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嘆きの吸血鬼

ぼんやりとした意識。

夢だ。

何もかもあやふやでものを視認すら出来ない。

「そいつ........違.....人...」

何…だ?

分からない。

意識が遠のく。



「っ!?...朝...か?」

何か夢を見た気がする。

夢に知らない者は出てこないとは言うが...。

あまり見覚えのない姿だったような気もしない。

…夢だからあやふやだ。

今日はいつもより目覚めが早い。

早めに支度を済ませよう。

今日は血の国へ行く。

血の国は魔王城の城下町と良好な関係を築いていて貿易から魔物達の確保など魔王の援助を良くしてくれていて魔物の国の中で最も安全とされている。

血の国は防衛戦が得意で魔王城に来る前に必ず通る場所であり攻略しないと魔王城にはたどり着けない構造になっている。

人間も寄せつけない魔物の国屈指の強い国である。

そんな国でも死者が多数。

魔物達はかなり減った。

安心を与える為に城下町と合併し、速くの復興をしなければならない。

「雨...か。」

朝方、太陽が出ようとする時間帯。

朝の雨は嫌いではない。

特に意味がある訳でもないが。

いつもの様に精神統一をする。

雨の音。

雫一つ一つが地面に当たる感覚をハッキリと認識できるほどに。

...翼のはためく音がする。

部屋の窓の近辺をみる。

「コウモリ...?」

1匹のコウモリが外を飛んでいた。

「…窓を閉めていても分かるものだな。」

精神統一を済ませ身支度終わらせる

「時間がある...な。」

今思えばこの魔王の剣。

父上はなんと読んでいたか...。

たしか...封剣ドルク...だったか...?

