夏の魔力、行け水着
待望の水着!
日が差し込む。
今日は休日。
しかし先日襲撃にもあった。
どうにかして対処をしたいところだが。
休みを取りたい。
いや、暑すぎる。
礼装も着たくないほど暑い。
私は今デニム生地のパンツに半袖のパーカー。
和の国の着衣事情はよく分からないがこれだけおしゃれが簡単にできるならとてもいいことだ。
ただ暑い。
暑さのためだけに魔法を使う訳にも行かない。
しかしずっと気を張ったままでは気が気でない。
...策はないものか...。
私の分身を作る...か?
雹華あたりなら出来そうだが...。
招集を掛けてみるか。
〜魔王様 休憩室〜
「突然の招集ですまない。」
「んまぁ...別にいいんだけどさぁ...暑くて暑くて...魔法で風起こすのも疲れるし...」
漆は風の魔法を得意としてはいるがさすがに長時間作動させるのは私でも辛いものがある。
「...セリル。暑くないのか...?その格好で...。」
「慣れですかね。」
さらりといいのける。
「...慣れでどうにかなるもんじゃないでしょ...。暑い!暑いわ!」
吸血鬼は暑さに辛そうだな...。
ただでさえ日光に弱い。
その上水も浴びられない。
吸血鬼にとって夏は地獄と言ってもいいのではなかろうか。
「さすがの私も辛いですね。」
「で、話とはなんじゃ?」
「海にいく。」
スっと少しの間場が静まる。
そして。
「マジか!?海!?」
「海...ですか!」
「…海。」
「海か!よいのう!」
それぞれの反応が伺える。
漆は驚き、セリルは何かを考え、セフィロトは素っ気ない反応。
1番関わりのなさそうな雹華からは良い評価を貰った。
「ちょっと待って、私海ダメよ?」
「別に入らなくてもいいんだ。すいかもあるし海辺にいるだけでも涼しいと思うが...?」
「それなら...いいかも?」
…いいのか。
「…ん?城はどうするんじゃ?」
「雹華の出番だ。少し動いてもらうことになるがここはひとつ頼まれて欲しい。」
「...となるとわしの妖術か。幻舞 蜃。幻を見せる妖術じゃが...どう使うんじゃ?」
流石に気付きが速いな。
天狐といわれているだけある。
「私だけでいい。分身を作るんだ。そしてそれを人間方面へと向かわせる。それだけだ。そうすれば並大抵の人間達は分身の私に気を向ける。その隙に私たちはバカンズ楽しむという訳だ。」
「意外と誰でも思いつくような作戦じゃなー。」
「夏の魔力、なんて言葉があるんだ。人間の注意力が散漫することだってあるだろう。ましてや魔族達のように暑さに強くもない。」
魔族、魔物達は平均的に環境に対応しやすく、人間はしにくいと言われている。
暑さに殺られている人間の隙をついて私達はバカンスという訳だ。
「恐らく準備が出来るまで時間がかかる。皆も準備をするといい!」
「海か…!うん!いいね!」
と言うと凄まじい速さで自分の部屋に帰って行った。
「...まあ。そういうわけだ。準備しておいてくれ。」
「...私の水着...まだ着られるでしょうか...。」
セリルが腰周りを気にしながら部屋へ戻っていく。
太ってなどいないだろう…。
「カッカッカ!ほざけ。一生入らんでいいわ!胸などただの脂肪の塊じゃ!」
「...まあ別にいいんじゃない?」
「う、裏切るか!お主だけは...わしの味方だと思っていたのに...!」
口に手を当てて体をぎょっと引いて悲しそうな顔をした。
「まあまあ落ち着いて...。」
セフィロトが仲裁に入る。
「雹華様は体型からすればかなり大きめな方だと思われますが...。」
「うるさいわ!わしは何年も生きとるんじゃ!!」
〜数分後〜
「...漆...お前...」
「あら!お似合いですね!」
「へっ!いいだろ!」
男性用のパンツの水着。
上には黒いマントのようなものをを羽織っている。
「そのマント...?はなんなんだ?」
正直…その…なんだ。
似合ってないというか…奇抜というか…独特というか…。
「これか?いいだろー。」
「...ダサ。」
鋭いセフィロトの言葉が漆にぶつけられた。
「ダサいとはなんだ!ダサいとは!」
「セフィロトも結構乗り気だな。」
