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翔達は気が付くと見知らぬ草原の上に敷かれた石畳の街道の上に降り立っていた。
「ぐえっ!」
アキトだけ寝惚けて倒れて頭を打ってだらしない声を上げる。黒鴉はやれやれと首を振る。
「はぁ、先が思いやられるわね」
「なんだぁ…もう移動したのか?」
アキトは頭を擦りながら立ち上がり周囲を見渡して「おお」と感嘆の声を漏らす。呆けているんじゃないと黒鴉はツッコミを入れる。
「ちょっと!おお、じゃないわよ!人気の無い場所でどうしろってのよ!?」
「足元を見ろ、石畳だ。つまりこの先に進めば人里が見えてくるって事だ」
「何を当たり前な事を!私達が心配してるのは今日中に街へ辿り着いて宿を何とか確保出来るのかどうかよ!無一文なのよ!?」
アキトは大丈夫大丈夫と笑って適当に棒を拾ってきてどっちに行くかと倒れた方へ向かう事にする。
「さぁあっちに向かってレッツゴーだ」
テキトーなアキトのやり方に黒姫は溜め息混じりに「大丈夫でしょうか?」と呟くのだった。
四人はトコトコと歩き続ける。最初に文句を言い出したのはやはり黒鴉であった。
「朝食抜いてたからお腹すいたー」
翔が苦笑いして注意する。
「もうちょっと我慢しようぜ?」
「むぅ…ちょっとだけよ?」
黒鴉は口を尖らせる。アキトは笑って草原を指差す。
「食えそうな野草探すか?」
「嫌よ!ふざけないで!」
「サバイバルするのも救世主の務めだぞ」
三人にドン引きする中でアキトは大真面目な顔をしていたのだった。
更に暫く歩く事数十分、城壁が見えてきて黒鴉が歓喜の声を上げる。
「人里だわ!しかもそれなりに大きめの!」
「やっと休めるのか…」
翔もホッとした様子を見せるがアキトはこれからが本番だぞと三人が不安になるような事を言い出す。黒鴉が険しい顔して怒鳴る。
「ちょっとおどかさないでよね!本番って何がよ!?」
「見てれば分かる」
アキトも真剣な表情で先頭を歩く。
閉ざされた門にたどり着くとアキトは気さくに手を振って門番に挨拶する。
「どもー、旅人です。開いてます?」
「…怪しい奴らめ、何の用だ」
「何の用って入りたいんですけど…」
門番は翔達四人を順々に睨みつけて本当に旅人かと疑ってくる。
「訳ありの旅人なンすよ」
ヘラヘラした態度をしてアキトは答える。大丈夫なのかと不安そうに三人はアキトを見ていると門番は溜め息をついて冒険者証を出せとアキトに迫る。
「あー、なくしちゃって…そう意味で訳ありなんすよ」
「四人全員がか?…怪しい…」
いつも一人で旅してたアキトはヘラヘラ笑いつつも内心焦っていたが門番はやれやれと首を振って内側と連絡を取り合いに行くのだった。
翔はタイミングを見てアキトに不安を吐露する。
「ちょっと、本当大丈夫なんですか?」
「さあな、もとより何も無い俺等だ…こうするしかねぇよ」
「えぇ…」
冒険者証をなくしたパーティと誤魔化し誤魔化しで何とか門番の方も話が通ったのか街に入る許可を貰う。しかし当然不審者な四人を監視するように冒険者組合まで案内され登録作業が終わるまで監視されるのだった。
「やっと終わったわ!聞き取りだけで済むなら楽ね!」
最後の黒鴉の登録も終わりやっと休めると伸びをする翔と黒鴉。
「何言ってんだ?…これから日銭稼ぐんだよ」
アキトは依頼書をピラっと一枚手に取り早速受け付けに通す。
「はぁ?宿は?休息は?ご飯は!?」
「ンなお金ねぇだろうが!ほら仕事行くぞ」
アキトの乱雑な言葉に黒鴉は当然黒姫もやっぱりかと言いたげな顔をする。
「なんとなくそんな気はしてました…」
「四人分だからな?それなりに仕事量はあるぞ?」
三人は仕事と聞いて肩を落とすのであった。
街の外に出てモンスター狩りを行う一行、翔は索敵しながら愚痴を呟く。
「冒険ってもっと気軽な物だと思ってましたよ…」
「そんな考えでいる間はお子様だな。というか武器持ち込めてるだけマシだ。俺なんて木刀一本で送り出された事あるんだぜ?」
「それは…大変でしたね…」
同情するよと翔はキーホルダーにして持ち込んでいる愛刀『焰鬼』を刀の姿に変える。
アキトも今回は普段遣いにしている新しい刀の『羅刹』を手にする。
「氷雨じゃないんですね」
「あっちはお預けだ。便利すぎるってな」
「なんで縛りを課してるんですか…?」
それは知らんと神鳴の気分次第なんだと語る。
黒姫と黒鴉はその話を聞いて武器を持ってこれて良かったとナイフと剣を手にする。
「私の『デス』と姉さんの『バハムート』、持ってこれて良かったですね」
「本当ね、精霊使えるのも相まって楽させてもらえるわね」
武器に宿る付喪神的な力を行使する精霊術に対応した武器を握る四人は街の外を闊歩するゴブリンやスライムなどのよく見る雑魚を退治するのだった。
昼過ぎになり空腹になった三人を見てアキトは一端仕事を切り上げようと言う。
「やっと…ご飯…食べれる…」
黒鴉がボソッと呟き三人のお腹が鳴る。
「やれやれ、空腹に負けてるな?もっと修行しないとな」
結構な無茶をアキトは言うのであった。




