落とされた先でも詰む
《代価をお支払い下さい》
そう。
まずわかった事はこの相手はお金を欲しているわけじゃ無い。
代価なら何でもいい。
ただ、支払う代価は支払う者の所有物でなけばいけない。
他人の物を代価としては認められない。
「この状況を打破したい。幾らだ」
《打破とは…目の前の魔物を吹き飛ばすだけでよろしいですか?》
こちらから質問したら相手もきちんと答えてくれる。
「いや、出来れば俺らが死んだ事にして俺とアーネスをここから脱出させて欲しい」
「かしこまりました。それでは800万オクタールを」
「これで足りる?」
ポケットの宝石を1つ取り出すルカ。
《代価を確認。現状況の打破に最適解…怪鳥ウムの召喚》
《了承》 《却下》
最適解が怪鳥ってなんだよと思いながらも選択肢が無い以上、《了承》するしかない。
了承してすぐルカの頭上に大きな影が現れ蟻地獄の穴を覆う。
その影は色濃くなりルカ達に迫ると大きな口端で2人を包み込む様にして2人を咥えると再び空に向かい、あっという間に砂塵が舞う中に姿を消した。
しばらくすると、怪鳥ウムはオアシス国近くの小さな水辺に2人を口を開き降ろした。
「まさか鳥に食べられとは思いませんでしたが、ありがとうございました!」
アーネスは鳥の頭を撫で嘴にキスをした。
怪鳥ウムはちょっと恥ずかしそうに顔を横に向ける。
愛想の無い顔つきだが助けてくれた相手。
ルカも頭を撫でようとするが怪鳥ウムの翼がルカの手を弾き、拒否する。
怪鳥はルカを吟味するように目を細くし観察した後、鼻で笑った後、唾を吐く。
「なんでだよ…」
怪鳥はアーネスが気に入ったのかアーネスから離れようとしない。
「ルカ様!この子飼ってもいいですか!?」
飼うって…その体長5m近い鳥を?
「いいけど…連れては歩けないんじゃないか?」
「確かにそうですね…」
「ガァガァー」
怪鳥ウムは翼をバタつかせるとみるみる小さくなっていき、最終的に手のひらに乗るくらいの小鳥サイズまで小さくなった。
「可愛い〜。コレなら飼えますね!」
飼うのは決定なんだとルカ思う。
怪鳥なら危険な相手ではと思ったが害を成すそぶりも無いのでアーネスが飼いたいと思ったなら自由にさせる事にした。
「名前はウムかな?」
「ガァガァー!!!」
気に入らないの?
怪鳥ウムなのに?
「ムーちゃん」
「ガァガァー!!」
喜んでいる?のか?
「コレからどうしようか」
「私はルカ様についていくだけなので」
「バハ騎士長達の事が気になるけど…」
確かに突き落とされた瞬間は見ていない。
けれど直後、背後にいたのはバハ騎士長なのは確か。
そしてあの顔。
国責めにしても人員以外どう見ても準備不足過ぎる。
むしろ最初から失敗させるようとしていたように思えて仕方ない。
こうなる様に仕向けたのは国王?騎士長?それとも他の誰か?
謎だらけの現状。
代価を払って聞き出したいがそれは出来ない。
この相手は問題を解決してくれる。
しかしきちんと条件が整わなければならない。
それはルカ本人がハッキリと問題が何なのかを認識していないといけないのだ。
もし曖昧な認識で頼むと…。
「犯人を教えて欲しい」
《情報不足です》
となる。
この問題は相手も理由も何もかもがハッキリとしていないので代価の査定が出来ないのだろう。
だからこの件は解決を頼めない。
それもあって今のままだと今後も自分とその周り、アーネスにも危険が及び続けると判断したルカは自分とアーネスを死んだ事にしてもらえるよう頼んだのだ。
「このままここに居ても仕方ないから。オアシス国に入国するか」
「はい!」
アーネスはいいとしてルカの姿が問題だ。
キラキラの鎧は流石に目立ちすぎるので鎧は置いて行く事にした。
「オアシス国への入国と庶民の一般的な服が欲しい。出来れば旅人的な感じで。それと道具類も頼む。男性と女性用をひとつずつ。あと…この国の通貨を1か月暮らせる程度頼む」
『25万マム頂きます』
「この国の通貨単位?これで足り…」
ルカは思う。
この宝石は幾ら位の価値があるのかと。
代価として払ってはいるが実はぼったくられているのではないかとふと思ったのだ。
「やっぱり通貨はいらない」
「それなら2万マム頂きます」
宝石をやめ袋から銀貨1枚を代価としてみた。
ミュゼール王国で使用されているのはオクタール紙幣が基本だが、他の国の通貨も流通している。
そのなかでもよく見かけるのが金貨、銀貨、銅貨。
