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神の下僕は世界を救いたい  作者: D沖信


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プロローグ

現代社会が営まれる世界『地球』、そんな世界の中で社会人をしている高卒社会人二年目の青年が本作の主人公である左目に前髪が掛かっている『浜松 翔(はままつ かける)』である。

若干ブラック気質の財閥関連会社に所属している彼はいつもと変わらない平和な日常をここ一年程堪能していた。


それ以前は平和とは程遠い波乱だらけの日常を過ごしていた。

学生時代に突然異世界に送り込まれて他の世界の神様達の争いに巻き込まれ友人達と共に生き抜いて何とか現代社会に戻ったと思ったら世界は一変していてモンスターが出る社会になっていて結局神様達の戦いは続いていていつの間にか世界の命運を賭けた戦いに挑む事になって神様達のルーツを知り世界を再編する。


社会人になったら今度は神様のルーツの未来の時間軸からの侵攻が起こってまた新たな戦いに身を置く事になる。

更に別の他の世界や上位の世界なるものからも敵がやって来て混迷を極めた戦いの中で必死に生き抜いた結果何とか世界を守り切ることが出来た。


そして今、世界を守った男は生真面目に働いているのであった。


「浜松!社長が呼んでるぞ!早く行ってこい」


部長から呼び出された翔はそう伝えられて物凄く苦々しい顔をするが断ることも出来ないので致し方なく社長室を目指す。


(ここ最近呼び出しなんて無かったのに急になんだ…?)


