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第32話 思春期




 元気だけはよろしいことで。その明るさに、普段の学校でのないようであるストレスを発散出来るのは、長所である。こんな歌代の笑顔に、いつの間にか見惚れてしまう。


 「次は鶏もも肉な」


 「なるほど。鶏もも肉は鶏もも肉は……」


 「先にあるぞ」


 ぐるっと一周回れば、いつの間にか買いたいものが全部揃ってしまう、それがスーパーの良いところ。しかし、考えられて商品が置かれていたとして、それを知らない人や知っていても優柔不断や方向音痴は、普通に何周もする。


 「行こうぜ行こうぜぇー」


 何も持たないから、気楽に暴れるようにスーパーを駆ける。人がいないことを確認してから、なのがいい子ちゃんなのだが、走る時点で相殺されてるので、プラスに傾きはしない。


 天真爛漫に先を行く歌代を追いかけ、買うものだけに目を奪われるように視点は真っ直ぐして、肉コーナーへ。牛肉を見れば食べたくなるし、豚肉を見れば調理したくなるし、鶏肉を見れば鶏もも肉を探す。


 「これ、どれ選ぶのが良いとかあるのかな?」


 「あるんじゃね?詳しくないから知らんけど」


 「スーパー初心者には、難しいですなー」


 顎に手を起き、全く何も考えてないくせに考えてるフリをする。コツンと頭を叩きたくなるが、騒がれると恥ずかしいので、家に帰ってからにする。


 「あっ、もも肉見っけ」


 真横にあるから、とっくに見つけてると思ってた。そんなこともなく、蟻を見て判別がつかないように、肉を見てもどこの肉かあやふやなのだろう。流石に牛肉豚肉鶏肉の違いは知っててほしいが。


 秀才だし、何だかんだ知ってるっしょ。


 「うわー、プニプニしてる」


 「……それ良し悪し関係なく買わないといけなくなったからな?」


 「大丈夫。流石にそれは知ってるから。そもそも買うつもりで触ったし」


 「なら良かった」


 実家のスーパー話なのだが、世間はとても広いため、驚きの光景を目にすることが多い。子供が、売られてる商品を会計前に食べるのは良くあったし、おじさんが、ラップ引き裂いて中身だけカゴの中に入れることもあった。


 最近では迷惑客も増えていると言うし、学生の頃から、義務教育に敗北したやつらと揶揄されないよう、教育されてほしいものではある。


 「私のお尻とどっちが柔らかいと思う?」


 「いや、触れないからな。歌代のお尻が柔らかいとは思うけど」


 「柔らかいか聞いただけで、触れることまで考えたの、五百雀ムッツリだね」


 「そうかもな。でも、お尻指差されたら、触れろってことなのかと捉える気持ちも分かってくれ」


 ニンマリとして、カゴの中に入れた鶏もも肉から歌代のお尻へ指が向かう。それを見て、「どっちが柔らかい?」と聞かれれば、触れて確かめろと同義だった。これが冤罪に繋がるのかと、少し学べたのが少しのメリットだ。


 「分かりませーん」


 「あっそ。別にいいけど」


 何1つとして問題にならない。だから好きにしてもらう。歌代は歌代なりに、好きなことをして動いてもらうのが1番だ。ノンストレスで関わりやすいしな。


 「次はマカロニ……」


 「今変なこと想像したでしょ」


 「うん。その通り。歌代のせいでな」


 どうして続けて柔らかいものなのだろう。どうせ買う時に何かしら一コマ入れてくるのは分かるのに。黙って選んで颯爽と会計に行けば良かったと、後悔を少々。


 「いやー、思春期男子だね」


 「どっちかというと、歌代の方が思春期男子っぽいけどな」


 「気持ちはそうかも」


 「秋人のことは嫌いなのに、その原因の下ネタは好きなんだな」


 「桜羽くんは、しつこいしうるさいからね。私は下ネタというか普通に言いたいことを言ってるだけ。陽奈みたいにね」


 類友か。朝比奈も毒舌な時は毒舌だし、それこそ秋人には辛辣だ。だから嫌いな一面もあるのだと、今更ながら秋人の性格に、ドンマイとしか言いようがないことに微笑する。


 「桜羽くんって、俺には何で五百雀なのに、秋人には桜羽くん?」


 引っかかった小骨を取り除きたくて。


 「陽奈と同じだよ。五百雀んって言うように、五百雀くんって言いにくいんだよね。それに元から私って、人を敬称つけないで呼ぶから、五百雀は五百雀。でも距離感を示すために、他の男子はくんをつけてるの」


 「ふーん。なるほどね。俺だけ特別ってことか。最高だな」


 「思ってなさそう」


 「さぁ、どうだろう」


 もう特別に特別感はない。噛まれ役に、同棲、自分にだけ見せる性格もそうだ。もう非日常的なことが起こりすぎて、俺の容量では特別という言葉の意味の基準がバグってしまっている。


 「ほら、マカロニ買って、その他の材料買って帰るぞ」


 「料理の時間もあるって考えると、さっき食べたもの消化しきった今、お腹空いてきた」


 「我慢しろ。噛……なんでもない」


 意識させては噛まれるのは俺。ここで見られたら、家族だとしても耐えられない。店員さんとかなら避けるべき最大の目。


 「消化早い方なら、飲み物で対応するしかないな」


 「スナック菓子と炭酸飲料、そしてアイスも食べたけど……私意外と食べる人なのかも?」


 「いや、今更自分のことについて言われてもな。多分そうなんじゃね?しか言えないわ」


 「グラタン多めに作っちゃおうかな」


 「やる気出してくれるなら、それに越したことない」


 「もちろん五百雀が」


 「……頑張れ」

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