第10話 クンクン!?
下着を買わねば!!
俺は使命感に駆られ下着を買いに走った。
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「時にスグル、君は風呂に入っているのかな?」
宿の食堂での一幕である。
「?備え付けの風呂があったから普通に入ったけど」
流石、水の都アクアレイア。
文化的には中世と思われるこの世界。意外なことだが、妙なところで文明が発達している。水洗式のトイレにトイレットペーパー(これはありがたかった)、情報の共有ができる鏡(ギルドにこれがある)など。
魔法がある分、妙なところで手応えがいいのだ。
さて、話はもどる。
「ふむ、そうか・・・たいへん言いにくい事なのだが、・・・・君、臭うぞ」
「!?マジっすか」
「どういった意味で使っているのかいまいち分からないが、マジっすかだ。・・・私が配慮してやればよかったのだが、学生ふく・・・・。あ、あれ?スグル?」
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つまりはこういうことだ。
パンツが臭い=もてない。
真理であり、小学生でも分かる方程式である。
爆走中である。
般若のような顔で、必死の様相で、下着の売っている店を探すものの見つからない。
鼻息の荒いスグルを見た民衆が官警を呼ぼうか、とささやき出したのにもかまわず、
探す、捜す、サガスッ!!
思い込みの激しいスグルには神も慄いたそうな・・・・・・。
さて、暴走したスグルは人気のない路地まで迷いこんだ。
そこで、
「ごらぁ、わび入れんかい!ガキが!!ぶつかっといてそのまま無視しようとはいい度胸だな、この俺様の名を知ってのロウゼキかぁ、ああんっ!!」
「しっしっしっ・・・」
「げへ、へっへっへっへっ、」
明らかに頭の足りなさそうな、3人組に少年が絡まれている!!
スッ、と頭の冷えたスグルは正義感に燃えて、
「・・・ヤツアタリの対象みいつけた・・・」たわけではなく、
・・・ともかくガラの悪い3人組から少年を救うべく、そちらの方に向かった。
「おーい、兄さん方」
「「「あぁん!?」」」
ハモッてるし。
「・・・大人が、子供によってたかって絡むのは感心しないよぉ」
「うっせーだまってろ」
と殴りかかってきた、(面倒なので、チンピラA、B、Cと名づける)
チンピラAを見て、
正とーぼー衛、かもん!!
と思ったスグルは、手のかすむような勢いで、殴りかかってきたチンピラAの腕をひねり上げ。
チンピラAが悲鳴を上げる間も無く、Aを突き飛ばす。
続いてチンピラBが驚いている間に、大きく足を踏み込み、Bのあごに向かってやさしくこぶしを叩き込み、気絶させる。
なにやら声をあげてナイフを取り出すチンピラC。
ナイフを持つその手に向かって蹴りを放ち、ナイフを吹き飛ばす。
痛みにうめくCの鳩尾にこぶしを、これまたやさしく叩き込んだ。
戦闘と呼んでいいのか分からない争いにかかった時間は、わずか十数秒。
唖然として座りこむチンピラAに向かってスグルは凄んだ。
「おい、このデブ野郎。今度てめーらが同じ事をしてんのを見たら、おまえの大事な分身をちょん切るからな。分かったか!?」
面白いほど青くなって、何度も頷くチンピラAに向かって言った。
「よし、じゃあ失せろ、・・・・おっとお仲間は連れて帰れよな。」
一人で逃げ帰ろうとしたチンピラAに付け加えてやる事も忘れず、2人を引きずって帰るチンピラAの背を見送ると・・・。
やっちまった。
自己嫌悪と共に完全に冷えた頭で思った。
きちんと手加減はしたが、それでも力に酔っているようで、気分が悪い事この上ない。
本気を出せば、岩すら割れる力を持っているスグルは、敢えて力をセーブしていた。
例え、怪我をしたとしても自業自得として、罪悪感を持つ気はさらさらなかったが、己の拳は人を殺せることを忘れそうになった。
ただでさえ、エクシードの使い方はよく掴めておらず、力にただ振り回されるだけなのだ。
そんなのあのチンピラと同じじゃないかとさえ思う。
力を手に入れても面倒だな~と思うと同時に、誰かに師事したしたいと思うスグルであった。
反省会を終えると、絡まれていた少年を注視した。
そういえばこの少年、絡まれている間さえ声ひとつ上げていなかった気がする。
「・・・・・」
「・・・・!」
いや・・・こいつ俺を観察している!?
「・・・つよいね、兄さん。でも余計なお世話だったんじゃないかな?」
・・・こ、このがき。まちがいない、こいつ俺のことを観察していやがった!
艶のよさそうな赤毛を後ろで括り、ハンティングキャップを目深にかぶったまま、ぶかぶかなジャケットに手を突っ込んだそいつは言った。
「・・・・下着の売っている店なら、この先を真っ直ぐ行って、大通りに出たところを右に曲がって三百メル進んだところの左手にあるよ。でも、僕が思うに下着はともかく、その服も新しいのを買ったほうがいいと思うよ。・・・・・・臭うから」
「・・・・」
スグルは驚きに声も出せずにいた。
俺、誰かに・・・・・。人に店の場所を尋ねたか?
声に出していたならまだ分かる。
しかし、正気を失っていたスグルは誰かに道を尋ねるという行為していない。
「・・・そんなに警戒しなくてもいいよ。何か知りたいことがあったら、“古き友”っていう宿屋で、情報屋のジャックに会いたいといえば伝わるから。・・・一応助けられたから、安くしておくよ」
「・・・おまえ、何者だ。」
「にぶいなぁ、情報屋だって言ってるじゃない?・・・ま、そういうことだから。気が向いたらおいでよスグル兄さん」
「!?・・・ま、待て!!」
走り去っていく少年を、気味の悪さも手伝って追うことができなかった。
「・・・・・・・・そんなに臭うかなぁ?俺。・・・・・“クンクン”、くっさ!!」
身だしなみには気をつけようと思った今日この頃だった。
「くっさいわぁ、コレ。“クンクン”とかいらないし、“クン”の時点で十分臭いの分かるわ、ボケ!」
お得意の一人乗りつっこみで、虚しさを増すスグルであった。
あー《すずかぜ らいた》です。
相変わらずテンポ悪いッス。
すみませんっす。
といいますか、1週間足らずでここまで書き上げたすずかぜを誰も誉めてくれないっす。
そうッスか。つまらないッスか。
なーんて、落ちこんでいるすずかぜを励ましてやるぜ!!という男気(女気も大歓迎)のある方は、ぱしぱしご意見ご感想を下さい。
またお気に入り登録して下さった皆様に感謝の意をこめて
この場を辞させていただきます。
では、ごゆるりと