「認証。血縁関係、主の娘」

剣が勝手に浮き出す。

「喋るのか...!?」

「いかにも。主からはドルクと名をつけられた」

どこから発しているかわからない声を聞く。

名前…付けたのか...父上。

「我は封じられてなどいない。魔力は魔剣並である。」

「そうか。それで…なにか私に用があるのか?」

「主との契約が切れている。今は主を持たぬ剣だ。我はそれ望まぬ。我と契約せよ。そうすればある程度の力を解放できる。」

「分かった。契約しよう。」

「...我に新たな名を付けるがいい。」

名前...か。

特に考えてもなかったな。

「性別って...あるのか?」

「剣故あるわけなかろう。いまは低い男の声を発しているがこういう声と決まっている訳では無い。」

「なら...ルドベキアという名前はどうだ?」

「…承認。形状変化。」

みるみる形が変わっていきどこにでもある剣のようになる。

「考えよ。思いに馳せよ。貴殿が望む世界を。」

私の望む世界…。

目を閉じて考える、

争いなどない。

種族の壁などない。

平穏な世界を。

私はそれを作りたい。

「承認。イメージ固定。形状固定。我は...私はあなたが思い絵描く世界を創る剣です。」

目を開くとそこには父上の持っていた禍々しい形をした剣とは相反する美しい形状をしていた。

持ち手には花が咲いている。

恐らく名前につけたルドベキア。

母が好きだった花だ。

「母を思ったのでしょう?」

「あぁ。…しかし口調が変わったな。」

声が女性になり温もりさえ感じる。

「あなたが思う世界に硬い口調、禍々しい形状はいらないでしょう。あなたの父さんは力を欲していました。ですがあなたは平和を欲しています。そうでしょう?」

「...そうだな。」

「故に私はこの形を受け取りました。私の名前はルドベキア。平和を創る花の剣。花剣ルドベキア。私の力はあなたと共に。」

剣を手に取る。

「よろしく頼む。」

大きさはさほど変わりはしていないが峰の部分がいくつも枝分かれしている。

刀身は綺麗に整えられている。

切れ味も良さそうだ。

「ありがとうございます。お呼びされた時は直ぐに受け答えします。これからあなたと共に。」

そう答える花の剣は驚くほど白く、雨の空を切り裂いてしまうほど輝いて見えた。



「魔王様、よろしいでしょうか?」

部屋の外からセリルの声がする。

「あぁ。入ってくれ。」

「失礼します。」

礼をして入ってくる。

「本日の予定は血の国への訪問、そして会談となっていますが時間は未定となっています。」

「その件だが。」

割り込んで話しかける

「準備が出来次第直ぐに出発すると皆に伝えてくれ。出る部隊は漆、その専属部隊、セリル、そして私で向かう。」

「城は大丈夫なのですか?」

「襲撃があったばかりだ。襲う意味もない。」

「わかりました。伝えます。」

私の部屋を出ていく。

部隊の準備が終わるにはまだ時間がかかるはずだ。

先に外に出てこの剣を使ってみるか。



「...いでよ。花剣ルドベキア。」

強く念じる。

魔王に代々伝わるこの剣は所持者に応じて姿を現す。

常に持つ必要は無いのだ。

「適当な魔獣でも召喚しようか。」

魔物と魔獣は違う。

魔物は明確な意思をもって善にも悪にも染まる。

魔獣は野生本能が高く何にも従わずただ生きる。

そこが違いだ。

「魔獣...召喚。」

強靭な足を持った四足歩行の魔獣だ。

特にこれと言ったものは無いが魔獣のベースは基本これである。

しかしただ魔術で作った仮想の魔獣。

死という概念はなく魔力が尽きると自然に消える。

ただ魔獣という概念は変わってはいない。

存在する為ならばなんだってする。

魔物も人も関係なく襲う。

「ルドベキア、なかなかいい重みだ。お前の力試させてもらう。」

「承認。力を解放します。」

そう言った途端に体に力が溢れるような感覚に至る。

魔力が供給されている。

...なるほど。

父上の強みはここにもあったのだな。

「身体強化...いざッ!」

魔獣相手には正面から突撃するのは愚策。

私でさえまともに食らったら死ぬ。

だが私には翼がある。

「飛ぶッ!」

翼を羽ばたかせ空に飛ぶ。

魔獣はこちらを見上げて唸っている。

「こちらから行くぞ。はっ!」

雷の基本魔法。

魔力を雷に変換させそのまま放つ技。

どんなに魔法で合っても魔力を最大限に込めれば軽く殺すことだってできる。

『グゥアアアアアアアアアアア!!!!』

魔獣に当たる。

これだけ大型にしてしまった故、魔法1発程度では倒れないだろう。

しかし怯んでいる。

そのまま魔獣の足に直進。

「斬るッ!」

魔獣の足を流れるように斬る。

驚いた。

恐ろしいほどの斬れ味だ。

しかし骨までは届いていない。

そのまま右方向に斬り払った剣の力に身を任せ自分ごと回転。

そして1度踏みとどまり体勢を瞬時に整え頭を狙う。

が、魔獣も魔獣。

そう簡単に受けてはくれない。

剣を噛み攻撃を防ぐ。

前を防いだのなら後ろが空く。

1度剣から手を離し地面を蹴り高く飛ぶ。

「私の手に戻れルドベキア!」

魔獣の口から剣は消え私の手に剣が現れる。

「そこッ!」

魔獣の背中辺りにいる私はそのまま降下し剣を突き刺す。

魔獣が大きく怯む。

そろそろ時間も頃合だろう。

「召喚解除。」

魔獣が尻尾から消えていく。

剣を抜き魔獣の背中から降りる。

城の方向から魔力を感じた。

恐らく皆だろう。

「魔王様?1人で何をなされていたんでしょうか。」

「朝の運動だ。それより、準備が出来たのだろう?」

「もちろんです。セリルさんもいますし、行きましょう。」

「分かった…行こう。その刀...か?どうしたんだ?魔王城にはなかったはずだが。」

鞘に入れた刀が腰に装備されている。

「これは俺の親の肩身、そして愛刀です。この前の朝の運動の時は戦うとは思っていなかったので...。」

「なるほどな。...っと大事なことを伝えるのを忘れていた忘れていた。血の国には必ず1人。もしかしたら他にもいるかもしれんがスパイがいる。そうでなきゃ血の国は攻め崩れない。そう、父上から聞かされてきた。用心してくれ。」

