろうか?


「け、健気って・・・・・私はっ、目の前にだらしない男が居るのが気にいらなくて・・・。そう、しつけのなっていない犬を調教するようなものですわ!!」


―――胸を張って調教って・・・・・ティナの言葉にちょっとでも感動した俺がむなしい!!



そんなティナの言葉に猜疑心さいぎしんにまみれた視線を送るイリス。

「ふ~ん。・・・・・ティナの逢いたかった人って、あっ・もごもご」

なにやら揉み合いになるティナとイリス。

先ほどから口を開かず、手元の本に目を落とすアルに水を向けてみる。

「なぁ、実際のところいつから見てたんだ?」

「え?・・・ああ、そうですね。スグルさんが頭を殴られた辺りからです。」

にこやかに答えてくれたアル。


―――ほとんど最初からじゃないか・・・。

自分が、かなり情けない事を告白していたのを見られて暗澹あんたんたる思いだ。


「イリス、ティナさんをからかうのもそこまでにしておきなさい。・・・・ティナさん、僕達の契約はこれで果たされたと思いますが、どうでしょう?」

「・・・ええ、ここまで連れて来たくれた事に感謝してますわ」

「あれ・・・?アル達とティナはパーティを組んでいた冒険者じゃないのか?」



―――通常パーティとは6人で構成される。実力のあるパーティほどその傾向は強い。それはなぜか?答えは簡単。その人数がバランスが良いからだ。

 前衛・後衛・回復役などの割合は異なるものの、道具の消費や宝の山分け、そして狭い通路での戦闘に置ける効率性などから言っても6人というパーティは大変バランスが良いのだ。多すぎては宝の山分け時に揉めたり、狭いダンジョンで力を発揮できなかったりする。逆にそれより少ないと宝を持てなくなったり、強力なモンスターに遭遇した時に全滅させられたりとそれ以外にも何個かの理由が挙げられる。

 さて、スグルがなぜこの3人がパーティだと思ったのか?それは、3人でいる事のメリットとイリスの腰に装備していた武器にある。まずは前者から説明していくと、3人のパーティは他の3人のパーティと組みやすい、とそれだけである。ギルドの掲示板でも3人パーティの募集をしたりしてるし、相性があるためさまざまな人物と組んでみて生き残る確率を上げようとするパーティも多い。後者で言えばイリスの持っている武器が銃だという点がスグルにそう判断させたのだろう。

 当初、その容姿から、ティナが魔法使い系統と判断していたのだが、先ほどの騒動でバリバリの前衛と分かり、なおかつアルは西洋剣を装備している。そしてスグルがこっちの世界で見かけた事のない銃。現代人であるスグルからしてみれば銃ほど恐ろしい武器はない。どれほどの機能を誇るのかは知らないが、それ一つで後衛の役割を果たすのに十分だと思われたのである。

 それらの要素が絡んで3人は固定パーティーだろうとスグルに予測させたのだ。



スグルの素朴な疑問に、言葉を選ぶように黙りこんだアルに代わってティナが答えた。


「・・・私とそこの兄妹はアクアレイアまで来るのに協力する契約だったのですわ。」

「ふーん、そうだったのか。イリスが銃を持ってるしパーティとしてはバランスが良いと思ったんだけど違ったのか」


スグルの言葉に目を見開いて驚きを示すイリス。

「・・・・・すごいです。あっさーこの子の事知ってるんですか?これは“エアーショックガン”っていうアーティファクトなんですよ~。これをくれた先生も銃って呼んでました!

空気をタマに変えられる優れものなんですよ~」


 アーティファクトか・・・・・空気を弾に変えられるなら実質無限に弾が使えるということだ。よく考えてみたら銃弾にはお金がかかり過ぎるし、扱いが難しい上に技術力の問題もある。魔法がある所為で銃は開発されなかったか広まりにくいと思っていたのだが。


 しかしながら、“エアーショックガン”とやらがここにあるということは、銃の構想自体はあったのかもしれない。しかし、リアが教えてくれたように今は失われた技術なのだ。

(―――ん?そうだとしてもイリスの先生はどこで銃なんて言葉を知ったんだろう?いや、俺が知らないだけで実際にはどこかに今でも造ってるのかも。)



