第一話 ミント、薔薇 そして事件
クラスメイトからいじめに遭っていた少女、若葉美麗。美麗はある日、復讐代行サイトを見つける。
藁にも縋る思いで依頼したところ、「ミシェル」と名乗る少年によりいじめの加害者が惨殺されていた。
彼に恐ろしさを感じる美麗だが、心の何処かで思っていた。「ありがとう」と。
「美麗また絵描いてんの?」
「まぁ他にできることないし、しょうがないよ。」
「美麗絵だけは上手いね、絵だけは。」
聞こえないようで聞こえる、私に対しての嫌味。落書きや破損だらけの私のロッカー。
本当は学校にも来たくなかったけれど、成績のために頑張って行ってる。勉強だけは得意だったが、好きではないし、コミュニケーションも苦手だ。こんな風に嫌味や罵倒が飛び交うようになったのは、いつ頃だろうか。ずうっと変わらないって思っていた。 あの日までは。
偶然見つけた復讐代行サイト、「horry judge」。依頼してから1週間が経つ。どうせやらないだろうと思っていた。
「その日」は突然やってきたんだ。
ケープのような服装をした、私より2,3歳下の少年。
「はじめまして。僕は『horry judge』の管理人、ミシェルと申します。」
本当にいるんだとびっくりしたけれど、そこまで驚きはしなかった。
「復讐内容等は書いていなかったので、僕に任せるということでいいですか。」
別にいじめがなくなれば内容はどうでもいいと思った私は
「はい、お任せします。」
と答えた。彼は1週間後に実行しますとだけ伝え、去った。
ついに運命の日だ。彼の指示通り、1時間ほど遅刻する。
私が見たのはあまりにも凄惨な情景。
その中に一人立つのは、ミシェル。
クラスメイトの死体が転がる教室で、「ミシェル」は言った。
「誕生日おめでとうございます。」
そういえばそうだった。今日は私の誕生日だ。
平然と白いバラを渡す彼に呆然としながらも、私は答える。
「ありがとう。」と
なんでこんなに冷静でいられるのか、自分でもわからない。
彼はスマホでとあるビデオを見せる。
「これ、見て下さい。」
「なに・・それ」
初めて見る笑みで、彼は答える。
「あなたへのプレゼントですよ。」と
手に持っていたミントとともに、スマホを私に渡す。
「ありがとう。」
本音か建前かわからない言葉が、口から出る。
華麗なる執行が今、始まる。