通貨として利用されているが金、銀、銅としての価値もあるのでその日、その日で価値が変動するが多くの国で認められており使用可能。
大きさもそれほど大きくないためある程度なら持ち運びも便利だが量が増えると音と重さで運ぶには不便だったりもする。
「不十分です」
銀貨を増やしてみる。
2枚3枚と増やしていき20枚目でようやく認められた。
「2万マムは銀貨20枚って事か」
銀貨20枚が消え目の前に服が用意される。
アーネスは木の影でルカはその場で着替えるとそこら辺をよく歩いていそうな青年となるルカ。
アーネスも可愛らしい町娘的な感じになった。
ルカとアーネスそれにウムの3名は人々の出入りの激しいお大きな門を通りオアシス国に入国する。
「こんなにすんなり入れたけど入国審査とかないのか?」
「美味しそうな匂いがしてきますね!」
「お腹も空いたし食事にしようか」
「はい!」
これなら入国する事をわざわざ頼むまでもなかったなとルカが思うと。
「そこの者止まれ」
見廻り兵らしき相手に引き止められた。
「ここら辺では見ない顔だな。どこの国の者達だ?」
正直に話すべきなのか。
適当な事を話して辻褄が合わなくなったら余計怪しまれるとルカ重い正直に話す。
「向こうの方から歩いてきました」
「向こう?ミュゼール王の事か?」
「そうです」
「仕事は詩人か行商人とか…には見えないが」
「まだ旅を始めたばかりなので」
「…チッ」
舌打ちして去って行く。
「なんだったんだ?」
「兄ちゃん大丈夫だったかい?」
店前に立っていたおじさんがルカに話しかけてきた。
「大丈夫とは?」
「他所から来た相手に難癖つけて金品を没収しようとしたんだろうけど…兄ちゃんは何も持ってなさそうだったから時間の無駄だと思ってやめたんだろうけど」
「なるほど…。この国は治安が悪かったりするんですか?」
「前はそれ程ひどく無かったが今のカーデル王になってからは治安もどんどん悪くなるし税も高くなっていきこの国から出てく人が急増してな。だから入って来るのは誰でも入国出来るが出る時は大金を支払わなきゃなくなったのさ」
「だからこんな簡単に入国できたのか…」
「盗賊やらのアジトやならず者達の溜まり場があるから気をつけるんだよ」
「ご親切にありがとうございます。出来れば安全に食事できるところを知っていれば教えてもらえると助かるのですが」
親切なおじさんからご飯屋の情報を仕入れルカとアーネスはそこを目指して歩いた。
「あまり活気のある所とは言えませんね」
道端には幾人も死んだ目をしている大人達や柄の悪い連中達が静かにそして密かにこちらの様子を探っている様に見えた。
「食事をとったらすぐここを出るぞ」
「わかりました」
少し残念そうにするアーネスを見てルカは申し訳なく思うが身の安全には変えられない。
しばらくと人通りの激しい道に出た。
さらにその道を歩いて行くと賑やかな定食屋風のお店が見えてきた。
「ここだね」
「早く入りましょう!」
「ガーガーッ!」
アーネスに手を引っ張られながら店に入るルカ。
「はい、お水!水の国オアシスへようこそ!見かけない顔だけどあんちゃん達はどっからきたんだい?」
またこの質問かと思いながらも女店主にルカは答える。
「あっちの方から旅をしてきました」
「まだ来て間もない感じだね」
「さっききたばかりで」
「そうかい!そうかい!さっ、この店のご飯はどれも絶品だよ!何にする!?」
ルカとアーネスは日替わり定食を頼むとすぐ豪華な料理が運ばれてきた。
「こんなに沢山!」
「頼んだのは普通の日替わり定食なんですけど」
「いいんだよ!オアシスに来てくれたサービスさ!沢山食べとくれ!遠慮は要らないよ!」
「それでは遠慮なく」
危険な所に見えたけど優しい人達もいるんだなとルカは少し安堵し食事を胃袋に放り込んでいく。
「アレ…なん…だか……バタンッ」
アーネスが倒れた。
「どうした!?アーネ…ス…」
ルカとアーネスは眠るようにその場に倒れた。
「人から出された食べ物には何が入っているかわからないよー。気をつけないといけないよ。あっ!お代はしっかりあんたらの身体で払って貰うから気にしないでって言っても意識はもうないか。ようこそオアシスへ」
ルカの頭の上には薄汚い笑みを浮かべる女店主がいた。
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