人生の躍動、結城葵は裏切らない? 2
全ての生徒が競技アンケートの提出を終えたのを確認してから話し出す。
「では、次は体育祭実行委員が男女で各二人名ずつ必要なので決めていきたいと思います。実行委員になった人は本日の放課後から集まりがあるので参加してもらうことになります。というのも、先ほどのアンケートを集計して即座に上級生へ結果を報告しなくてはいけないので一学年はタイムスケジュールがかなりパツパツです。それでもしっかりと実行委員をやり切ってくれる方がいれば是非、立候補してください」
我ながらきっちりと決まった内容だと思った。それなのに、なぜだか皆の表情から強張りを感じた。
一人として立候補者がいないことが不思議だと思っていると、結城さんがいつもよりも柔らかい感じで少しちょけたように話し出す。
「結構大変かもだけど、私たちも手伝うから一緒にやってくれる人いませんか〜」
その軽い声かけに応じるように二人の女子生徒が挙手した。
「私、やります」
「うん、私も運動ほかのとか好きだしやるよ!」
立候補してくれたのは遠山一花と池田沙耶香。二人とも前回の人生では関わる事のなかった目立つような女子達。
「わー!二人ともありがとう」
「女子の方はお二人にお任せしようと思いますが他にやりたい方いますか?」
一応聞いてみるが、ここで手を挙げる勇気をある人はいないだろうしワンクッション挟むだけ無駄なのでは?と思ったのはきっと俺だけじゃないだろう。
案の定、誰もいないようなので黒板に二人の名前を記入した。すると、背後から「俺は納得してないぞ」という声が聞こえてきたので振り返った。
やや背の高い男子生徒が席を立ちこちらを睨んでいる。
「えー、と。女子の実行委員に何か不満でも?」
そう聞き返すと「ちげーよ」と荒々しい物言いをしてから話し出した。
「俺はな、中学では学級委員をしてたし部活でも部長だった。当然、高校でも学級委員に立候補してた。それなのに選ばれたのがお前みたいな影の薄い冷え切った野郎だなんて納得がいかねぇんだ」
「そうは言っても。というか、この場でそんな発言できるの凄いね」
「あ?見下してんじゃねーよ」
上風楓。
彼のことも俺はあまり知らない。前回の人生でもクラスメイトになっていたはずなのに知らない人がほとんどというこの状況下で自分がどれだけ人に壁を作ってきたのかを思い知る。
そんなことよりも、面倒な人に目をつけられてしまった。こういった想いを持っている人は少なからずいると思っていたがこういった場でそれを口にする人が現れることはないとたかを括っていた。
「俺が体育祭実行委員やってやるよ。お前がちゃんとリーダーに相応しいか俺が近くで見定める。蛍もやろーぜ」
彼がそういって実行委員に誘ったのは水嶋蛍。
上風がイケイケちょいワル系のイケメンだとしたら、水嶋は爽やかイケメン。多分、モテるのは水嶋の方で上風はなんというか、目立ちたがりなのが見てとれる分女子ウケが悪そうだ。
「水嶋くん、お願いできる?」
俺が一応確認をすると彼はニコッと微笑んで『大丈夫だよ。よろしくね」といいなが頭を下げた。
その瞬間教室内の女子達の視線が一点に集まった。もちろん俺だっていい歳して釘付けだ。
「それでは、体育祭実行委員は男子が上風くんと水嶋くん。女子が遠山さんと池田さん。この四名に決定します。本日の放課後にこの教室に四クラスの実行委員と学級委員が集まるので残っていてください。あとは、部活動に支障が出てしまうことを各自で報告しておいてください」
そのあとは、体育祭までの簡単なスケジュールの共有を行い情報共有は終了となった。