異世界ならではの事情に納得したスグルにティナが口を開いた。

「・・・それで、どうするんですの?」

「どうするっていうのは?」

「リアさんを追いかけるですの?」

「・・・・・うん、そのつもり」

「そう・・・ですの。・・・アル、あなたメリッサさんの向かいそうな場所をどこか知らないかしら?」

「推測できない事はないのですが、その前にひとつ聞きたいことが・・・。」

「俺に答えられることならなんでも聞いてくれ」

「・・・それでは遠慮なく。あのエルフの方のフルネームを教えてもらえませんか?」

「・・・そんなことでいいのか?」

「はい、大事なことです」

神妙に頷くアルに疑問を覚えながらもリアのフルネームを教えた。


わずかに目を見開き、礼を告げるとアルは言った。

「間違いないですね。リアさんはエルフの姫君だ」


「ふんふん、なるほどーリアはお姫様だったのか~。

・・・・・・ええっ!!?おっ、お姫様なの!?た、確かに亡くなったお父さんが長老をしてたって言っていた気がするけど・・・・・・いやいやーおかしいでしょ、それはおかしいって・・・・・・ってリアが姫ぇ!?やばいんじゃないのかこれ・・・。」

「なにがやばいのか気になりますが、とりあいずあなたの驚き方の方がおかしいですわ」

「ほえ~お兄ちゃんそれ本当なの?」

テンパったスグル以外は案外冷静だった。


イリスの疑問に応えてアルはエルフについて語り出した。




 エルフという種族は大別して二種族あります。ハイエルフとダークエルフ、この二種族は昔から仲が悪く、容姿が皆一様に美しいという点を除けば交流もあまりないそうです。さて、そのハイエルフは三つの森に住んでいて、それぞれ“セルト・ベンプ・ミンミア”の森があります。三つの森を束ねる立場にあるのがセルトの森、つまり・・・・・。


「なるほどね。リアのセカンドネームの“セルト”は森の名前なのか。・・・でも、それだけじゃあお姫様だって分らないんじゃないのか?」

「その点はラストネームの“シュトレー”で説明できるから途中で口を挟まないように...。」

「へーい」

アルは解説好きなようだ。



 ごほん、気を取りなおして。・・・・リンデノーア・セルト・フォン・シュトレー。前から名前・自分の出身・自分の家名が来てますね。普通のエルフだったらここまで終わりなんです。しかし、リアさんは違った。最後につく、シュトレーは現在のエルフでも肌の白い方達、ダークエルフ以外のエルフをハイエルフと呼ぶ理由にもなっているんです。

 約千年前の人物、英雄王ガルシア・テオドーラのもとに(かしず)いたとされるエルフ、リノア・シュトレーの血を引いた人物は現在のハイエルフでいう所の王位継承者です。つまりこれにリアさんが当たります。

 英雄王の伝説はさまざまですが、エルフを纏め上げ、魔王と手を組んだエルフ、今で言う所のダークエルフと戦った話はとても有名です。これを契機に肌の色でハイエルフとダークエルフの呼び名がつきましたから・・・。

 そして現在の覇権を手にしている国、テオドーラ帝国を建国したのも英雄王その人です。その縁からセルトの森とテオドーラ帝国は交流があったと聞いています。そう考えると、メリッサさんは帝国の第3皇女メリッサ・テオドーラその人だと分ります。そして・・・。


「ちょ、ちょっと待って下さい。・・・・・メリッサさんが第3皇女ですって?」

―――ナイス質問だティナ。正直、話が大きくなり過ぎてついて行けなくなって来ていた所だ。

何が“そう考えると”なんだ?さっぱりだ。


アルは3人を見渡し、途中から“にこにこ”と笑顔しか浮かべなくなった(話について行けなくなったと思われる)イリスを見やるとため息をついた。


「スグルさん。エルフの成人はいくつか知っていますか?」

「・・・・忘れた。たぶん」

記憶喪失の設定は活きてるのだよ、えっへん。 


再びため息をつくとティナに視線を送る。

「たしか、30歳だったと思いますわ」

「その通り。僕ら人間の一般的な意味での成人というわけじゃなくて、発言と見聞を広めるのための旅が認められる年齢が30という年齢なのだとか。念のため聞いときますけど、リアさんの年齢はご存知ですか?」


