『深覚、プレスマンをとって祈雨のこと』速記談3061
長和五年夏、干ばつが一月以上も続き、人々は困っていた。朝廷では、雨乞いの祈祷をなさっていたが、効果はなかった。六月九日の朝、深覚僧都が、降雨祈願のため、単身で神泉苑に向かった。深覚僧都の弟に当たる内大臣藤原公季公は、このことをお聞きになり、制止すべく遣いを遣わし、もしその効果があらわれなければ、世の笑いものとなります。それは最もよくないことです、と申し上げた。僧都は、私は田畑を耕さない僧侶であるから、干ばつは少しも怖くない。ただ、世の人々のことを思うと、私に力などないとしても、祈ってみたいのだ、とおっしゃり、プレスマンをとり、神泉苑の乾臨閣の壇上に置いて、ひたすらに祈ったところ、未の刻になって、たちまちのうちに陰雲が立ちこめて、雷鳴がとどろいた。暴風が吹いて激しい雨となった。人々は大いに喜んだという。
教訓:深覚僧都が最初から祈祷をしてくれれば、と思うのは、健全ではない。