表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/43

第13話 新2年生




 首筋に大きめのガーゼを貼り、噛み跡を隠した俺は、始業式、そして新入生の入学式のために久しぶりに学校へ足を運んだ。未だに消えない違和感はあるが、そんなこと気にしていたら、いつか友人からバレてドキドキタイムなんてする暇もなくなる。


 あの4月1日。カバンを交換して登校と決めた俺たちだが、今日はカバンを持たずに登校が許可される日であるため、必然的に明日からのスタートとなった。


 1つ上の学年へと進級し、安堵感もなく、当たり前に過ごすだけの俺の日常が崩れた今、俺は救われた気持ちで休み時間を過ごしている。


 「――お前が同じクラスでめちゃくちゃ助かった。今日ほどお前に感謝した日はない」


 「それ、今日3回目な?そんなに俺のことが好きなのか?もしかしてそっち系の人?」


 俺の1つ前の席。出席番号1番を背負う、俺の友人にして今の救世主。名前を青海冬羅(あおみとうら)といい、ただただうるさい人気者。しかし常識人で、問題児という扱いにはならない、ただうるさいやつ。


 「いいや。全然違うけど、わけあってお前には今心底感謝してる」


 「……よく分からないけど、そうか」


 こいつ何言ってるんだ?という目で俺を見るが、事情を説明出来ない俺に、その目は少し痛かった。そんな冬羅を見て、その隣に座る女子は言う。


 「今年も同じだね、青海くん、五百雀ん」


 俺の名字を、スッキリ呼びたいという理由から【く】を重ねて呼ぶ彼女。名前を朝比奈陽奈(あさひなひな)といい、女子の中ではひなひなと呼ばれる女子の中心人物。微かに俺に対して視線を送る隣の歌代とかいう変人の親友であり、引けを取らない美少女である。


 良くクラスを往復して学年からの人気を得た朝比奈は、いつの間にか歌代とも仲を深めたらしい。なんとなくで友だちが出来る世界線、見てみたいものだ。


 「今年もうるさくなりそうだな」


 「静かなのより良いでしょ。それに今年は月も居るしね」


 この学年の頂点に立つ人気者、そして有名人。朝比奈なんて霞むほどの人気であり、その天真爛漫と言われる性格は、歌代のためにあると言われるほど。


 「そうかな?はじめまして、青海くん、五百雀くん」


 こっち見んな。


 ニヤニヤして俺と目を合わせるので、危機感のないその行動に心の中で伝えた。多分分かってくれるだろうが、だからこそやめない。スリルに飢えた可哀想な子だから。


 「はじめまして」


 「はじめまして、歌代さん。素直に今年同じクラスになれて嬉しい。色々と遊びまくろうな!」


 こいつはうるさい。早速声を出して、歌代に向かって握手を求めた。それに「あはは」と苦笑いで対応するが、全く気づいてない。むしろ、好調とか思ってそうだ。


 冬羅との握手が終わると、歌代は俺を見る。目がしっかりと合うと、目線は俺の首筋へ。


 「五百雀くん、首怪我したの?そんな大きなガーゼ初めて見たよ」


 嘘つけ。お前が買ってきたんだぞ!


 「それ、俺も思ってたぞ。そこを怪我するってどうしたんだ?」


 冬羅もマジマジと見始める。透過能力なんて持ってないだろうが、何故かバレる感覚でドキドキと鼓動が速まる。胸に手を於けばバレるの確実で、なんて言おうか迷ってるのと相まって、冷や汗もポツポツと出るよう。


 「あぁー、これはだな……果物の缶詰を開けた時に汁が首について、拭こうとしたら蓋を持ってて、それで切ったって感じだ」


 「あらぁ、おっちょこちょいってやつ?五百雀んってそういうとこあるよね」


 「へぇ、そうなんだ。缶詰で切ったのか。気をつけないとね」


 とても嬉しそう。ドキドキしたいのではなく、歌代はドキドキさせたいタイプなんだと、この時点で確信した。朝比奈の目を合わせて笑うとこも、実は朝比奈には教えましたよと言われているようで、ずっとドキドキが止まらない。


 「バカだな。流石、クラス20位の平凡さんだわ」


 「プライベートは無関係だ。お前、俺の8も下なんだから、平凡にもなれないんだからな?」


 「どんぐりの背比べだね。私からすれば、どっちもダメダメのアホだよ」


 最終成績クラス1位、学年2位の秀才。そして。


 「でもそんな陽奈も、私からすればアホだよ」


 最終成績クラス1位、学年1位の秀才。トップを飾る才色兼備コンビ。1週間前は、あんなにアホを晒して今日まで来たのに、良くもまぁ、高飛車に堂々と言えたものだ。


 「悔しいこと言ってくれるね」


 「この場合、どんぐりの背比べじゃなくてなんて言うんだ?」


 「神の背比べ」


 「五百雀ん、そういうとこが安直でアホなんだよ?」


 「でも、俺はいいと思ったぞ?」


 「それは20代同士、似た考えってことだよ」


 朝比奈は、結構言う派の人だ。思ったことを口に出す性格なのだが、嫌う人は全くいない。男子は変態の集まりなので嫌うも何も、ご褒美と考える人ばかり。しかし、女子でも皆無なのは驚き。


 少しくらいは、文句を言っても……いや、居たな。2人だけ居た。


 その2人が近づいてくるのを、俺はこの目で捉えた。朝比奈、歌代の派閥に対して、楯突くもう1つの派閥。現2年生で、歌代とほぼ同じ人気を持つ人が。


 「あらら?ここに2人も集まったのかしら。可愛さだけで人気者になっただけの、変人さんたち」


 圧倒的お嬢様感。いや、しっかりとお嬢様である彼女を見て、歌代と朝比奈は目を細める。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