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最終話

 エミリー・バンドルの取り調べが行われた報告書が俺の手元に届いたのは、もう何年も前のことだ。


 エミリーは、ジェシカから嫌がらせを受けていると相談したり、相手のことを褒めちぎったりすることで令息3人を味方につけたのはいいものの、半ば心酔状態だったあいつらがひたすらまとわりついてきて、重荷になっていたらしい。

 かと言って、利用している側なので邪険にすることもできない。なんとか穏便に引き剥がし、少しでも1人になれる時間があれば俺に会いに来て、ジェシカの悪口を吹き込んでいたそうだ。

 それでもなぜか俺がジェシカを突き放さないことから、どうにかして振り向かせようと、ジェシカを巻き込んだ事件を起こしたり、嫌がらせの捏造を行ったりしたらしい。ジェシカをこっそり呼び出そうにも、別のクラスに入ることはできないし、ジェシカが学園内で注目の的であったことから、難しかったようだ。


 そして、貢がされていた3人の男たちは、エミリーに貢いだ分のお金を稼ぐために、真面目に働き出したり、勉強し始めたと聞いた。今もまだ、更生プランに則った生活をしていることだろう。ジェシカを疑った意趣返しに、かなり長期の計画を立ててやったのだ。


 詐欺にあった貴族の男たちは、どのような処分を受けたのか、報告書には書かれていなかった。詐欺にあったと言っても、男たちは親の金をくすねてエミリーに渡していたので、実際の被害者は親なのだ。処分はそれぞれの家に任せているのかもしれない。どら息子が詐欺にあったなどとは公にできないし、取られたお金も使い込まれていたため、ほとんどエミリーの手元に残っていなかったのである。おそらく返還は難しいだろう。




 最後まで、ジェシカが何を知っていたのか聞くことはできなかった。だが、俺はそれでいいと思っている。



 ――たとえジェシカが何を知っていたとしても、俺を孤独から救ってくれたことに変わりはない。








「とーたま、おかえり!」


 駆け寄ってきた愛娘を抱き上げる。


「ただいま、ライラ」



「おかえりなさい、レオン」


「ジェシカ、ただいま」


 ゆっくり歩いてきた妻に、おかえりのキスをする。


 学生時代に見たノートに、キスやハグをしたときのメモが多かったため、意図的に増やしたのだが、気づけば習慣になっていた。あれから何年経っても、少し顔を赤らめるジェシカのことを可愛らしいと思う。余談だが、あのノートを見たことは、今でも秘密だ。



「今日も各店舗の売り上げは上々だった」


「レオンのおかげよ。でも、そろそろ季節限定の商品を変更しないといけないわね」



 俺たちは結婚後、俺の父の領地を譲り受けた。せっかくだからと、ジェシカ特製のお菓子を売り出したところ、大ヒットしたのだ。今では、この土地の特産品となっており、各国への手土産にも喜ばれると評判である。


「あまり無理はするなよ」


「大丈夫よ!最近は調子がいいの」


 ジェシカのお腹の中には2人目の命が宿っており、少し前まで体調を崩していたのだ。


「それならいいが…。外にいては身体に障るな。中に入ろう」


「いつからそんなに心配性になったの?」


「昔からだろ?」




「とーたま、ライラ、もうおりゆ!」


 子供ながらに、2人の世界に入ってしまったことに気づいたようで、少し拗ねた様子で暴れるライラを宥めながら屋敷へと入る。




―――風に舞う花びらが、彼らを包み込んでいた。



最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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