12話
短めです。
レオンハルトside
「カバンを見つけてくださり、ありがとうございました」
またあいつに捕まった。今回はリックに用があったらしく、俺は立ち去ろうとしたのだが、なぜか離してもらえない。
「きっとレオンハルト様も、カバンを見つけるのに協力してくれたんですよね?ありがとうございます!」
「俺は何もしてない。それから名前で呼ぶな」
「それで、リック様とレオンハルト様にお礼がしたいんです」
俺が言ったことは無視か。
「来週の日曜日、一緒に出かけませんか?」
「断る」
その日は、ジェシカの誕生日だ。
「どうしてですか?!」
「どうしてって…」
「わたしのこと見て、なんとも思わないんですか?」
そういえば、ジェシカも似たようなことを聞いてきたな。
「なんとも思わん」
「僕も」
リックも不思議そうな顔をしながら答える。
「なんでよ………。あ、レオンハルト様!お父様との関係に悩んでますよね?私、相談にのりますよ」
―――どうしてこいつが、俺の過去を知っている?
「………なんのことだ?」
「隠さなくてもいいんですよ。困ってることは、人に相談するのが1番です!」
「父親との関係は良好だ」
「そっか。リック様の前では話しにくいですよね。失礼しました」
こいつ、やっぱりおかしい。
「…いい加減にしろ」
その後はグダグダと、ジェシカの悪口を言い続けていたが、なんとか振り切った。
「それで、父親とは本当のところどうなの?」
リックには隠さず話すことにする。
「5年くらい前までは良いとは言えなかったが、いまは問題ない」
「ふーん。じゃあむしろ、そのことを知ってるエミリー・バンドルが異常なんだね」
「あぁ。本来なら知り得ないことだ」
他にも、話している中でなにか違和感が…。
「そうだ」
「どうしたの?」
「この間、ジェシカの誕生日に出かけようと誘ったんだが、そのときに、なぜか俺に予定があるようなことを言われたんだ」
「そういえば、来週の日曜日はジェシカの誕生日だから、その次の日に学校でお祝いするって、アンナが楽しそうに話してたよ」
「もしかしてジェシカは、俺があいつに誘われることを知っていたのか?」
しかも、ジェシカの言い方だと、ジェシカとのデートではなくて、エミリー・バンドルの方をとると確信しているようだった。
「ジェシカも何か知っているかもしれないな」
そうは言ったものの、ジェシカに直接聞く自信は、俺にはなかった。
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