番外編
50万PV超え記念!
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無事に学園を卒業し、今日はわたしたちの結婚式だ。前世でもおそらく経験していないので、正真正銘初めての結婚式である。
式場の関係者の方たちに手伝ってもらって、準備を進めていく。真っ白なウェディングドレスを着るのはどの世界でも変わらないんだなぁ、と考えていると、部屋がノックされた。
「はーい」
「俺だ。入っていいか?」
レオンハルトの声だ。
「まだダメ!もうちょっとだけ待って」
レオンハルトには1番きれいな姿を見てもらいたい。扉の前で待たせるのは申し訳ないが、本当にあと少しなのだ。今日だけは許してほしい。
「終わりましたよ、ジェシカ様。とてもお似合いです!」
「ありがとうございます」
わたしは彼女たちにお礼を言って、席を立つ。
「レオン、入っても大丈夫よ」
だい、くらいのタイミングで扉が開いた。そんなに楽しみにしてくれていたのかと思うと、ちょっぴり嬉しかったりする。
ところが、レオンハルトが扉を開けたのはいいものの、そこから一歩も動こうとしない。なにか言ってくれないと、わたしが不安になってしまうではないか。
「どう……?変、かな……?」
わたしが困った表情をしているのが伝わったのだろう。レオンハルトが慌てて話し始めた。
「あぁ、すまない。あまりにも綺麗で、つい見惚れてしまった」
「レオンこそ、かっこよくてびっくりしちゃったわ」
白いスーツがこんなに似合う人は、世界中を探してもいないと思う。もう2度と着ることはないと信じているので、忘れないように目に焼き付けた。
それにしても、エミリーが追放されてから、明らかにレオンハルトの糖度が増した。昔のレオンハルトなら見惚れたなんて言わなかったと思う。ゲームでも、どちらかといえば遠回しというか、直接的な表現は少なかったのに…。
「抱きしめたいが、ドレスがシワになってしまうな」
「そ、そうね、うん。今はやめておきましょ」
レオンハルトとのスキンシップには一応耐性がついてきたが、今日のレオンハルトは一段とかっこいいため、わたしの心臓が絶対にもたない。
やめておく、という話だったのに、なぜかレオンハルトがわたしに近づいてきた。なにをしだすのかと思って身構えていると、レオンハルトがわたしのおでこにキスをした。
「口紅が落ちてしまうから、口は我慢した」
「……ありがとう」
「誰にも見せたくないな。いっそのこと式を取り止めるか」
ギョッとするようなレオンハルトの発言に、少し赤かったわたしの顔から、熱が一気に引いていく。
「ちょっ、なに言い出すのレオン?!」
「ハハッ、冗談だ」
完全にレオンハルトに遊ばれている。
「誰にも見せたくないのは本当だぞ。すごく似合ってる。じゃあ、またあとでな」
笑顔でそう言って、颯爽と部屋を出ていくレオンハルトを、わたしはただ見送ることしかできなかった。頭の中がレオンハルトでいっぱいになって、今後の段取りがすべて吹っ飛びそうだった。
* * * * *
「お母様、きれいねぇ」
「きれー!」
娘のライラと息子のトムが、わたしたちの結婚式の写真を見ていた。
「そうだろう。ジェシカは緊張していて、誓いの言葉を少し噛んだんだ」
「それは絶対言わないって約束だったじゃない!」
本当に大事なところで噛み倒したのである。あぁいうのって、一度噛むと謎のループに入っちゃうとき、あるよねっ!
アンナとリックの結婚式のときに、わたしの二の舞にならないようにと、アンナが控え室でセリフの練習や滑舌トレーニングをしていたことまで思い出してしまった。
「そうだったか?子供たちにジェシカの可愛らしさを伝えたいと思ってな。つい言ってしまった」
「もう!」
本当に怒っていないことはレオンハルトも分かっているはずだが、拗ねたフリをしてみる。
「すまなかった」
「キスしてくれたら…許す」
子供たちがガン見している前ではやらないだろうとたかを括っていたのに、気づけばレオンハルトに唇を奪われていた。
「愛しているよ、ジェシカ」
本当にやると思っていなかったので、恥ずかしいやらなんやらで、声が出ないままコクリと頷く。
「ライラもー!」
「僕もー!」
子供たちが飛びついてきたので、2人で受け止めた。
「もちろん、ライラもトムも大好きよ」
「あのね、ライラね、お父様と結婚するの」
とんでもないライバルが現れてしまった。
「ダメよ!わたしが結婚してるから!」
「ライラの方がお父様のこと好きだもん!」
「そんなことないわ!わたしの方が好きだもの!」
「ライラはもーっと好きだもん!」
「わたしはもっともーーーっと好きだもの!」
急なバトルについていけないレオンハルトとトムは遠巻きに様子をうかがっていた。
「おとうさま、にんきだね」
「あぁ、こんなに見ていて楽しいバトルはないな」
そう呟くレオンハルトの顔には、優しい笑みが浮かんでいた。
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