見ればホルタートップの緑の水着にかなりのローライズなホットパンツだ。
「魔王様も似合ってますよ。」
かく言う私は俗に言うバンドゥービキニという帯状のビキニだ。
...作ったのはセリルだが。
そしてそのセリルはというと。
「...私はサイズが合わなくなってしまっていたので...新調してクロスホルターの水着です。」
まだ、まだ成長しているというのか…。
恐ろしい。
「...ぐっ!悔しい…。」
「雹華のもなかなかお洒落でいいと思うが。」
ハイネックのあまり肌の露出がないビキニだ。
下半身はパレオでスカート状に。
子供らしさを見せない...というと失礼か。
大人らしい組み合わせだな。
「...そ、そうか。ふむ。そうじゃな。まだわしも成長...」
「そりゃないだろ。」
…嫌な予感だ。
「炎舞 龍火!燃えてしまえこの下衆!!」
右手を空に掲げ目の前に丸く円をなぞる。
そしてそこから炎の龍が飛び出す。
「 うああああああクソ暑いのに炎出すな!」
「む、それもそうじゃな...水舞 水虎!」
先ほど同様同じ行動をしたあと雹華自体がくるりと回って水の体をした虎が出てくる。
「水!だけど死ぬよねそれ!?まともに食らったら死ぬよね!?」
逃げ回りながら必死に訴える。
「死ぬの。別に良いでは無いか。」
「ごめんなさい!ごめんなさい!次酒場で飲む時値段2倍でいいから!」
「許そう。覚えておくんじゃぞ。」
「...ごめんなさい...。」
「全く...行く前から元気だな。」
走行している間にミナリが走ってきた。
「お待たせ!こういうの初めてなのよね。」
ミナリの水着はVラインの入ったホルタートップに短いスカートのビキニだ。上には人間の間で流行しているパーカーというものを羽織っている。
そして日傘にされているバンがいる。
「皆、似合ってるわね。」
「ああ、ミナリもとても似合っている。…よし。全員揃ったな。それでは行くとするか。」
「ビーチへの時空は繋がってある。わしは魔王の分身を出さなければならんので最後じゃ。先に行っとれ。」
〜名もないビーチ〜
「ウオー!ビーチ!海!」
ヒャッホウ!なんて言いながら海に向かって走っていった。
砂埃が少し舞う。
「なかなかいい場所だな!気分が高まる。」
「綺麗ですね…とっても青いです。砂浜も綺麗で…。」
「私はすぐにビーチパラソル立てないと暑さで死んじゃうわ...。セフィロトお願い。」
「承知しました。」
「早速...入っちゃいます?」
「ウオーーーっ!」
思い切り踏み込んで大ジャンプ。
そのまま綺麗に漆が入水。
「冷てぇ!涼しい!最高!泳ぐぜー!」
「...やはり子供だな。」
「...かく言う私も入りたくてうずうずしてます。」
その証かセリルの尻尾も.....
尻尾?
あれ?
尻尾なんで生えていたか...?
「?どうかしましたか?魔王様。」
「...セリルって...尻尾あったか...?」
「あぁ、これですか?収納していたんです。」
「収納出来るのか...!?」
「魔王様も魔法で何とか出来ると思いますが...」
「そ、そうか...しかし。何だか悪魔チックな尻尾だな。先端が尖っているし。」
「サキュバス特有のものです。結構自由に動かせますよ。」
そう言うとくねくね尻尾をうねらせる。
「...っと。ミナリ様、設営が完了しました。ごゆっくり。」
少しの汗を流しミナリに軽くお辞儀をする。
「ありがとう!少し休んでいいわよ。海に入ってもいいし。」
「...では、私は飲み物を作りますので少し失礼します。」
「うぉぉおおおおお!!!!!!!!ひさしぶりにでっけぇ魚見た!山、川も良いが海も最高だな!」
やはり、年相応だな。
少しだけ、心が安らぐ。
平和を目の当たりにするのはいい事だ。
「動きすぎて疲れたな。」
腰に手を当ててふうと一息。
「つくづく思うのじゃが...漆よ。」
「ん?」
「馬鹿じゃろ。アホじゃろ。童そのものじゃったぞ。」
「そこまで言う?楽しかったんだからしょうがないだろ...。」
「漆がアホで馬鹿で間抜けでどうしようもないのはいつもの事です。言ってやらないでください、彼も傷つきます。」