「はい!」

何事も用心は必要だ。


〜血の国 門前〜

「魔王一行だ。通してくれるか?」

「漆…だな?本人確認をしたい。」

「よっと。」

そう言うと来ていた服の袖をまくり腕の紋章をみせる。

「問題なし。どうぞお通りください。」

ギィと音を立てて大きな門が開く。

「俺は一応の安全確認、上空を偵察するついでにエルスを連れてきます。」

「頼んだぞ。」

今回の会談相手は手紙を送ってきたエルスだ。

「漆腕の紋章...なんなんだ?」

「あれは天狗一族の風習で紋章を入れるそうです。」

あぁ...セリルは例のあの処罰で見たのか...。



〜血の国 中央街〜

雨は降り止まない。

しかし街の魔物達が続々と集まる。

「魔王様...ご無事でよかった...」

「本物だ!」

「かっこいい!」

「魔王様!!!!」

「ふふっ。人気者ですね。」

「皆、元気でいてくれて嬉しい。」

襲撃直後ではあるが活気は失われていない。

「魔王様!プレゼントがあるの!」

人狼の子供が何かを持ってこっちに走ってきた。

「ダメよ!魔王様に迷惑かけちゃ!ごめんなさい魔王様...」

「なに、いいんだ。街の民と触れ合うのも魔王の仕事なんだ。プレゼント、受け取ろう。」

「これ!花のかんむり!」

「...綺麗にできているな。ありがとう。大切にするよ。」

この平和な感覚がずっと続けばいいのにと思う。

しかし現実はそうならない。平和にする為にも私が動かなけらばならない。

「セリル。雨が降っているからこれを箱か何かに入れて保管してくれ。濡れてしまっては大変だからな。」

「わかりました。」

セリルは花のかんむりを受け取り魔術で錬成した箱に入れる。

「魔王様ー!」

遠くから漆の声が聞こえてきた。

そして漆の他にも誰か来たみたいだ。

「どうも。手紙を送らせて頂いたエルスです。本日はよろしくお願い致します。」

若い青年だった。

長い耳が特徴だ。

恐らくエルフだろう。

「では早速会談に移ろう。」

「わかりました。ですが一応この会談は重要なものであります。内密にする為にも2人で行いたいのですがよろしいですか?」

「了解した。」



〜血の国 役所〜

ここは恐らくこの街を仕切る機関が全て集まっている場所だろう。

一般市民の魔物も垣間見える。

「皆さんはここで待っていてください。では魔王様、こちらへ。まずは見せたいものが。」

そう言われ地下に案内される。

階段を下っていく。

1回の雰囲気とは打って変わって静かだ。

地下に着くとそこには広い1部屋牢屋があった。

「彼女の事なのですが。」

そう指さす先には衰弱している白い髪の少女が見えた。

手錠などは繋がれていないが壁にもたれかかっている。

この少女...どこかで...

「何かしたのか?」

「えぇ。彼女はこの街に迷い込んだ憎むべき人間どもを匿っていました。」

「...何がいけない?」

何も悪くない。

囚われる必要は無い。

「...ご冗談を。いけないではありませんか?あの人間どもを街に入れるなんてとんでもないことしでかした!」

「あぁ。それ何が行けないんだ?その人間は迷い込んだだけだろう。そもそも人間を街に入れるなと言うなら私はどうなる?人間と魔族のハーフだ。」

「それはそうですが...!」

「う...く...」

白い髪の少女が悶えている。

「それに衰弱している。出してやれ。魔王命令だ。」

「...っく...。わかりました。」

「まっ...て...そいつ...は...人間...よ...!」

今全てに合点がいった。

...夢はそう言うことか。

あのコウモリ。もしかして助けを読んでいたのか...?だとすれば...この子は吸血鬼...か?

