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第3話 同棲




 考えれば分かる。お金は学生だとしても大切だ。家賃を親が払うと言っても、それが減ればメリットしかない。だがそれはお金だけの話。俺の感情を入れた話なら、それでもデメリットが大きい。だってあの有名人と暮らすなんて出来るわけがない。


 本人は現在も目を輝かせてスマホを覗いている。俺からの返答待ちということだろう。拒否すれば、また引越し費用と時間が必要になる。忙しい時期に困ったものだ。


 「歌代は良いのか?俺と同じ部屋に住むんだぞ?」


 「問題大アリだけど、面倒なのも嫌だから私はいいよ。五百雀くんって悪い人じゃないって聞いてるから、そんなに気にしてもないよ」


 「すげぇな……」


 俺とは大違いだ。だが、これで俺の気持ちも固まり始めた。懸念点はやはり歌代に嫌がられること。しかし、それがなくなったのなら承諾もありだ。


 「どう?私は襲われても殴り返せる力は持ってるし、最悪なにか不審な点があれば通報もするから、気にしてない。あとは五百雀くんの判断に委ねられるけど」


 「……んー」


 デメリットは残っているが、似たように、やはり面倒が多い。


 「……歌代が許可してくれるなら入居する。絶対下心で接することはしない。不審なとこあったらスマホで動画撮ってていいから」


 「ふふっ。そこまでしないよ。そもそもそんな勇気ないでしょ?」


 「どうだろうな。犯罪犯してまで触れたいって思うほど美少女ならあり得るかも。今のとこないけど」


 「なら大丈夫だよ。五百雀くんのこと信じてるし」


 「なら……いいか」


 拒否はもうなかった。歌代が良いと言うのなら、俺が嫌だと我儘を言い続けるのも恥ずかしい。もしかしたら、が起こらないように常日頃から何もかもを気をつけなければ。


 「やった!それじゃ2人で入居するって伝えるね」


 ガッツポーズして喜ぶ姿だけで、承諾して良かったと思うのは多分重症ではない。数多くの男たちが、この被害に遭ってるだろう。才色兼備の天真爛漫。この上なく女子の完璧を追求した万年に1度レベルの美少女。


 何かに認定されないかな。19日連続ってやつ。結構凄いんじゃないか?


 再びエレベーター下まで行き、電話をかける。電話の声も、俺と話すときと変わらず優しさのある、イメージ通りの声音。ネットで知り合って現実で会うとなったら、幻滅しない人のダントツ1位だな。


 雨は強まりも弱まりもせず、同じテンポで降り続ける。音は聞こえないから、この空間が少し気まずかったりする。考えれば同棲のような関係だ。恥ずかしすぎて爆発しそうになる。


 「家事分担も寝室選びも色々とあるな……」


 「何をブツブツ言ってるの?」


 背を向けていた歌代は、音も立てずに背後に近づいていたようで、いきなり耳元で聞かれた。


 「あぁ、これからの家のこと。2人で住むなら考えることが多くて」


 とにかく今は、何かを考えてないと落ち着けなかった。歌代と一緒に住むなんて、平常心で受け入れられる内容じゃないから。


 「ふーん。そんなに気にしなくて良いんじゃない?家事はするつもりだし、任せっきりは、私には心痛いからね」


 「善人でしかも家事も出来るのか?それはいいこと聞けた」


 嬉しい誤算とはこのこと。美少女とはいえ、家のことは苦手だろうと予想をしていた。しかし家事を任せてと言うほどなら期待出来る。誰しも欠点はあるというのに、流石は歌代。人生で初めて出会った完璧な人。住むのが楽しみだ。


 「うん。それより「助かる、ありがとう。書類は後で送るから入ってていいよ」って連絡きたから、鍵開けて入ろう」


 「そうか。連絡してくれてありがとうな」


 「ううん。貸1つね」


 「そこはしっかりしてるんだな」


 「ふふっ。嘘だよ。これから仲良くする人同士、貸し借りなしでいこう」


 「そう言ってもらえると、気負いなくて助かる」


 男女がともに住むなら、女子の方が気にすることは多いと俺は思う。だから何もかも歌代の口から、これはいいこれはダメと聞けるのは助かる。それを基準に、今後の動きなどを自分でも言われず判断出来るのだから。


 それから俺たちはエレベーターに乗り、2階を押し、歌代の荷物を持って部屋へ向かった。雨を凌げるマンション内でも荷物を持つのは変わらない。連絡の釣り合いにはならないだろうが、負担を減らすのは感謝の念があるからだ。


 エレベーターを降りると、すぐ横が202号室だった。


 「近いの助かるー」


 「だな。悪いが、荷物持ってるから鍵は任せていいか?」


 「うん。任されました」


 同じ鍵が2つずつ。合計4つという多さで、ポケットの中にある歌代の1つを取り出して、鍵穴へ入れ込んだ。ガチャッとドアノブを回すと、その先が見えてくる。電気はついてないが、薄っすら見えた。そこには茶色の箱が山積みにされて置かれていた。


 「あれ……2人分だからあの量かな?」


 「だろうな。これは夜まで続きそうだぞ」


 「えぇー、シャワー浴びてゆっくりしたかったのに!」


 「流石に歌代の私物に手は出せないから、こればかりは1人で頑張るしかないな」


 「着るもの関係以外は少し頼んでもいい?」


 両手を擦り、下からお願いと見上げる。


 これ、断れる人いないだろ。


 「俺のが早く終わったら手伝う。一緒に住むんだから、それくらいは助け合いでなんとか出来る」

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