人生の躍動、結城葵は裏切らない? 1
「本日より学級委員をさせていただくことになりました。結城葵です。一日でも早くみなさんから頼られるような存在になれるよう頑張るのでよろしくお願いします」
奇妙な程に落ち着いたその声を聞いたクラスメイトらはただ茫然と拍手をするだけだった。
もしからしら、彼女の横に並び立つ男が居眠り男だと言う事実が受け入れられなくてこの沈黙を生んでいるのかもしれない。いや、もしかしなくとも大いにあり得る。
そんな、なんとも言えない空気感の中俺は口を開く。
「同じく学級委員をさせていただくことになりました。神島信二です。俺は、学級委員ではありますが学級委員らしく振る舞うつもりは一切ありません。というか、多分上手くできない。なので、結城さんにもみなさんにもご迷惑おかけするかと思いますがよろしくお願いします」
初めから上手くやることはできないという保険を述べたことにより、本来学級委員に選ばれても良いであろう人材達に睨まれてしまった。
完全な悪目立ち。
改めて、これまでとは同じ人生を生きることが不可能なことなのだと実感する。
学級委員二人からの挨拶を終えると明日香先生が「では、これからよろしく頼む」と声を出し、慎ましやかな拍手が教室内に起こった。
『なんであいつが学級委員なわけ?』
『え、俺立候補してたのにあいつに負けたの?』
『あいつの何がいいの?できるのかよ』
そんなヒソヒソ話が聞こえてきた。
お前ら絶対ヒソヒソする気ないだろ、とツッコミを入れてしまいそうになるが陰で言われていると後から知るのは結構ショックなので、これはマシな方なんだと思い込むことにした。
「それでは早速なんだが、二人を中心に体育祭についての説明と役割決めを行ってもらいたい。任せていいか?」
明日香先生から投げられたバトンを受け取り結城さんが皆の方に向き直り話し始める。
「皆さんも学校見学などで大体のイベントスケジュールは知っているかと思いますが、我が校は五月の最終土曜日に体育祭を行なっております。大まかなルールについてはこれまでの小中学校時代の体育祭でイメージがつくかと思います」
我が校、美里実業高等学校の体育祭では全四チームに分かれてのチーム対抗戦がメインになっている。
一学年〜三学年までは各四クラス構成になっているので非常にわかりやすい。
種目については、この後アンケートを記入してもらい、各学年で集計してから全体集計。その後に競技を決定し全体にアナウンスするとという流れになる。
それまでの期間が三日間。常にこのスピード感で動かなければいけないと考えると高校生にとっては厳しいものになるだろう。だが、俺にとっては当然というか何も苦ではなかった。
なぜなら、フリーランスでの業務というは営業から制約、納品、アフターフォローまで全てを一人でこなす。自由度も高い働き方でもあり、そのため即日納品などの無茶にも散々応えてきた。今更学生が行う業務のスケジュールでへこたれはしない。
「それでは、実際にやってみたい競技などを自由に記入してください。各自三つまで記入可能になっていますが、三つ全て記入する必要はありません。最低一つだけ記入していただけたら問題ないので前まで持ってきてください」
結城さんの元に向かってゾロゾロと列がなり、記入用紙を提出していく。
その中の半分くらいの人間が俺に対して、お前何もしてなくね?と言わんばかりの視線を向けてきた。
気持ちはわかる。でも、合理的に役割分担したのだから仕方ないだろう。そんな視線を送られずとも次の話は俺からになるので黙って席で待っとけ、と今にも言い出したくなるのを堪えて、黒板に『実行委員』という文字を記入した。




