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第24話 ホラー映画




 「私は邦画よりも洋画を観たいです。理由は、邦画は少し生々しいからです」


 「分かる。洋画ってなんでか観たい欲に駆られるんだよな。怖いというより驚きって感じの」


 邦画と洋画の違いを語れるほど、精通してるわけではないが、少ない知識と観た記憶の中で、俺はそうなのだと確信する。どうせ俺個人の意見なのだから、受け流してくれればそれでいい。


 「やっぱり洋画だよね。ビクビクして少し涼しくなるくらいが丁度いい」


 「涼しくなるって、感じるタイプなのか?」


 「少しだけだよ」


 少しだけでも凄いけど。


 ピッとボタンを押して、部屋の証明を消す。遮光カーテンも閉めて、ほとんど真っ暗。暗所恐怖症には耐えられない部屋となる。


 「怖いのって得意?」


 囁き声で、すぐ隣りに幽霊が存在するかのように声を震わせてくる。怖くはなくても、先走るその高鳴る気持ちはとても理解出来る。


 「普通だな。今の歌代の方が怖いと思うくらいには苦手って言っとく」


 囁かず、素の声で答えた。見えなくても、ムスッとしたのは感じ取れて、吐き捨てて歌代は言う。


 「後ろから首絞めて驚かしてやろうか」


 「まさか、本当のホラーは身近にあった?!」


 「あはははっ。そんな言われたら、私泣くよ」


 喜怒哀楽、感情の上げ下げが激しい。冷たかった声音が、突然笑い出すことで二重人格を疑うほど消えた。確かに2秒ほどの間は空けられた。しかし、それが逆に切り替わる時間かと思えて、少し怖くなったのは秘密だ。


 そんな俺だが、こんなにも歌代に陽気に接していることが驚きでもある。きっと暴れても、騒いでも、いじわるをしても、歌代は冗談や楽しませるためなら許してくれる。


 だからか、そんな思い込みの理想で、俺はハイテンションへと化している。いつもの俺は、知られてる中では騒ぐ人ではない。自負しているけれど、今はそんな自負はどこかへ消えた。


 影響されやすいもんな、俺……。


 昔からの性格。流行りに流されるのが、俺だった。これもまた、その片鱗に感化されているのだろう。


 「ふぅぅ、何観ようか。サイコホラー?やっぱり人間が1番怖いよね」


 「驚いたり、ストーリー楽しんで怖がるなら続編も多くある、オカルト、サバイバルホラーもあり」


 「おっ、分かれたね」


 「決められないなら、目を瞑ってランダムに選んだのにすれば?」


 「優柔不断だし、それでいっか」


 激しく同意。選択肢を出されれば出されるほど、困りに困ってしまう。どれにも良し悪しがあって、考えるけれど、どれを選んでも後悔すると思ってしまう性格。


 「五百雀がストップって言って」


 「……ストップ」


 「ここだぁ!」


 「「解き放たれし迷宮??」」


 止めた先、映っていた言葉を読み上げる。


 「オカルトっぽいね。評価も4.4で悪くないし」


 「怖そうなんだけど」


 画面左半分、白装束を身に纏った少女が、俯いて表情を隠している。残り半分に、その迷宮とやらの入口が。そしてその上に若干量の血痕が。


 「絶対キーパーソンだろ、この子。私に取り憑いたからウンタラカンタラって、絶対言うぞ」


 「分かる。そして家族に抱きしめられて、ハッピーエンドと思ったら、最後の最後で、続編の匂いが……ってね」


 始まる前から答えを推測する俺たちに、何度も言うがそんな知識はない。けれど、的を得ているような考えに、間違いだとも思わない。


 「98分。ながーいお付き合い始まるね」


 「マジで、驚かすのだけはやめてくれよ?」


 「あれ?怖いのって苦手じゃないんじゃないの?」


 「人間が1番怖いのって言ってたよな?そういうことだ」


 隣で驚かされることが何よりも怖い。実は目の前のことに集中するシングルタスクタイプの俺は、観始めたら集中が止まらない。良いことなのだが、それが逆に人からの驚かしに拍車をかける。


 以前、冬羅たちとホラー映画を観た時、気づいたら周りに誰もいなくて、1人に放置されたことがあるくらいだ。隣には秋人が居たのに、その移動にすら気づかなかったレベルに集中してしまう。


 「それ、言わない方が良かったんじゃない?」


 人の気持ちは読めない。けれど、時々あからさまな時がある。そう。今の歌代なんて特にそうだ。集中してしまえば、きっと俺は恥をかかされる。


 「……心臓止まったら責任取れよ?」


 「任せて。人工呼吸してあげる」


 なんとも後悔の残りそうな死に方だ。


 「再生していいよね?」


 「どうぞ」


 「くっついていいよね?」


 「ダメです」


 「えぇ、私怖いの苦手ー」


 「嘘つくな。本当だとしても、1人で見るのがホラー映画の醍醐味だ」


 「優しくないなぁ」


 クッションを胸の前に抱えて、代わりに抱きしめる。俺がクッションならば、なんて思っても、どうせ集中して気づかなくなるし、抱きつかれても困るだけだから気にしない。


 再生され、音量も調整されると、後はもう観るだけ、なのだが。


 「お菓子とか食べる?」


 「いいや、アイス食べたから大丈夫。太るかもしれないし」


 「了解」


 俺は食べないけど、歌代は食べる。さっきも食べていたのに、飽きないようで。ってかよく太らないものだ。無駄な脂肪もないし、太りにくい体質とはいえ、運動してる様子はないのにどこに無駄は行ってるのだろう。


 気にしても、視線は既にテレビへ。字幕ではなく音声を日本語訳に。きっと、スナック菓子を食べられても、気づかないだろうな。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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