―――それは知ってる。


「・・・・19」

「やはりそうでしたか。つまり、リアさんは森の外に、事件があった去年まで出た事がなかったということです」

「ああ!!そういうことでしたの。さすがアル、博識ですのね」

「えっへん。お兄ちゃんはすごいんです」

これまで旅をしてきたであろう3人の連携プレイに、慌ててスグルは待ったをかける。

「まてまて、イリスは置いておくとして、二人で納得しないでくれよ。俺には何がなんだかさっぱりだ」

むくれるイリスをよそに、ティナとアルは顔を見合わせるとティナがこちらに向いて解説してくれた。


記憶喪失(・・・・)のあなたでも分るように説明してあげますわ」

・・・・なにやら棘を感じるが大人しく頷く。

それで満足したのか幾分声を和らげて説明してくれるティナ。


「リアさんが森を出てから1年も経ってません。ただでさえ秘密主義のエルフですから、その姫君であるリアさんも外界との交流はほとんどなかったと考えられます。ならどうやってメリッサさんと知り合ったのか?

さっきアルが言ったように、帝国とセルトの森に交流があるとしたら、魔法が得意なハイエルフのもとに現在宮廷魔術師でもあり第3皇女でもあったメリッサさんが訪れた可能性は十分ありますわ」


な、なるほど・・・・さっきの会話の中に全部答えがあったんだな。にしても宮廷魔術師か・・・帝国に住んでいるなら常識なのか?

いや、それにしたってなんでこんなにエルフのことを知ってるんだコイツ。


スグルの疑問の視線に気づいたのかイリスが言った。

「お兄ちゃんは歴史がほんとに好きだからね~、こうやって冒険者やってるのもダンジョンから本の発掘するのが趣味だからなんだよ~」


「余計な事は言わなくてよいよ、イリス。・・・スグルさん、こんなところでお役に立てたでしょうか?」


「役に立てただなんてとんでもない。すごい参考になったよ。・・・なにか俺にできる事があったら言ってくれよ。金は貸せないが、体力だけは有り余ってるからさ」

「お気持ちだけ受け取っておきます」

むっ、苦笑で返されてしまった。


「あーみんなはこれからどうするんだ?俺は明日にでも帝国の首都グランシールにそのまま向かうつもりだけど・・・?」

「僕らは学術の都ジールで調べものです」

「で~す」

学術の都というとアクアレイアのさらに南にあるとこだっけ?帝国の首都とは逆方向だな。


「それでティナは?」

「わ、わたくしは・・・。」

軽い気持ちで聞いたらすごく動揺された。

(・・・・・・?アル達にちらちら視線を送ってるけど、アルはにこやかに答えを待ってるようだし。イリスは口を押さえて・・・・・・笑いそうになってるな?)


やがてなにかを決心した様に目をぎゅっとつぶり、再びティナ口を開こうとしたときにそれは起こった。


“ドッガーン”と遠くでなにかが砕ける音と悲鳴。

一同が口を閉じ窓に駆け寄ると、異様としか言えない光景が外には広がっていた。

・・・・・白いデスマスクを被った人で外は溢れ反っていたのだ。



「なにかのお祭りかな~お兄ちゃん」

(―――いや、絶対違うから)

思わず心の中で突っ込んだスグルであった。




ニーハオ、《すずかぜ らいた》です。

この挨拶には特に意味がありません、はい。


今話はやばい、回収してない伏線を回収したいのに逆に話が広がった!?

どうしようこれ・・・。

手直しを加える度に文章量が増えた。

ドラ○エでスライムがスライムを呼んでキングスライムになるのを見る気分です。

この例えが分らない人はすみません・・・・すずかぜは割とゲーム好きなもので。


さて、頭を切り替えて少し次回予告

と言っても一言だけ

・・・ほっとかれたあの子が出てきます。



・・・それだけ?


それだけです(断言)


相も変わらずご意見ご感想をお待ちしております。

それでは、ごゆるりと

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