罵詈雑言を飛ばしまくる。
キレキレの悪口は漆に対しての信頼なのかもしれない…。
いや分からないが。
「その言葉が要らねぇんだよ!お前いい度胸じゃねぇか。」
「魔王軍の隊長がこれとは...聞いて呆れると思わないのか?」
「なっ!...別にいいじゃんか!こちとらずっと森で過ごしてた時間の方が多いんだよ!」
若い子は騒がしく元気のようだ。
…私達が若くないという訳ではないが。
「全く...元気だな。」
「ふと思ったのだけど...セフィロト、あなたいつの間にそんなに仲良くなったの...?」
「いえ、これは野良犬と戯れる程度のことです。仲良くなったなどとんでもない...。」
「そこはうんと言えよ。」
「...まあそろそろ昼にしよう。腹もすいただろう?新鮮な肉、野菜。色々取り寄せた。食べるといい。」
「お、肉は食わねぇとな!栄養足りてねぇからイライラしてんじゃねえの?」
「抜かせ、その筋肉で何を言う。」
「……。」
何も言い返せない、という顔をしている。
まあ、力と言うよりは速さと技で勝つのが漆だからな。
「...食べた。久しぶりにこれほどの量を食べた。」
焼肉と聞けば少しは無理をしてでも食べたくなる。
魔王特権で良いものを取り寄せた故、とても美味しかった。
少しずるだが許されると思っておこう。
「満腹...いやぁ酒をグイッと行きたくなったな。」「昼間から飲むやつな。」
久しぶりに肉や野菜などその場で焼いて食べた。
たまにはこういうのもいいのかもな。
「あっ、いけない。日焼け防止してませんでした...。」
見た目は重要だからな…。
魔王が日焼けなんて…。
「あぁ。焼けるのは辛いからな...。」
「はっ...!...漆くん...ちょっといいですか...?」
「...なんだ?」
セリル「私、結構魔法...と言うとちょっと違いますね。錬成術が結構得意でして...それで日焼けを防止できる塗り薬を作ってみたんですよ。...塗ってくれません?」
あぁ。
またそういうことをしてる。
セリル...何だか漆が来てから活き活きしてるな。
「え!?お、え、俺!?」
「はい!では...これです!満遍なくお願い致しますね!」
「あ...はい...が、頑張ります。」
...誰か止めなくていいのか。
ミナリはパラソルに入ったままじーっと見つめている。
セフィロトはどうしようか迷ってはいるようだ。
雹華は何が起きるのかわかっているように笑いをこらえている。
「え、えっとぉ...嫌だったら言ってくださいね!?」
「嫌じゃないですけど...あ、もしかして...そういうこと考えてたんですか...?」
「ち、ちがいます!決して!断じて!本当に!!!」
止まってと言わんばかりに手を前に置く。
「それほどまで下品な男性だったとは...見損ないました。」
「ちが、ちょっ、違うんですううううう!!」
...本当に元気だな。
しばらくの間漆弄りが続き少し休憩をしていたその時だったわ、
「...あれなんでしょう...?」
そう言って目を凝らしてセリルが見た先には何か物体のようなものがあった。
「漆、ちょっとそこの奥に何かあるんだ。見てきてくれないか?」
「うん?別にいいぜ。よっ!」
バタフライで泳ぎ直ぐに到達する。
水しぶきが凄い上がっている。
「うわぁ...。マジで...?」
なにやら頭を抱えている。
「どうした?」
「この前の怪力お化けだーー!グラン...だったか?どうするー?」
「...仕事はしたくないな...。とりあえずこちらに運んでくれ!」
「.....ぁ?」
目を冷ましたようだ。
「すまないが拘束させてもらっている。」
魔法で拘束。
大したものでは無いが力で解けるものではないからこれでいい。
「ンだァ?確か溺れて死んで...あァ。そのまま上がってたまたまバカンス気分のお前らに捕えられたってか?クソがァ!あのクソアマはどこだァ!?いんだろ!?殺すッ!」
以外に判断能力は高いようだ。
「はいもちろん、ここにいますよ。」
「...チッ。命令がねェからなんも出来ねェじゃねぇか。」
命令…?
なにか魔法で縛られているのか…?
