王太子であったお兄様が無実の罪を婚約者に着せて、婚約破棄にして追放したのがわかり、廃嫡になり、何故か妹の私が王太女となってしまったのですが。廃嫡になってみせます!ものぐさ生活とおさらばなんて嫌ですわ
「……は?」
「は、ではない、エレイン、よく聞け! お前が次の王太子ではなく王太女となる!」
「いえいえ、お父様、私は五女ですわよ。うえのお姉さまたちでいいのではないですか!」
「いや、血筋からいえばお前が一番ふさわしいのだ……」
私は今13歳になったばかりの王女です。
実は、お父様がはあとため息をついて次の跡取りに私を指名したのはあるわけがありました。
まず二か月前にお兄様、つまり王太子が婚約者である侯爵令嬢を妹いじめの罪で辺境追放したのですが、お父様に勝手にやったらしく、お父様が調べてみたら冤罪とわかりまして…。
令嬢を連れ戻し謝罪をとなったのですが、もうご令嬢は隣国の王家の王子の婚約者になっていて、隣国にうちの国の事情がまるわかりの大恥…。
そしてその罪の償いのため、お兄様は廃嫡、うそをついた妹とやらは辺境の修道院送りとなりました。
そして後に王子がいない、そうなれば男がいない場合は女性が女王となります。
しかしねえ……。
「上のカナリー姉さまは19歳で聡明ですわ! 次のルーシー姉さまは18歳で美貌を知られていますわ! その次のミナお姉さまは17歳で、お優しくて人望がありますわ! その次のシーリスお姉さまは16歳で、バランスがとれていて一番跡取りにふさわしいですわあああ!」
私がそういうと、そうだなとお父様も頷きました。年齢が上の人から跡取りになるべきですと言っても、血筋が一番だとお父様が聞いてくれません。
つまり、側妃の子であるお姉さまたちより、正妃の娘である私をとると?
「いやでも血筋より才能ですわ!」
「実際、カイルよりお前を跡取りにという声も当時あったのだが、女はと反対されて……」
「血筋なんて時代遅れですわ!」
絶対に跡取りなんて嫌ですわ。人生詰みますもの。
だって私はまだ五女であるから自由にさせてもらってましたの、でもでも跡取りなんか指名されたら、政略結婚、お勉強と……絶対がんじがらめですわよ。
私が嫌だといってももう決まったと告げるお父様、ここから私の暗黒の日々ははじまりましたわ。
「……もうお勉強はいやですわ!」
「次はこれですね」
私は侍従であり幼馴染であるリエルが本を取り出したのを見てもういやですわああと絶叫します。
「でも先生が来ちゃいます」
「だって私この年齢までこんなお勉強してこなかったのに……」
マナーなどは最低限習っていますが、比較的自由にさせてもらってましたのよ。
だって私より優秀なお姉さま方がいましたもの。
「私、見た目も地味ですし、頭もよくないですし、バランスもとれませんわ!」
「今からならとりかえしがつきますって」
にっこりと笑うリエル、ううう、乳兄弟である彼は容赦がないですわ。
私はなんとなく考え、ああ、これをすれば多分跡取りレースから外れますわと思いつきました。
「……あとで話がありますのリエル」
「はあ」
私はこの後、無理やり勉強させらえても上達なんてしませんってと思いながら先生の話をうわの空で聞いていたのでした。
「不義ですか」
「婚約者が決まる前に男を作ればいいのですわ!」
「具体的にどうしたら?」
「接吻をすればよろしいのよ!」
「……」
リエルを不義の相手に任命したのですが、エレイン様相手じゃなあとため息をついていますわ。
接吻程度じゃあ不義にはなりませんよと頭をかくリエル。
「どうしたら不義になりますかねえ」
「子供ができるようなことをすれば……でもさすがに婚姻年齢に達していない男女がそれをすれば、僕も罰を受けます」
「そうですわよえね、具体的に」
「エレイン様には言えませんよ」
珍しく赤くなるリエル、私はどうしたらいいのかなと考えていると、身分が低い僕なんかより、他に相手を見つけたら? と言われます。
「気軽に頼める相手があなたしかいませんのよ」
「うーん、不義より不祥事のほうがいいのでは?」
リエル曰く、婚約破棄の上、辺境追放じゃなくても不祥事なら……といいます。
「お茶会で、お化粧がものすごく分厚いと評判のミーシャおば様にそれをそのまま伝えるとかはやりましたわよ。ものすごくお父様にあとで怒られただけでしたわ。失言が不祥事になると聞いたので」
「それは王女様レベルじゃない、他のご令嬢の場合ですよ……」
昔王族の人のお化粧が分厚いといった伯爵令嬢が不敬罪で罰せられたと聞いたのですが、私じゃだめなのですわね。あとでおば様の旦那様、つまりお父様の弟君のおじさまにも怒られましたわ。
本当のことでも言っていいことと悪いことがあるって。
「……リエル、他に良い方法はないですかしら」
「そうですねえ」
リエルの案の一つはとてもいいと思って試してみることにしたのですが……。
「エレイン、まあいいんじゃないか、リエルなら王配としてふさわしいとわしも思う」
「あの身分が!」
「リエルは確かに子爵の家の子だが、まあお前の乳兄弟でもあるし、構わんよ」
私は身分不相応な人間を婚約者にしたい、愛し合っているといえばさすがに廃嫡になるのでは? とリエルがいうので試してみましたが……。お父様に賛成されてしまいましたわ。
「へ? なんで僕がエレイン様の婚約者になんて!」
「ご指名が通りましたのよ、これから王配としての将来の勉強を私と一緒にさせるそうですから頑張りましょうリエル」
「え、えええ!」
犠牲者が増えたことにより、私の不満は少しなくなりましたわ。私はリエルのこと、その嫌いじゃないというか……。
まあリエルが私の相手ならまあいっかと思えてきましたわ。
リエルはなんでえと叫んでいますが、逃がしませんわ。絶対にこれからの茨の道につきあってもらいますわよ!
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