そんな事を考えながら社長室をノックする。


「入りなさい」


黒鴉(くろあ)、呼び出しなんてどうしたんだ…?」


呼び出した主は翔と同年代の黒髪美女の『神藤 黒鴉(しんどう くろあ)』である。


「取り敢えず座りなさい」


黒い革製ソファに腰掛ける翔。嫌な予感をひしひしと感じつつジッと待っていると銀髪の美人秘書で神様の一人である『神華(しんか)』がお茶をサッと出してくる。


「あ、どうも…」


「では、失礼します」


神華は部屋を退出して翔は黒鴉と二人きりになる。


「で、どうしたんだ?」


フランクに話を尋ねる翔に対して黒鴉は溜め息交じりに「一応社長なんだけど?」と呆れつつ話を始める。


(わたくし)から話をするより本人から聞いた方が早いわね」


黒鴉はパンパンと手を叩くと空間を斬り裂いて金髪に赤い着物を羽織った少女の姿をした神様の『神鳴(かなり)』がひょっこり参上する。


「神鳴、久し振りだな」


ここ数ヶ月は会っていなかった神鳴の元気そうな姿に翔は少しホッとしたような顔をして挨拶を交わす。


「久し振り…かしら?黒鴉とは会ってたから麻痺してるわね」


「会ってたのか」


黒鴉はたまに異世界合同会社の設立者の一人として行っていた事を公言する。翔は素早くツッコむ。


「本当に社用か?」


「ギクッ、別に理由は何でもいいじゃない。それよりも本題について語りなさいよ」


黒鴉は神鳴に話を進めるように急かす。神鳴はやれやれと首を振って答える。


「仕方ないわねぇ、単刀直入に話すわ。世代交代ってやつよ」


「「世代交代ぃ?」」


二人して驚きと困惑の入り混じった声が出る。


「世代交代って…何がどういう意味だよ?」


「今の今までアキトがしてきた世界の救世を引き継いでやってもらおうって事よ」


アキト、それは上位世界の翔であり少し年齢を重ねたその姿をしていて言うなればおっさんである。

そしてどうやら世界の救世というハチャメチャな役目を担っていたようである。


「またなんで急に…まさかアキトさんの身に何か?!」


「あー、そうなのよカレー欠乏症で…ってなわけないでしょ!元気よ元気」


二人は呆れてしまうが元気ならなんで世代交代が必要なのかと当然の疑問に行き着く。


「本人たっての希望よ」


「へぇ、よかったじゃない浜松」


黒鴉は深く考えず翔に災難が降り掛かった事を面白がってゲラゲラ笑う。


「おい!俺もお前のところの社員だぞ!?」


「一社会人より救世主の方が…ププッ。カッコいいわよ?」


「テキトーな事を!」


二人のやり取りを見て神鳴は黒鴉の方を見てニヤリとする。


「救世主カッコいいよね?」


「そうそう!とってもカッコいいわね!」


「じゃあ黒鴉もやってもいいよね?」


調子に乗っている黒鴉はウンウンと頷いてから「あ?」と変な声を出して反応する。


「何よそれ?なんで私まで」


「えー、やらないの?救世主。カッコいいんでしょ?」


「カッコいいのとやるやらないは別よ!」


黒鴉は慌てて翔の弁護にもなる発言をする。

神鳴は口を尖らせぶーたれつつ「じゃあ」と代案を考える。


黒姫(くろひめ)に頼もうかなー」


『浜松黒姫』、黒鴉の妹にして翔の結婚相手である。長い前髪がトレードマークであり今は主婦をしている。


「なんで妹が出てくるのよ!」


ポカっと軽くげんこつを放つ黒鴉。


「色々ビジネスしてるけど救世主なんてビジネスは無いわよ無い!うちの社員を勝手に使うなんて変よ変!」


黒鴉は何だかんだ言って翔のフォローをする。神鳴はまた口を尖らせる。


「えー、異世界ライフ楽しんでたじゃない!」


「それは会社を追放されてた期間の出来事じゃない」


「むー」


神鳴は難しい顔をしてビジネスという黒鴉の言葉からヒントを得てピーンとくる。


「なら異世界合同会社の販路拡大の一端として世界を救世していくのなんてどう?ビジネスよビジネス」


ビジネスの話になると黒鴉は真剣に考え始める。


「販路拡大…確かにそういうものなら…あり…なのかしら?」


「お、おい!黒鴉!飲まれるな!罠だ!」


翔は絶対に騙されてると慌てた様子で止めに入るのだった。

神鳴は少し考えてポンと手を打つ。


「別に許可取る必要ないんだけどね。強制的に救世主やらせられるから」


翔は真面目な顔をして諭す。


「迷惑だからそれは辞めなさい」


「えー、人事とかあるしもうちょっとだけ待ってあげる」


神鳴の発言から困り顔をして翔が尋ねる。


「拒否権無いの?」


「大丈夫、アキトがレクチャーしてくれるって言ってたから」


「そういう問題じゃない!」


詳しい事はアキトに聞けと神鳴はウンウンと頷いてちょっと呼んでくると空間に穴を空けてどこかへ行ってしまい残された二人は難しい顔をしていた。


「私は仕事を神田に押し付けて出張出来るけどアンタは部署動かさないとねぇ…」


秘書の神華の偽名を出して自分は大丈夫と胸を張る。


「アイドルはどうすんだよ」


黒鴉は社長だけでなくタレント業もしていてメディア露出もしたりしていたが今は白黒コンビの相方の白の『周防 美奈(すおう みな)』に任せてると答えるのだった。