「…人王か?」
「アァ??ンで知ってんだ?」
「その頭のヘッドギア、知っている。人間側にしかないものだ。ルドベキアと同等の武具。そして命令。大凡は人王の仕業だ。」
「はーん、で?俺を殺せねェのは分かったはずだろうが。」
「お前のことだ。どうせしばらくすればどこかへ脱走する。敵としてはなんとも言い難いが逃がす。」
「へッ。敵が情けかよ。」
拘束を外してやる。
両手を使ってやれやれといったジェスチャーをする。
「なぁこんなやつどうでもいいし逃がすんだからこっちはこっちでやろうぜ。」
「てめェ生意気だな。俺が勝負してやるよ」
「へ?何言ってんの?」
「さあ!何故始まってしまったのでしょう!敵のグランとのビーチバレー勝負!チームは漆くん、魔王様の初期魔王チーム!対するはグランとセフィロトさんの漆くん絶対潰すチーム!不穏です!ビーチバレーで死者が出るんじゃないでしょうか!」
「...どういう風の吹き回しじゃ。」
「なんでそうなるのかしら…。」
正直私にもわからない。
ただ夏の魔力で頭がイカれたのではないかと思う。
...本当に夏の魔力はあるのかもしれない。
「サーブ行くぜッ!」
高くボールを飛ばしサーブ。
勢いよく飛んで行く。
「...ッ!」
素早いボールに反応し何とかトス。
「オラッ!」
パン!と高い音が鳴る。
「は?」
「いや力任せに叩いたらそうなるだろ。」
どうやら割れたようだ。...バレーをする気はあるのか...?
「だから殺るっつったろ。こんぐれぇの力入れねぇと殺せねぇよ。」
「そっち!?そっちの殺る!?怖っ!てか命令ないと動けねぇんじゃねえのか?」
「殺しに関わることだけだっつーのウゼエ。」
「関わってる関わってる、思いっきり関わってる。」
「不慮の事故でお前を殺すんだよ。」
「すまない。私も甘かったようだ。本気で行こう。」
「うん、待って?なんで?セフィロトまで本気になる必要は?俺死ぬよね?」
「仕方ないこちらも全力で応えなければ怪我は確実だ。ボールも私のルドベキアを使用する。...形状変化。」
「魔王様も本気だ…どうすりゃいいってんだ。」
「...それってボールにも出来るんですね...。」
次のサーブはあちらからになった。
「...ハッ!」
おそらく本気で打ったのだろう。
甲高い音が鳴り響く。
「風よ吹けッ!」
風でボールを取る。
...それはルール的にいいのか...?
「高くあげるぞ...ッと。」
漆の方向へ打ちやすいボールを。
「ナイストス!...っせい!」
これもまたものすごいスパイクだ。
ボールはグランの方へ。
魔法を屈指して速さを最大まで早くしている。
漆のなせる技だ。
...と思いきや腕に触れる瞬間にボールのした部分から風が。
「へっ!こっちは魔法使わせてもらうぜ!」
空中でワンバウンドしたボールは後ろの方へ。
「間に合え...ッ!」
片手を伸ばして飛び込む。
ギリギリ届いた腕で上にあげる。
「うらァ!」
後ろの方へボールが行く。
素早く移動し構える。
今度は私。
足に力をしっかりと入れてボールを受ける。「ッ!?」
当たった刹那腕に走る鈍痛。
どれだけの力で打てばこの痛みが起きるんだ...?
