第一話 別れと出会い
「ふあ~...あーよく寝た 少し暗くなったか?」
森に囲まれた草原、その中央には何かがこんもりと積まれ、所々に生えた木の影では猫達が日差しを避け、ゆっくりと涼んでいた。
その中のある木の根元では、二匹の猫が地面から少し浮きながら丸まって、眠い目をこすっていた。
「お、”レオ”さん起きました? まだ全然暗くなってませんよ 昼に寝始めてまだ2時間しか経ってないんですし」
「ってことは...何時だ?」
「ちょっと、猫が時計読めないの知ってるでしょう?せっかくボケたんですから突っ込んでくださいよ」
「”フク”、お前なら時計くらいあっさり読みそうなもんだけどな」
「...どういう理論ですか」
「別に、どうってこともねえよ あいつを除けばお前が近所の猫で一番頭が良かっただろ?」
「あいつ...?ああ、”ミケ”のことですか?」
「そいつだよ あいつはほんとにすごかった」
「猫のなかでも珍しい人間の言葉が分かる方でしたからねえ」
「あいつが言うにはオスの三毛猫がみんな人間の言葉が分かるんだろ?」
「そう言ってましたね」
「オスの三毛猫...なにかあるのか?」
「どういうわけかオスの三毛猫は珍しいらしいですよ」
「ふーむ......その割にはあいつはずいぶん自由だったよな」
「飼い主が心の広いお金持ちでしたから なんでも僕らがいつも集まってた公園を作ったのもミケの飼い主だったとか」
「じゃあ...感謝しとかねえとな」
そう言って二匹は空を見上げて、ニャーン、と鳴いた。
「...下手なことは教えない方が良かったですかね、これでは」
「...っ!お前...よく生きて...」
「...いや、死んだ...はずなんですけどね...?」
「み、ミケさん!?」
「レオさん、フクさん、お久しぶりです」
「おお!お前!こっち来たか!」
「ええ、色々ありましてね まあ積もる話は後にしましょう ...眠くてしょうがありません」
「いきなり寝るのか?」
「疲れましたから 生きていたとき」
「何かあったのか?」
「...色々ですよ 夜には起きますから、その時にでも話しましょう」
「なんだよ色々って!聞かせろよー!」
「ちょっと、レオさん!寝させてあげましょうよ」
「...ちえー 起きたらちゃんと話聞かせろよ?」
「もちろんですよ …おやすみなさい」
「おう、おやすみ」
「おやすみなさい~」