第二話 死因トーク
きれいな半月が草原を柔らかく照らすなか、”ミケ”が目を覚ました。
「おはようございます …よく寝させていただきました」
「おうおはよ」
「おはようございます ぐっすりでしたね」
「ええ、ようやく落ち着いて寝れたので」
「さて、じゃあ聞かせてもらうか」
「...やっぱり、忘れてませんでしたか」
「当たり前だろ?すげえ気になってたんだから」
「...しょうがないですね ...端的に言うと僕の主人がお亡くなりになりまして、その主人の親戚のところを転々としていました …最終的には競売に出され...って感じです」
「...お前も大変だったな...まあ俺よりはよさそうだが」
「...はあ、また始まった...レオさんの自分語り」
「...レオさんも何かあったんですか?」
「俺はちょっと外出してたら...保健所?だっけか?に捕まって殺されちまった」
「...被害者面してますけどその話、大分簡単にしてますよね?どっちかって言うと被害者はおれの方なんですけど...」
「なに言ってんだよフク 俺だって被害者だろ?」
「いや、自業自得でしょうよ」
「...何がありました?」
「レオさんが首輪もなにもつけずに脱走して、おれもそれに付いていったら電車に乗って一気に移動しちゃって...」
「保健所に保護されて、飼い主が分からずに殺処分、というわけですか」
「なあ、ミケ」
「なんでしょう?」
「今のお前の言葉、矛盾がねえか?」
「矛盾?」
「保護されて殺処分、これってなんかおかしくねえか?保護ってのは守ることなんだろ?なのに殺されるって...」
「それは...なんとも言えませんが」
「ったく、人間ってのは変な奴等だ 命を大事にしようって言ってる割りにはあっさり殺処分 あいつらの言う命ってのは人間のだけかよ」
「...もちろん、人間たちのなかにもそれはおかしい、と声をあげている人はいますよ 取り組みが十分か、と言われれば難しいですが...」
「なあミケ」
「...なんでしょうか?」
「もし、俺らが生まれ変わって人間になったら、そのときにも猫も、どんな動物も大事にできるかもんかな」
「...それは正直自信がありませんね」
「...だよな、俺もだ 結局、何かを大事にするって大変なんだな」
「...そうですね」
「ふあぁ~...眠くなってきちまった 悪いがちょっと寝させてくれ」
「ええどうぞ ゆっくりお休みください」
「...んあぁ...おやすみぃ...」
「レオさん、大分落ち着いてきたなあ...」
「はい?」
「いや、ミケさんは知らないと思いますが死んだばっかりの頃は結構荒れてたんですよ 特に殺されたときの話をするとものすごい様相で...」
「冷静に、人間の立場も考えることができるようになってきた、ということですかね」
「そうですねえ...それにしてもあんなふうに考えてたなんて知らなかったなあ...」