しかしボールはきちんと上には飛んだ。
「漆!5秒は浮かせてくれッ!」
「了解ッ!」
あちらがその気なら私も全力で。
魔力を貯める。
この前は棒のルドベキアでやったが今回はボール状のルドベキア。
「...準備完了...落とせ!」
「行けッ!魔王様!」
「テンペスタージッ!」
落雷の如く...いやもうほぼ落雷レベルなのだが。
スパイクを魔法として打ち込む。
「ガァっ!?」
受けたグランの腕が焼けて折れた。
「うわガチじゃん...」
「ヒャハハハハハハハ!!!!!!!!痛てぇよ!痛てぇ!!!!スポーツでこんな痛みねぇよ!アホか!ヒャハハハハ!!!!」
そのまま地面に落ちる。
「ぜってぇ殺す!!!!!!!!!」
「...うるさいのお。」
「いいの?行かなくて。」
セッティングされたパラソルとシートに佇む2人。
片方ははセレブ感満載の寛ぎ方をしながら。
もう片方は尻尾を右往左往動かしながら遠くを見つめている。
「わしは運動は出来ない方での。あまり好まぬ。そもそもアレに混ざりたいのと思うか?」
「確かに…嫌ね。…それにしても泳ぎにも行かなかったのはそういう事ね。あのセリルさんやセフィロトでも行ってたのに。」
「泳いだ後も大変なんじゃ。尻尾がかなり荒れたりしてのう...翼なら多少洗い落とせば何とかなるものじゃが尻尾はそう簡単にいきはせん。塩もつく。まあ色々あるんじゃ。」
尻尾を弄りながら話す。
「なら...退屈しない話はどう?」
「そうじゃな。わしもそろそろ聞きたかった話がある。」
「私の記憶...ね。」
「まず聞くが...本当にあの時の記憶はあるのか?」
「もちろん。鮮明ではないけれど。」
「和の国の伝承。知っとるかの?」
寂しげな顔をする。
「破壊の申し子、創造の申し子の話?あまり詳しくないけど。」
「あぁ。そうじゃ。...わしが創造の申し子。それが雹華じゃ。」
「そして私がたまたま当てつけられた破壊の申し子、ミーハ・ナタッド・リラミィ。」
「まあわしは本物なのじゃが。」
「話すわ。...私は...私はあの時、あの街を全てを破壊してしまった。侵入者から守るため。魔法を発動した。強大な威力の魔法。使うと記憶がなくなる魔法。そして取り返しのつかないことになった。何もかもか消えた。街も、人も。魔物も」
「わしはその時。重い封印をかけられていて、そこに偶然居合わせたのかお主と。...あの時助けてくれたのはお主じゃな、ミナリ。」
「...そうよ。記憶はおぼろなんだけどね。でも...あの時、何も救えずに記憶がなくなって知らずに生きるだなんてことは絶対に嫌だった。きっと誰でもいいから救って楽になりたかったんだと思う。逃れるためにね。」
「だけど私は嬉しかった。貴方にに...本当に会えて嬉しい。」
〜、@&_&&/###_jm@#〜
どうも、失礼するよ。
あぁ気にしないでくれたまえ。
少しばかり語りたくて。
君たちも知りたいだろう?
彼女は長寿だった。
人よりも、魔物よりも生きる。
それ故に愛した人は全て生きていない。
だがそれに相応する相手が見つかった。
ハイエルフ。
普通のエルフよりも長く生きる。
2人は愛し合った。
この生活がいつまでもいつまでも続くと感じていた。
違った。
人間は愚かだった。
あろう事か彼女を破壊の申し子と認識した。
偽の伝承が出回っていたのさ。
伝承を信じていた人間たちは殺さずに封印した。
夫であるハイエルフは処刑されることになった。
妻である彼女の目の前で。
処刑の日
夫はこういった
「忘れていいんだ。その方が君のためになる。僕は...楽しかったよ。またいつか会おうね。」
首が落とされた。
それはもう泣き叫んだ。
感情は跡形もなく消えた。
飛び散った血が体に付いたのがさらに狂気を帯びさせたんだ。
人間は笑いものにしながらすぐに去っていった。
ただ彼女にとってはそれはもうおぞましいほどの感情が襲っただろうね。
狂気、悲しみ、喪失感、怒り、虚無、絶望、
今まで愛を得る度に必ず起こっていた死がやっと自分が死ぬ頃と同じ具合で死ねる、愛せる者を見つけたって言うのにね。
今まで愛した人よりも早く死んだだろう。
それがもっと彼女を狂わせた。
何をしようにも何も出来ない。
そして彼女は不死の呪いをかけられたんだ。
死にたくても死ねない。
さすがに長寿でも1万年も生きたら脳は対応しきれずに廃人のようになってしまうだろうね。もし助けられるようなことがあってもこれか確定事項だ。何をしても運命となる。
まあ彼女がいくら生きてるかは知らないが。
彼女は恐らく800年はほぼ無で生きてきただろうね。何も無い牢屋に術式を組まれて封印。土地全体を使っての大規模な封印。
