アラハドの森
アラハドは笑う
アラハドは笑う
夕闇に伸ばされた背をなお伸ばす少年よ
アラハドは笑う
アラハドは笑う
絡み合う糸より強く手を引く少年よ
アラハドは笑う
アラハドは笑う
希望よりよほど深い森に走る少年よ
アラハドは笑う
アラハドは笑う
濡れ鼠よりも震え凍える少年よ
アラハドは笑う
アラハドは笑う
暴かれた道化のごとく怯え逃げる少年よ
アラハドは笑う
アラハドは笑う
その先にあるのは絶望より目映い真実よ
アラハドは笑う
アラハドは笑う
その手に引く心捧げた少女を見よ
アラハドは笑う
アラハドは笑う
真鍮の鏡でも仮初は映せぬよ
アラハドは告げる
アラハドは告げる
屍を抱きしめても愛は帰らぬよ
アラハドは笑う
アラハドは笑う
「我は死をさらうモノ
なれどその死は我の物
お前の側には帰らない」
アラハドは笑う
アラハドは笑う
正道を捨て外道に走る少年よ
アラハドは笑う
アラハドは笑う
それでもなお欲する少年よ
アラハドは告げる
アラハドは告げる
「終着はすでに通り過ぎているのだよ」
アラハドは笑う
アラハドは笑う
振り替えらば気づけぬ愚か者よ
アラハドは告げる
アラハドは告げる
「これで終わりよ」
少年は哭く
少年は哭く
アラハドは笑う
アラハドは笑う
そして少女は語らず
夕闇はより暗き宵に紛れ
夜は女神の包容より優しく
全てを喰らう