商業都市アクロへ
翌朝までゆっくり休んだ一行は揃って馬車との待ち合わせに間に合う様に移動する。
「また馬車が襲われない事を祈るわ」
「長旅になるしな、覚悟はしとけ」
「はぁ…ダルいわね」
黒鴉は肩を落としつつ馬車に乗り込む。翔と黒姫も面倒臭い話だと溜め息をついてから乗り込む。
「まぁ外道は人じゃねぇと割り切るしかないな」
アキトだけはカラッとした態度であった。そんなアキトを翔は不思議に思う。
「どうしてそんな簡単に割り切れるんですか…?」
「もう一人のお前と違う形でスレた人間って事かな?俺も自分の為に生きてる…って言ったら引くか?」
自分の為ならば異世界人を切る事もやぶさかではないと答えるアキトに翔達は難しい顔をする。
「秩序を守るなんてルールを掲げる割にドライなのよね…」
「混沌をもたらすか秩序を守るかなら秩序を選びその上で自分の命を天秤に掛けるなら命を取る。それが普通の感性だろ?まぁ神の力を誇示する事はしないが」
アキトは力を使わない程度に自衛をする為なら人との戦いはすると言い翔を見る。
「お前も分かるだろ?天秤に掛けるのは何でもいいんだ、例えば…仲間の命だろうがなんだろうが、優先すべきことって事は常に意識しろ」
「…はい、気を付けます」
翔も真剣に受け答えする中で黒鴉は鼻を鳴らす。
「結局は利己的な判断で行動します。ってことじゃない」
「少し違うが…そう思われても仕方ないか」
アキトは顎を触って考える様に答える。
「俺達には目標がある。それも念頭に置かないといけないって事を忘れちゃいけないぞ?」
「その目標が曖昧なのも良くないわね…世界を救う…だっけ?」
何かしらの危機が迫る世界を救うという事が曖昧という黒鴉に難しい話だとアキトも頷く。
「そんな曖昧な目標を明確にするのも俺達の仕事、覚悟決めてけ」
「帝国だっけ…?戦争に介入する事が正しい事なのかしら」
「介入するなんて言ってないだろ?調査するだけさ」
やっぱり曖昧じゃないと黒鴉はツッコミを入れるのであった。
ーーーーー
馬車に揺られる事半日と数時間、中継地点の宿場町に到着する。
「宿場町だ。さ、飯にして今日は寝るぞ」
アキトは軽く伸びをして凝った体をほぐす。
「一日じゃ到着しないのね」
「そういうものだ。さて、俺は買い物するかな」
「また携帯食料?」
アキトはそうだと笑って先に宿取っておいてくれと適当な事を言って去っていく。
「じゃあ浜松?アンタが宿取ってきて、私達酒場で食事を頼んでおくわ」
黒鴉は翔に命令してお金の入った袋を渡す。
「物価とか分かるのか?」
「そんなのテキトーよ、目分量?足りなかったら交渉しなさい」
「いい加減なんだからなぁ…一応大企業の社長だろうが…」
黒鴉は鼻を鳴らして妹を連れて酒場に入って行ってしまい翔は仕方なく宿を借りに宿屋を目指すのだった。
「一泊、二人部屋を二部屋で」
翔は要点だけ纏めて要求し店主の反応を待つ。
「あいよ、一部屋銀貨三枚、六枚ね」
安いのか高いのか分からないまま翔は銀貨六枚を袋から取り出して店主に渡す。店主は軽く銀貨を眺めて問題無しと鍵を二本手渡す。
翔は鍵を受け取り酒場へ合流しに向かうのであった。
酒場では二人が席についていて翔を見てこっちこっちと手を振る。
「お酒しかないのどうにかならないかしら…」
席に着くなり黒鴉に愚痴られて翔は苦笑いする。
「時代が時代だし…?」
「飲み物は水で良いわよね?アキトが来てから聞くけどさ?果実酒かハチミツ酒かビールとかしかないの何とかならないかしら。お茶が飲みたいわ」
お茶と言い出して黒姫が苦笑いする。
「紅茶が流行るには茶葉が必要ですからね…」
「茶葉ねぇ…販路が開けたら大儲け出来そうね」
商人としての視線で語る黒鴉だが割高な飲み物になりそうだと翔は笑ってしまう。
「人の夢を笑うのは良くないわよ…?」
「夢か、それって夢なのか?」
「分かってないわね…大儲けして高級な生活するのが商売人の夢なのよ。お茶もその一つよ」
溜め息をついて安酒なんて飲めないわと黒鴉は呟く。黒姫は同意して微笑む。
「新鮮なものって高いですからね。きれいな水も高いですし」
「飲料水が高くて加工品は安いって矛盾よね」
早く商業都市に行って色々楽しみたいと黒鴉は願うのであった。
ーーーーー
食事を済ませて宿で休みを取る一行は翌朝すぐに馬車に乗り込む。
「日が出ている間にちゃちゃっと移動するぞ」
アキトは御者に全員揃ったと伝えて出発する。
「どうして日が出ている間だけなのよ?」
「おバカか?街灯なんて無いし夜はモンスターも活発になる。賊だって動きやすい」
「な、なるほど…」
黒鴉は自分の質問が稚拙だったと反省する。
アキトは今日中には到着する筈だと伝えた所で狼の遠吠えがしてくる。
「ま、夜じゃなくても敵は出てくるもんだ」
「長旅は気が抜けないわね…」
モンスター相手なら任せておけと四人は武器を手にして飛び出しお掃除するのであった。
こうして中一日掛けて一行は商業都市アクロの門戸を潜るのであった。




