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3章〜泰然自若な女子高生〜

泰然自若:たいぜんじじゃく

おちつきはらって物事に動じないさま。

さて、と…。

目の前には上にあがる階段、右手には5メートルほどの通路が続き、その先にはガラスで出来た両開きの扉がある。

あの扉は開くだろうか…。

私は扉に近付いた。

そして軽く押してみる。

…開いた…。

扉が開くことがわかると私はぐっと扉を押し開いて、周りを見渡した。

足元にはセメントで敷かれた幅5、60センチほどの道が8メートルほど続いて前の建物に繋がっている。

あの建物は別棟校舎だろう。

あちらにもガラス扉があるが、開くかどうかはわからない。

その他には何もない。

真っ暗な闇が果てしなく続いている。

道の脇も地面などないかのように闇が広がっている。

私は一瞬、別棟校舎に移動しようかとも思ったがやめておいた。

あっちの鍵が開いてなかったら意味がないし、こちらの扉だって手を離した瞬間、閉じて開かなくなったらどうしようと考えたからだ。

扉から離れた瞬間、扉が1人でに閉まって閉じ込められる…なんてホラー映画でよくあるだろう?

私は引き返し、階段を上り始めた。


階段か…学校の怪談とかで普段は12段か14段の階段が13段になってるとか、よくあるよな…。

死刑台の階段の数なんだっけ?

まぁ、13日の金曜とか外国では13って数字を嫌うよな…。

階段をのぼりながら色々考えたが、階段の段数は決して数えないようにしていた。

数えようが数えまいが、どうせ13段あるんだろ?

だったらわざわざ自分から怖い思いをするような事はしたくない。

それにしても、学校の怪談でよくあげられる『てけてけ』とか『人面犬』とか『動く銅像』とかならわかるが、なんでブリッジ女やゾンビみたいな巨大ネズミが…。

まだまだ色んな化け物がいるんだろうか…。

私はため息をつきながら階段をのぼりきった。

誰かいますかー?

階段から顔を覗かせながら廊下の様子を伺った。

…本当に誰かいた。

一瞬、ドキリと心臓が跳ねたが、どうやら人間のようだ。

階段の隣にある教室の前の窓から頬杖をついて何かをぼんやりと眺めている少女がいる。

セーラー服を着ているが身長や体つきからして高校生だろう。

黒く長い髪が印象的だ。

私はやや警戒心を抱きながら彼女に近付いた。

人間…だよな?

すると彼女も私の気配に気が付いたのか、チラリと私を見ると体をこちらに向けた。

…襲ってくる気配はない。

私は思い切って声をかけてみることにした。


「やぁ…キミは無事だったんだね。」


すると彼女は笑みを浮かべ、


「あなたこそね。」


と返してくれた。

とりあえず話の通じそうな相手だとさとった私は彼女の側で足を止め、精一杯の笑顔をつくろった。

せっかく会えた相手を怯えさせたくなかった。

こうやって近くで見ると、かなり美人だ。


「何か変わった事はあった?」


私がそう話しかけると、


「…さっき男性の悲鳴が聞こえたわ。それと、子供の声もね。あなた、会わなかった?」


と静かに答えた。

男性の悲鳴…恐らく、調理室でネズミに喰われてた人の…?

でも、子供は見なかったな。

となると、上の階か…下の階で既に腹の中だったか。

やだやだ。

あまり考えたくない。

私は首を振り、


「いや、見なかったよ…。」


しらばっくれた。

あの状況を説明するのも嫌だった。

危険だとわかってる以上、今後近付くことは無い。

彼女は私の答えを聞くと、そう、と頷き、それ以上は何も言わなかった。

なんだか不思議な雰囲気を持った子だ…。

怯えている様子もないし、むしろ堂々としている。


「とりあえず、一緒にいた方が安全だと思うんだ。この校舎もやばそうだし…一緒に脱出しよう。」


私のその言葉を聞くと彼女は顎を引いて上目遣いで私を見ながら、妖しげにニッと笑う。


「ふふ…どうせ誰も助からないわ。この学校から誰も逃れられないのよ。」


不気味な事を言ってくれる。

この子はあれか。

あまりの恐怖で頭がおかしくなっちゃったとか、そういうあれか。

それとも、元々こういう子なのか。

どっちでもいいが、ふざけるな!

あんな化け物にやられてたまるか。

絶対に生きて帰るんだ。

しかしまぁ、どうせこんな子ならもっとまともな人に会いたかったな…。

まぁそんな事を言っても仕方ないけどな。


「や、やめよう。もっと前向きに考えようよ、ね?」


懸命に励みになるような言葉を探したが、浮かんできた言葉はどれも白々しく、こんな事しか言えなかった。

彼女は


「ふふ…そうね。」


妖しげに笑うばかりだ。

これはこれで不気味だ…。

本当に一緒に行ってもいいのだろうか?

私はしばらく迷ったが、彼女から何も危害を加えられて無い以上見捨てるわけにもいかない。

一緒に行動することを選んだ。


「キミ、名前は?」


そう訊ねると彼女は訝しげな表情を浮かべた。


「名前?こんな状況でそんなの必要ある?」


…。

案外、それは正しいかもしれない。

2人きりしかいないんだし、名前など知ってしまったら相手を失った時のショックも大きいだろう。

どうしようか。

もっかい訊くか?

それとも、そうだね、とか言ってこの場を濁すか?

私が返答に迷っていると、


「…アリスよ。」


彼女が呟くようにそう言った。


「アリスぅ?」


「そう、不思議の国のアリス。それでいいでしょ。」


そうきましたか。

私は呆れながらため息をつくとニヤリと笑う彼女をまじまじと見つめた。

まぁ、彼女は美人だからアリスという名前も浮きはしない。

しかし、言うに事欠いて『不思議の国のアリス』ねぇ…。

ここは不思議の国っていうより、不気味な国ですがね。

偽名とはいえ、名乗ってくれただけでもありがたいのかもしれない。


「私は…つかさ。苗字まではいらないよな。」


彼女…アリスはえぇ、と頷いた。

美人だが、不気味で妖しげで私の中では深く親密になりたくない陰湿な感じの子だったが、意外にもこんな彼女の性格に後々、救われる事になろうとはこの時は予想だにしなかった。





この小説を書き始めて三日目ですが、自分の部屋に真っ黒な蜘蛛が出没するようになりました。

うちは二階建ての3LDKなので、私の部屋にだけ出るのもおかしい気がするのですが…(ちなみにこないだは、PCの裏に2匹いて驚きました)

玄関のドアを開けると高確率で蜘蛛が降ってきたりしますw

この辺はそんなに田舎じゃないし虫自体、少ないのですが何故クモだけがこんなに出没するようになったのでしょうか…。




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