助けを乞うにしても彼女は封印されて何も出来ず。
ただ皮肉なのは彼女、創造の申し子に取っての唯一の救いが破壊の申し子の少女だったことだろう。
800年も生きていたんだ。
その周りは生活ができる街になっていた。
ただ、その国は破壊の申し子によって例外を覗いて跡形もなく消された。
例外、それは彼女の牢屋だ。
なんで壊れなかったのかは分からない。
きっと雹華を束縛するという呪いに反するから守られたんだろう。
破壊の申し子は弱っていたらしい。
その牢屋に入って少しの間眠りについた。
彼女に意識が再び目覚めたのはその時さ。
それまでずっと、ずーっと時間が流れるのを感じて。感情など感じる余地もなく。
あれはそれほど彼女にとってはおぞましい出来事さ
再び目覚めて彼女は思った。
「あぁ。こんな姿を何百年もしては彼に示しがつかない。」
そして助けたんだ。
破壊の申し子を。
破壊の申し子は本当にか弱く見えた。
細い体、白い肌、幼い容姿
容姿に関しては彼女も同じではあるがね。
そして破壊の申し子は目覚めた。
「私の...私のせいで...!ここは…ここはっ。」
彼女は何も答えられなかっただろう。何せ何百年も眠っていた。
声をかけることしか出来なかった
「大丈夫、大丈夫」
と。
か弱い少女を膝の上に抱き寄せ。
彼女に向かってそう何度も何度も言い続けた。
涙ながら。
そうすることしか出来ない。
彼女がか弱いのは本当なのだろう。いつしか気を失っていた。
か弱き少女はその気を失うまでの間で彼女の封印を少しだけ解いたんだろうね。
少しは自由になっていたし魔力もあった。
か弱き少女をどうしようかと考えている間に住んでいた逃げることができた村の住民達が来た。
元々少女はそこにすんでいて、信仰の対象だったらしい。
住民達はか弱き少女を連れてどこかへ行った。
彼女は決心した。
あぁ。何故この子はこんなにも強く生きていられている?
自分が強き創造の申し子?
バカバカしいな。
...創造の申し子ならそれなりのことをしないといけない。
そして造らなければいけない。
争いのない...裏切りのない...平和で和やかな...国を。
彼女はここからとても強くなって行ったんだ。
まあ、最初のうちは感情がほぼ無だったみたいだよ。
...全てを知ってる僕は何かって?
ははっ。そうだなぁ。
少なくともこの世界にはいるものだ。
その名も…#jpの/__#/&&/__n"(#
「勝者は私でしたね。結局また前と同じですね。」
「さすかに...止めないとな...」
危うくこのビーチが崩壊するところだった。
さすがに水着姿の魔王がビーチで発見された、なんてのは私が魔王出なくても聞きたくないしな。
安定を取ってどこかの山へまた放り捨ててもらった。
「おーい。そろそろ夕暮れじゃ。帰る支度をせい!さすがに皆が心配するぞ。」
「...少しばかり羽目を外しすぎたな。このくらいが頃合だろう。そろそろ...帰ろうか。」
なにせ初めての『サボり』
実際魔王の勤務があったのだが幹部、もしくは命令のあったもののみ休みにした。
まあ...あまりこうしすぎてもダメだ。
本来ならこの時間を有効に使った方がいいのだが。
たまにはこういうのもいいはずだ。
「疲れたな。夜は早く寝そうだ...。」
「帰りましょうか!」
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おっと、伝え忘れたよ。
悪者ではないよ!
__&ue/&//__#"?"?!
〜魔王城 謁見の間〜
さて...戻ってきた訳だが。
「まずは着替えないとまずいな。直ぐに部屋に戻って。あぁ。誰にも見つからずな。着替えてそのまま休んでいい。」
「うし!分かりました。ではまた明日。」
「私も少しやることがあるので、先に失礼します。」
続々とみんなが帰っていく。
「...魔王よ。質問がある。」
「なんだ?」
「わしは天狐じゃ。魔王からは何に見える?」
「...隠しても無駄だぞ。話は聞こえてしまったからな。私だけだが。」
「これは失態じゃな。聞いておったか。」
「残念なことに地獄耳でな。聞きたくないことも聞こえてしまう。」
「わしのことはいい。既に終わった身よ。じゃがミナリは…守ってやるといい。わしにはできんでのう。」
「あぁ、そういうことをするのが私達魔王の仕事だ。」
「…ならば安心じゃの!ではな!」
またひとつ謎が明かされる。
彼女らの真実は着々と明かされ知られていく。
本当に信じるべきものはどれか。
そろそろ見極めなければならないのかもしれない。
それが敵だとしても味方だとしても。