「...あーあ。予定変更だ。魔王、お前を殺すぞ。」

ガラリと表情が変わる。

「ッ!?」

突然大きなナイフを取り出しこちらに向かってくる。

「オラァ!」

腹に刺さる感覚があった。

だがそれがなんだ。

「それで魔王を殺せるとでも?」

「なっ、心臓だぞ!?いくら魔王とはいえ死ぬはずだっ!」

反応して守りに徹するくらいは容易だ。

魔法を使わない不意打ち程度なら刺傷で済む。

心臓は全くもって傷ついていない。

「漆、セリル。」

「御意」

どこからともなくエルスの後ろから現れた漆はエルスを引き離し首元に小刀を当てる。

「変に動くとサクッといくぜ?」

「やはり黒はあなたでしたね。最初から怪しさしかありませんでしたし。」

「セリル、鍵を開けてやってくれ。この少女を解放する。」

「はい。」

即座に鍵穴を見て鍵を錬成する。

「開きました。どうぞ。」

「ちっくしょう...離せ!」

「アンチマジック!これで魔法を使えないぜ。次は本当に殺す。」

サラリと扱うのが難しい魔法をやって見せる漆。

引き入れて正解だったな。

「あ...ぶな...い...こない...で…ッ!」

途端少女が声を出す。

「っはァ!そいつは罠だぜ!」

牢屋の横、後ろの3方向から矢が飛んでくる。

「…常識を知らないのか?」

右方向から飛んでくる矢をルドベキアで斬る。

「旋風!」

左から飛んできた矢を漆が風で吹き飛ばす。

「3人もいるんですから。まぁ魔王様は1人で対処出来たと思いますが。」

後ろから飛んできた矢をセリルが掴み取る。

「大丈夫か...?」

「...ぁ…ぅ。」

もう限界のようだ。言葉を発せないほど衰弱仕切っている。

「吸血鬼...でいいんだな?私の血で大丈夫か?」

白い髪の少女はこくんと頷く。

胸部に刺さったナイフを抜く。

痛みはあるが気にする程度ではない。

手で血をすくう。

「口を開けてくれ」

白い髪の少女の口が少しあく

口の中に1滴...2滴と血が注がれていく。

魔王の血だ。恐らく動ける程度の魔力は含まれてるはずだ。

「...ありがとう。少しは…動けるわ。」

「すんませーんこっちは腕が限界でーす。」

…すっかりと漆のことを忘れていた。

「諦めが悪い事だ。斬首...と言いたいところだが。」

「ッんだよ...殺すなら早く殺せよ!」

「この少女に運命を任せるとしよう。」

何にしろ、死は免れないと思うが。

「いいのかしら?私にやらせてもらっても。」

「あぁ。恨みは君の方があるだろう。」

「えぇ。かなり鬱憤が溜まっていたわ。では早速。」

「くんなクソガキ!クソッ!クソっ!!!!」

「あら、少なくともあなたよりは年上よ?吸血鬼ですもの。」

そう言うとエルスの首元に手をかける。

「吸血ってね?少ない量を吸われる分には痛いだけなんだけど...。多く吸うとかなり苦痛なのよ。私の魔力が全て回復するまで頂くわね?」

「ヒッ!?や、やめろ!!!!」

顔が恐怖で歪んでいく。

「いただくわ。…ん。」

首元に勢いよく噛み付いた。

「ァガッ!?」

「吸われてちょっとの間は気持ちいいらしいですよあれ。サキュバス現役の頃よくやってました。」

「...唐突に辞めてくださいよそういう話するの。」

「久しぶりに飲みたくなってきました。いいですか?」

「あら?サキュバスなの?いいわよ?」

何がいいのか分からないが。

「じゃあ反対側を失礼します。」

「あ.....あ...が...あ.....ァァァァァ!!!」

「うわぁ…やっばいな。体が萎んでいくぜ...」

「美女2人が首元にいた状態で死ぬんだ。幸せだと思うがな。」

「苦痛の方が勝ちますってあれ...。」

まあそうだろうな。

この状況で楽しめるものなど居ないだろう。

2人が首元から離れる。

「あら...少し飲みすぎたわ。生きてないかもね。…殺したくはなかったのだけど…。」

少し悲しそうな顔をする。

「久しぶりの人間の体液。美味しかったです。」



あれから少しの時間が経った。

「お礼を言うのを忘れてたわ。ありがとう。」

「何、気にすることは無い。」

「私はミナリ。吸血鬼よ。血の国最後の吸血鬼。ごめんなさいね。私が人間をかばったりするばかりに…。直ぐに返してあれば良かったわ。」

「謝ることは無い。その想いは間違ってはいないはずだ。」

きっとそのはず。

良い人間はいるんだ。

母上だってそうだった。

いつだって優しくてにこやかで...。

「...っと会談が潰れてしまったな...。」

「あぁ、それなら役長さんがいるわよ。エルスのやつ急に来て村で唯一の実力者の私を監禁して統一者になったんだから役長は今もいるはず。手を出してない限りね。私が案内するわ。...ってここが役所だものね...1階に上がればいると思うわ。」

「助かる。早速いこう。」




「もちろんもちろん。今の状態で却下する方がおかしいからね!承諾承諾!今日から魔王城城下町の1つであり!血の国として頑張るぞ!」

役長はゴーレムなのにすごく緩い。

愉快な魔物が多いな。

「ちょっと待ってねーいま街のアナウンスで流すから!緊急ニュース!今会談により魔王城の街と血の国は合併することが決定しました!特に変わることはないと思うので安心して過ごすよう!以上!」

