3 ログ・ラインについてのメモ
「火星から脱走してきた八人のお尋ね者のアンドロイドとそれを追う警官」
上記の文は、フィリップ・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の『ログ・ライン』といえる。(ハヤカワ文庫、浅倉久志訳。訳者あとがきより引用)
『ログ・ライン』とは、ありていに言えば作品の『一文要約』ということになる。
日本語なら、長くても原稿用紙の二、三行でまとめることになるのだろうか。
作品の背骨、メイン・ストーリーそのものなので、ストーリーが脇道へ逸れていないかを確かめるのに都合が良い。
ただ、ネタバレを気にせずまとめるので、宣伝や紹介に使う場合はそれに向けて再編集する必要があるかもしれない。
例として、今からパッと思いつく限りのごく簡単なログ・ラインを書き込んでみる。
・異世界に転生した主人公が、二度目の人生をやり直す。
・不当に追放された主人公が、新たな仲間や力を得て生活していく。
・ゲーム世界に転移した主人公が、知識を生かして成り上がっていく。
・タイムリープで過去に戻った主人公が、未来の知識で不幸を回避し、人生をやり直す。
・大切な人を奪われた主人公が、犯人たちに復讐する。
・平凡な主人公が、特別な事態に巻き込まれて非日常を過ごす。
全ての例文で『主人公』を主語にして書いているが、別の書き方でも構わない。
加えて、もっと具体的に書くのも良い。『主人公』を『農民』や『元英雄』にしてもいい。ログ・ラインは短ければ短いほど良いとされるが、例文では抽象化が行き過ぎているのでそこにも留意しておいてほしい。
では、まとめに入る。
実際の作品では、同じ異世界転生ジャンルだとしても、神様のギフトや知識チート、異種族転生のように様々なシナリオに分岐するだろうから、これらは本当に骨組みに過ぎない。
むしろ、骨組みにどうやって肉付けをし、衣装で着飾っていくかが作者の腕の見せ所である。
本文中にない参考書籍。
デイビット・マッケナ&クリストファー・ボグラー「面白い物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術」。
書く側としては物語が脱線しないように使うのがよさそう。執筆作品の反省、読書でもテーマや構成を読み解くときに使ってみたい。
知識として得てからかなり経つけど、まだ使いこなせていない。