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都内の女子の憂鬱 〜気晴らしの果て〜

 「あーあ、家でひとりも飽きたなぁ、ゲームも漫画もアニメもドラマも映画も全部気になってたのは手を出したし、次なにやろうかなぁ」

 

 それにしても、運命とは不思議、こんなクズった私でも奇跡は放って置けないみたいで、とある場所へと私を導くのでした。


 ここ最近引きこもっていた私は気晴らしのために電車に乗ると、天気も良かったのでお気に入りの目白の洋菓子店、

『ルグーリゼ』に行くことにしました。

 

 目白駅に着くと通い慣れたら徒歩で5分、ノスタルジックな西洋風のシックな建物、窓ガラスに金色で描かれた『ルグーリゼ』の文字といつも貼ってある見習い募集の貼り紙。

 瀟洒しょうしゃな装飾が施された自動ドアを開け店内へ入れば、甘い香りと人々の温もりで満ちているのです。


 私はシュークリームを2個買うと、当てもなく裏通りをぶらぶら歩いていたのです、すると面白そうな看板を目にしました、そこには、こう書いてありました。

 

 『全ての悩みは、形而上でも形而下でもない場所からやってきます、私は其の悩みを治せます』〜宮野研究所〜

 当マンション7階822号室

 

 「うわー、怪しい、このマンション普通の住宅用でしょ、大家許してんのかな、でも面白そうだしちょっと見るだけ見てみよう」


 押しボタンが丸い白のプラスチックで中々年季の入ったエレベーターで7階に行くと、822号室はフロアの真ん中の部屋で、ドアには縦書きの『宮野研究所』という渋い木製看板が掛けてありました。 

 

 「うっ、どうしよう、ほんと怪しいなぁ、ちょっと怖いし、ええい、私!行け!どうせ暇だし、一応マンションだし大声出せばどうにかなる」

 そう自分に言い聞かせて、チャイムに手を伸ばしました。すると丁度その時ピーン、ピーンと携帯が鳴ったのです。     

 画面には「袋田」と表示されていました。私はなぜかそれを見て少し安堵したのです。

 

 「はい、もしもし、どうした?」


 「どうしたじゃない、それはこっちのセリフだろ、それより体調は大丈夫なのか?」


 「うん、大丈夫だよ、怪我とか体の病気じゃないから、袋田は元気?」


 「それならいいけど、うん俺は相変わらず元気だよ、ていうか今、外?貝下の声、やたら響いてるぞ」


 「うん、外、目白のマンションにいるよ」


 「目白?マンション?なんだよそれ、でも、案外近くにいるなぁ、俺さ渋谷にいるんだよ、近いしせっかくだから会おうぜ、打合せ早目に終わって時間あるんだ、ランチでもしよう」


 「あ、うん、そうだね、会おうか」


 なんとなく分かっていました、今会えば一線を超えるって、でも止められなかったのです。

 私は30分後に袋田と新宿で落ち合うと、どこにでもあるパスタ屋で軽いランチとお茶をしたのち、JR南口近くの地下通路から歌舞伎町方面へ向かい、Qというホテルで休憩をとりました。

 

 袋田は恋人でもないのに同期ということもあって妙に親近感があって私はすぐに心と体を解放できました。

 袋田の艶光るガッチリとした肉体は、絶え間無く私の腕を取り、足を取り腰を支え、あの手のこの手を駆使します、袋田は要するに上手だったのです。    

 私が拒否しなければ穴という穴に指先を入れて来る、性の悪魔のような男でした。

 事が終わり私は一時の快楽に酔いしれ放心状態でした、そこへきて袋田は何とも不謹慎な告白をするのです。

 

「なぁ、貝下、幹元さんいるだろう、俺さ幹元さんとも関係持ってるんだよね」

 

 「へぇ、そうなんだ」


 「なんだ、驚かないのか、びっくりすると思ったけどな」


 「あんたなら、やりかねないでしょ、今までもそうだったし、私だってこうなってるし」


 「そうか、じゃあさこれ見てよ」


 袋田はそういうとスマートフォンに保存した幹元との情事の動画を見せてきました。

 

 「やめて!見たくない!」


 さすがの私もコレにはキレてしまい、袋田のスマートフォンを反射的に投げ飛ばしたのです。

 勢いよく投げ飛ばされたスマートフォンはセンターテーブルの紙袋に当たると床に落ち、テレビ台と床の小さな隙間の奥にスルっと入ってしまいました。

 隙間の奥からは幹元が悦に喘ぐ声が聴こえて来ます、私は怒りと恐怖とに耐えられず急いで服を着ると走ってホテルを後にしました。

 そんな中、袋田は急展開に気が動転したようで私には目もくれず、スマートフォンをどうにか取ろうと必死になっています。

 しかし、全く取れないスマートフォンに袋田は激怒し、大声で唸りながら近くにあった紙袋を取ると、薄桃色の壁に勢いよく投げつけたのです。


バンッ!!


 破れた紙袋からは、黄色いカスタードクリームが溢れ出したのでした。

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