「何はともあれ、一件落着か。」

「何事はありましたが落ち着いて良かったです。」

今日は一気に疲れてしまった。

早く戻って休みたいところではあるがそんなに呑気なことも言ってられない。

「魔王様〜!!ご無事ですか!?魔力の減衰を感じとったので来てみたのですが...」

役所の入口のドアが開く。

町にいた支援軍の者だ。

「心配かけて済まないな。私は大丈夫だ。そっちは仕事はどのくらい残ってる?」

「っと!俺の部隊も参加させて全て終わらせてきたぞ。」

とまた役所のドアから新しい客が入ってくる。

店のようだな。

「参ったな。もうほぼやることがないぞ...?」

「えぇ...確かに本日の仕事はの全ては終わっています。帰りましょうか?休むのもしっかりとした仕事です。」

「おーっとちょっと待ってくれませんかね?実はですね。今日魔王様が来ると聞いて街の皆で宴をしようかと思っていまして。魔王様も一緒にどうかと...?」

「宴!酒!飯!やりましょう魔王様!」

「宴ねぇ...血の国でやるのは久しぶりじゃない?」

宴...まあ...そういうのも...いいか。

この前したばかりのような気もするんだが…。

「分かった。仕切りは私に任せてくれ。こう見えて酒は好きなんだ。」

「もう...またあんな姿晒しても知りませんよ?」

「…気をつける...。」

「宴は夜に始めますよ!それまでお待ちくださーい!」





〜魔王城血の街〜

「今日は集まってくれてありがとう!合併と魔王様訪問を記念して宴を開きます!魔王様どうぞ!」

「魔王の薺だ。私はこの世界を平和に、平穏にしたいと思っている。そのための第1歩として魔王城城下町と血の国が合併した。これからもなにか混乱するような事があるかもしれないがより良い世界を作っていこうと思う!」

「ウォー!」

「宴には身分も何も関係ない!皆楽しむぞ!!!!」「「ウォー!!!!!!!!!」」



〜宴〜

「酒!酒だ!酒があるぞオオオオオオ!」

漆…お前…。

「血のワインってあるかしら?ないなら普通のでいいのだけれど。」

「さすがにないぞ。しょうがない。そこのワインに私の血を入れようか?」

ミナリ「魔王様の血かなり濃厚なのよね...是非ともお願いしたいわ...!」

「出血大サービス...」

「血だけに...ブフッ...あだだだだだだだ関節技決めないでイデデデデデデ!!!!!!!!」

「コブラツイストォ!!」

「いだだだだやめてやめて!!!!!!!!ごめんなさい!!!!!!!!」

「ごめんなさい…まだ...?」

つい反撃してしまった。

「おっと…すまない。」

「ひどい...」

およよ…とでも声が出そうな女の子座り。

実に似合ってはいるのだが。

「元気出せよ...」

近くにいたオークが慰めにかかる。

「血を一番だしやすいのは手首よ。切りすぎないようにね。」

「よっ...と。…自分からやるのは痛いな。」

手首から血が流れ出す。

適量かどうかは分からないがある程度出したら魔法で簡易治療。

「健康的な血だわ。流石魔王様…ってところね。」

「みなさーん!ご飯が出来ましたー!」

エルフの女性が皿を持って叫ぶ。

「うっわァ!うまそー!」

「私お手製のゴーレムチョコがあるぞー!」

…ゴーレムはみんなギャップでもあるのか…?

