1話
初連載です!応援よろしくお願いします!
*日間恋愛ランキング(異世界転生/転移)において1位になりました!びっくり!目玉が飛び出そう!
本当にありがとうございます(*^^*)
気がつくと、なんだかふわふわしたところにいた。しかも目の前には、すごく綺麗な女の人がいる。
あぁ、これはきっと夢なんだ。早く起きないと…。
あれ、なんで早く起きないといけないんだっけ…?
「ごめんなさい!あなた、こちら側の手違いで転生することになっちゃったのよ」
「はい………?」
「だから転生先は、あなたの大好きな"恋学”の世界にすることになりました!」
「恋学?! やった!」
“恋学”は、「恋する学園」という乙女ゲームのことだ。睡眠時間を削って全ルート制覇し、中でも推しキャラのルートは、お気に入りのシーンを見るために何度も繰り返したものである。
その世界に転生する夢を見るなんて幸せすぎる。今この瞬間、わたしが世界で1番幸せな夢を見ている自信がある。
「喜んでもらえてよかったわ。それで、転生できるキャラクターが、主人公のエミリーと、悪役令嬢のジェシカのどちらかなんだけど…」
そんなの決まってる。
「ジェシカでお願いします!」
「そうよね、エミリー……… ん?ジェシカ?」
「はい、ジェシカです!」
「ほんとに?悪役よ?」
綺麗な女の人が、怪訝な顔をしながらわたしに確認してきたが、迷いなどなかった。
「いいんです!」
「………わかったわ」
なぜわたしが悪役令嬢を選んだか。
それはジェシカが、わたしの推しキャラであるレオンハルト・ウェルダンテの婚約者だからである。主人公のエミリーがレオンハルトと出会うのは、学園に入学してからだ。あの麗しいレオンハルト様の幼少期、そして成長をそばで見られるのは、婚約者であるジェシカだけ!
夢の中だから、わたしは自分の欲望のままにジェシカを選んだ。
「頃合いになったら思い出すようにするから、それまではゆっくりしてなさい」
その言葉を聞いた瞬間に、ふっと身体から力が抜けていく。
あぁ、もう夢から醒めてしまう。せめて転生して、レオンハルト様に会うところまでいきたかった…。
* * * * *
「……夢…じゃ…ない………?!」
飛び起きたわたしは、とりあえず手を確認した。
「…ちっちゃい」
「ジェシカ様!まだ起きてはいけません。急に倒れてから、もう2日も眠り続けていたんですよ」
侍女のバーバラがわたしに声をかけるが、自分の身に起きた衝撃が大きすぎて、内容が入ってこない。
「バーバラ、わたしっていま7歳よね?」
「……そうですよ?まさか頭でも打ちましたか?!」
まぁ、そうなるよなぁ。聞いたわたしが悪かった。
「とにかく旦那様を呼んで参ります!」
バーバラが部屋を飛び出し、まわりに誰もいなくなったところで、やっと状況を整理する余裕ができた。
まず、あの女の人とのやり取りは夢ではなかった。これまでのジェシカとしての7年間の記憶もきちんとあるし、前世のこともゲームのこともしっかり覚えているのだ。
転生したということは、これからわたしはジェシカ・フリークとして生きていくことになる。
あれが夢じゃないのなら、ジェシカを選ぶんじゃなかった。そりゃ怪訝な顔されるよ。最終的に結婚できる可能性があるエミリーのほうが絶対いいじゃない!
「ジェシカ!目が覚めたんだって?!」
お父様とお母様が部屋に駆け込んできた。
「えぇ、もう大丈夫よ」
「それはよかった。目が覚めたけど頭がおかし…、様子が変だとバーバラが言っていたから、みんな心配したんだよ」
オブラートに包んでくれてありがとう、お父様。
「ほんとに大丈夫よ。でもまだ身体がだるいから、もう少し寝ていたいかな」
お母様がわたしの手を優しく握ってくれた。
「無理することはないわ。ゆっくり寝ていなさい」
「このままじゃジェシカも眠れないだろう。僕たちは部屋から出ようか」
2人が出て行ったあと、わたしは
「1人で大人しく寝てるから、ほかの仕事をしてらっしゃい」
と言って、渋るバーバラを部屋から追い出した。
そして、引き出しの中からノートを取り出して、“恋学”について思い出せることを書き出した。
まず主人公のエミリー・バンドルは、バンドル男爵家の生まれだ。学園に入学してからは、持ち前の明るさで攻略対象と親密度を高めていく。
攻略対象者は、4人。
次期宰相と噂高いノア・カトリウス、広大な領地と鉱山をもつ領主の息子であるダニエル・コターリオ、王家直属の騎士を輩出してきた名門一家のライアン・パフィーム、そしてレオンハルト様だ。
わたしの推しであるレオンハルト・ウェルダンテは、自分の父親から冷たく扱われており、しかもレオンハルト付きの家庭教師がかなりのスパルタで、何をやっても認めてもらえず、どんどん心を閉ざしていったという、ちょっっっとだけ闇深めのキャラだ。
さらに、婚約者であるジェシカは、公爵令嬢という立場をいいことに、立派な高慢わがまま娘に育ってしまう。レオンハルトはジェシカにうんざりしており、できれば関わりたくないとまで思っているのだ。こうして見てみると、レオンハルトの周りにはろくな人間がいない。
そんな環境のおかげで、レオンハルトとゲームの主人公であるエミリーが出会ったばかりのときは、かなり冷たい対応からスタートする。顔の表情筋が仕事してないんじゃないかと思うくらい無表情なのだ。
ところが、エミリーと関わることで、だんだん心を開いていき、少しずつ感情が表に出るようになって、笑顔が増えていく。その笑顔に、わたしのハートは完璧に射抜かれた。こちらに微笑みかけているスチルを何度眺めたことか…。
話は戻るが、レオンハルトの家は公爵家である。ジェシカとの婚約は、公爵家同士、お互いの立ち位置をより強固なものにするためのものだ。さして大きなメリットがあるわけではない。
そして、レオンハルトがジェシカとの婚約を破棄して、エミリーと結婚しようとしても、格が落ちるだの、世間体とやらの理由で反対される可能性の方が、現実的にはあり得る話なのだ。まぁ、今なにを言っていたとしても、ゲームの強制力で婚約破棄されるのだろう。
ゲームでは、嫉妬したジェシカがエミリーに数々の嫌がらせをして、それらの断罪とともに婚約破棄されるのだ。婚約破棄されればもちろん、お約束の追放エンドである。
なんでわたし、ジェシカを選んだんだろう…。
だが、選んでしまったものは仕方がない。何とかしなければ!
たしかジェシカとレオンハルトが7歳のときに、婚約者として出会うはずだ。
ん?7歳………7歳?!
わたしいま7歳じゃない!
まずい。これはとってもまずい。
とりあえず、ある程度ノートに書けたので、見つからないように引き出しの奥に隠す。
何か策を考えなければと思っていたが、やはり身体が疲れていたのか、そのまま眠ってしまった。
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