「たまにしか私は出ないからね」


「そ、そうか…なら異世界合同の方は?」


神藤財閥企業とは違う事業で他の神の管理する異世界との流通、商業をする企業の創業者メンバーとしての仕事を尋ねられて黒鴉は腕組して「大丈夫でしょ」と答える。


「アミラもリョウも居るし葛之葉(くずのは)さんもいるでしょ?」


異世界合同の創業者メンバーである吸血姫の『アミラ』、同じく異世界人の『リョウ』、異世界の神の母役の妖狐『葛之葉』と強力メンバーの名前を出して問題無しと判断する。

翔はまだまだ問題があると頭を抱える。


「『(いくさ)』の事はどうするんだ?」


戰、高い戦闘力を発揮出来るようになって覚醒者となった人間や強い異世界人、人語を解する魔物などが参加している現代のコロッセオ企画について翔は話し出す。


「アンタは正規選手として出場してないじゃない?管理はそういう部署を作ってて私の管理を離れてるわよ?」


「そ、そうか…」


「…で、まだおさらいしたい事ある?」


もうありませんと翔は肩を落とす。


「知り合い全員のおさらいをしだしたらどうしようかと思ったわ」


「なんとかならないかなぁ…」


「あの神鳴よ?説得する方が無理ってものよ」


逃げ場は無さそうで翔は終わったと遠い目をするのであった。


神鳴が再び空間を割いて少々お疲れ気味のアキトと共に現れる。


「おう、来てやったぞ」


軽いノリで挨拶するアキトに対して翔は世代交代について言及する。


「なんで急に引退なんて考えてんですかー!」


「お前らもそろそろ俺の苦労を知ってもいい頃合いだと思ってな。子供作らないなら尚更だぞ」


「いや、それは…情勢とか色々あるだろ!子供ポンポン作れる社会じゃねぇよ」


アキトは難しい顔をして黒鴉を見る。


「そういうものなのか?」


「そういうものみたいよ?」


他人事だからと二人して小首を(かし)げる。

翔は二人の態度にイラッとしつつ黒鴉に給与の問題を訴える。


「末端の社員の給与が安いこと位把握してくれ!」


「身内価格なんて出来ないから仕方ないじゃない!」


翔と黒鴉の口論を見て神鳴はアキトを小突く。


「子供ってお金掛かるの?」


「俺の時は黒姫がお嬢様のままだったからなぁ…実感ねぇわ」


アキトののほほんとした言葉に翔は自分とは違うんだなと思う。


「確か探偵業してたんでしたっけ?」


「だな。神鳴からの仕事しながらこっちでいう覚醒者業も兼ねててな?」


大忙しだが薄給で財閥様々だとアキトはゲラゲラ笑い翔は自分はそれと違うからと懇切丁寧に説明する。

話を聞いて神鳴はポンと手を打つ。


「つまり黒姫の意見を聞けば良いってことね!」


「え?!…いや、俺の逃げ道を的確に塞いでくるな!…いや、黒姫がそんな簡単にオーケー出すとは思わないけどさ」


神鳴は空間を割いて浜松家にワープしていきササッと連れてくる。


「えーっと…皆さんお揃いで、何事ですか?」


話が見えない黒姫に対して神鳴がこれまでの経緯を話す。


「はぁ…翔君と姉さんにアキトさんがしていた救世主業を引き継ぐと…?いや、ダメでしょう二人にはお仕事があるんですよ?」


「だよな!」


翔は希望が見えたとパアッと明るい顔色になる。しかし姉の黒鴉は新しいビジネスチャンスだとも語る。


「異世界を広く見る事は合同会社の方の成長に繋がると思わない?」


「姉さんはいいかも知れませんが私達は…」


「分かってるわよ!社員として扱えばいいんでしょ?」


その言葉に翔も黒姫も困惑するのだった。

神鳴は親指を立てて「良かったわね」と喜ぶ。


「良かねぇやい!」


「神鳴が言い出した話なら覆せない…ですか、ならお金入るなら仕方ないかもしれませんね」


「やっぱりそうなるぅ?」


翔も半ば諦めた感じを出す。三人が折れたことに神鳴はガッツポーズを取ってアキトも世代交代が出来るんだなと内心喜ぶ。

翔はアキトのその様子を見て一応確認を取る。


「レクチャーするんでしょう?」


「…そうだった」


まだ任は解かれていないとアキトはまた疲れた顔に戻っていた。その様子に黒姫は翔に耳打ちして確認する。


「なにかあったんですか?」


「いや、知らない…来た時からあんな様子だった」


アキトはその会話を聞いて乾いた笑いをする。


「子育てって大変なんだぜ…?子どもが多いとやる事も多い」


今度は全員がアキトの言葉に他人事な雰囲気で「へぇー」と返すのであった。

話が逸れたが結論は出たので神鳴は手を叩いて話をまとめる。


「じゃあこれにて皆で異世界救世の旅をするという事で」


黒姫が一瞬の間を置いて確認をするようにツッコむ。


「…え!?私もですか!?」


「皆で仲良く行こー!」


翔は諦めるように黒姫の肩を叩き、黒鴉は妹の災難に憐れみの目を向ける。


「さぁ!あらゆる世界を救う旅に出るわよー!」


誰も返事しないので神鳴はプンスカして「んもー!」とノリが悪いと怒るのであった。

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