「お酒の追加入りました〜」

「酒ェ!」

漆…お前…。

「これは大酒飲み大会第4回を開く必要があるな...」

ふとしたオークの言動だ。

「おいおいそんなんあんのかよじゃあ天狗イチオシの酒を飲ましてやるよ!オラァ!」

…やっぱりこうなるか…。

言わないで欲しかったが…。

「空翔天狗酒!?めっちゃ高いやつですよね!?」

料理を運んできたエルフが飛びついている。

「まじで記憶ぶっ飛ぶぜこれ」

いや飛んだらダメだろうに…。

「あたいもいっちょやるか!」

前に出てきたのはナーガ。

蛇の獣人であり姉妹。

「私も同行しよう」

こちらは妹でラミア。

どちらもよく酒を飲む。

「酒飲み蛇姉妹…だったか!?へへーん漆隊長は皆のこと覚えてるからなーっ!」

「私も参加しよう。」

…この前の二の次にならないようにせねばな。

魔王の威厳が保たれん。

「気が乗ってしまったので私も良いでしょうか?」

セリルまでもが乗って来た。

今夜は楽しくなりそうだ。

「私は遠慮しておくわ...味を楽しみたいしね。」






〜数十分後〜

「勝てん...うぷ...」

いかん出る。

抑えろ抑えろ。

「セリルさん…バケモンだ...な…ウォッェェェェェエ!!!」

…見ないぞ私はー。

「漆隊長が吐いたぞ!ハコベェェェ!!!」

「メディーック!...ってこの役私じゃないでしょ。」

ナイス、ノリツッコミ。

「無理...ね」

「無理だ…」

蛇姉妹もダウン。

流石にセリルには勝てなかったか…。

「血の国主催!大酒飲み大会勝者はやはり!サキュバスのセリルだァ!!!!」

激しい役長の大声。

いつの間に仕切ってたんだ…。

「ふふ、皆さんもまだまだですね。」

「わたひはまだ行けるがな。」

「また喋られなくなってますよ。」

ミナリ「この雰囲気...私意外と好きね...。」

「...ミナリ様に...血を吸われたいオーク生だった...」

「死ぬな兄弟ーッ!」

「あれ〜?さっきの魔王様はどこ〜?」

「...いまお取り込み中だから...ね?」

「ここら辺でおしまいですかね...皆酔いつぶれてますし...」「それでは今日の宴はここまでーっ!また明日ァ!!!!」

「あなたの方が私よりお酒飲めそうですね...」

「とりあえず倒れてる魔王様一行を宿屋へ運びましょう。」

「ですね...。ありがたい限りです…。」



〜翌日〜

「.......死にたい...」

「.......記憶ない...」

2人してベンチで頭を抱えている。

…魔王の威厳…。

「あなたたち...。」

「皆さん起きました?もう朝ですよ。そろそろお城に戻らないと」

「...そうだな。...うん。そうだな。」

ええい。

気にしてられん。

こういう魔王もあって良いのだ!

「あら、じゃあ私も一緒にいっていいかしら?」

「む、唐突だな。どうした?」

「どうしたもなにも一応死を救われたわけだし、何かの恩返しがしたい。どう?血の国の防衛の技術を提供したのも私だし役に立つとは思うけど?」

「恩返し…か。ならば話は早いな。こちらもちょうど軍員が欲しくてだな。待遇はまだ分からないが貴方が良いなら歓迎しよう。」

「利害が一致したわね。じゃあ…これからよろしくね?魔王様?」

上目遣いで紅い目がこちらを覗く。

男では無いものの吸血鬼の紅い目は何かドキッとする。

「何も貴方に利点は無いかもしれないが、よろしく頼む。」

「ミナリ、でいいわ。あとこれは個人的なお願いなんだけど...魔王様の血を定期的に吸わせてくれない?」

また藪から棒に。

「...他の人じゃダメなのか?」

「それは別にいいんだけど魔王様の血、魔力の濃度が高いから魔術も強くなると思うの。昨日みたいに死ぬほど吸うわけじゃないから...。あ!ちゃんと私が食事振舞ってあげるから!」

「何もそこまでしなくても...まあいいか。」

断る理由もないしな。

「なあ気になったんだが敬語使ってないけどいいのか?」

肩をちょんと叩いて聞いてくる

「構わない。まぁどこかの誰かはいきなり胸を触って来たらしいのだが。」

「すいませんでした。ほんとにすいません。」

ペコペコ礼をしながら謝っている。

「すこし聞きたいが防衛戦術はどのような物になる?ある程度聞いておきたい。」

「私が主となって動くんだけど吸血鬼特有の血を使った魔術で防衛するのよ。勇者襲撃時は私が動けなかったから防壁のみだったの。」

吸血鬼固有の魔法…か。

守りがとても厚くなりそうだ。

「なるほど。それは対策できないはずだ。」

「魔王様でも使われると辛いかもね。」

「…そうだな。では、もう戻ろうか。」

笑顔で喋る。

また1人新しい仲間が増えた。

これから私の望む平和な世界を創っていく。

平穏な日々を過ごす為にも。

私がやらなければならない。

ただ、母上のような慈悲をもって人間に問い掛けても応じるかどうか…。

今はまだ難しいだろう。

だがいずれ魔物も人間も分かち合える世界を...私は創りたい。

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